表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

標識はただ静かに見守る

 ピビットとの戦いから一時撤退し、平原のとある場所で私は村長から説教のようなことをされていた。

 異世界に来てまでこんなことされると思わなかった。


「まったく……どうして追撃しなかったかはわかったが、ハンターになったくせにモンスターを殺せないなんて、そんなんじゃやっていけないぞ。それに惚けてるなよ。すぐに体勢を立て直さないと致命的な状況になるぞ」


 言いたいことはいくつもあるが、とりあえずといった感じで指摘される。返す言葉もございません。

 考えてもなかったから、不意打ちで余計に硬直してしまった。


「帰りたい……」


 帰りたくなってきた。帰ってゲームがしたい。


 標識にお願いする。標識はバツマークを写し出す。帰さないのか、それとも帰せないってことなのか。

 どちらにしても帰れないということだろう。標識に触れるまでもなくわかる。


「おいおい……帰るってどこに帰るのか知らんが、依頼ほっぽってくのか?」


 出来ればやりたくないと思っているが、帰れないならこの世界で生きていくためにやるしかない。他にも私の出来る仕事はあるだろうが、この世界での常識に欠ける今の私には無理だろう。


「はぁ……そんなに縮こまりやがって。一発でピビット吹っ飛ばすくらいの腕っぷしがあるのに。確かに中途半端な気持ちじゃ務まらないが、ハンターとしてやっていくなら覚悟を決めろ」


 覚悟か、シリアルキラーにでもなれれば楽だろうか。

 負の感情に無意味に頭を回転させられるが、いろいろ考えてるのも面倒臭くなってきた。

 よし、もう一度ピビットと対峙しよう。それで覚悟を決められるかどうかだ。

 私は立ち上がって、標識を掴む。


 と、その前に一つ疑問が浮かぶ。今さっき村長は私の腕っぷしについて見どころがあるかのような言い方をしていた。ギルドでは私のステータスは平均よりやや低め程度だと言われた。今思うと自分でもピビット吹っとばせるのはおかしい気がする。


「あの、私って力あります?」

「ん? あぁそう思うが、そういや……Lv2なのに随分強いな。もしかしてカード更新してないのか?」

「いや、してますよ。ステータスも見てください。私、平均より低いって聞いたんですけど、どうです?」


 ハンター証を村長に見せて聞いてみる。


「……おかしいな。確かに平均より低い。本当に更新してるんだろうな?」


 そこで村長は一度考える素振りを見せたが、なにかに気づいた様子で浮遊していた標識を掴もうとしたが、避けられて少し呆気にとられる。が、すぐに私に向き直った。


「あんたそのステータス、武器の補正入れてないだろ」


 武器の補正……どういうこと? まぁ言わんとしていることはわかったけど。


「おそらくあんたの攻撃力が高いのは、その武器のステータスが理由だ。武器に自分の装備として魔力を流した状態でハンター証を更新すれば、武器の分の補正が入るんだよ。まさかその武器にそんな高い性能があると思っていなかったが、自動で動くぐらいだからな。魔法では無さそうだし」


 私は言われた通りにして、ハンター証を更新する。

 すると数字が一気に書き換わって、攻撃力が大分上がった。他も変わっているところがある。


「超上がりました……」

「やっぱりそうだったか」


 自分で呆れつつも少しテンションが上がってきた。さすが標識だ。

 このテンションに任せてピビットを討伐しに行こうと思う。


 私は標識に跨り、村長をくっつけてもらってピビットと戦ったところまで直行した。

 村長は突然の事態に肝をつぶしているようだ。

 しばらくしているとピビット発見した私は地面に降りる。

 場所は移動していたが、ピビットも私の一撃で負傷をしていたので、そんな遠くには行っていなかった。


「覚悟!」


 そういって村長を放した標識をつかみ、前回と同様にピビットに向かって走っていく。

 ピビットが手でさすっている既に損傷した肋骨の下、本来攻撃するつもりだった脇腹に狙いを定める。


「うっ!」


 攻撃が当たりそうなところであの時の感触がよみがえってしまい、途中で手が止まってしまった。

 すかさず私は後ろに下がって距離をとる。流れでいけるかと思ったけどそうはいかなかった。


「ギャ?」


 ピビットが後ろに振り向いた。やはり気づかれたか。


「魔法が飛んでくるぞ! もし見えなかったらとにかく横に走ってりゃ最初はあたらないはずだ!」


 後方から指示が飛んでくる。ピビットの魔法は真っ直ぐにしか飛んでこないようだから、先を読んで撃ってこない限りは避けられそうだ。相手がそれを理解して先読みしてくる頃には、私にもちゃんとわかるようになっているはず。


 私はピビットと一定の距離を保ちつつ周りを周るように走り始めた。ピビットは魔法を放つような素振りをしている。その手から球形の空間の歪みがでてくるのがわかる。

 

 しばらく走っていて少し疲れてきた。このまま走って避け続けていてもらちが明かないので、飛んできた魔法を避けてから、再びピビットへ突進する。


 そこでふっと、とある考えが思いついた。私が主に抵抗あるのは、生き物を思い切り殴ることと、殺すこと。だから最初は死なないようにやさしく殴って、徐々に強くして慣らしていくのはどうだろうか。やっぱり却下で。


 突然、ゴンっ! と鈍い音が鳴った。


「あっ」


 考え事をしているうちに、私は知らぬ間にピビットを流れで殴っていた。唐突なことに驚いたものの思ったより不快感はない。もしかするとこれいけるのでは。


「でぇい!」


 うずくまっていたピビットを横に殴りとばした。さっきのは無意識だったから不快感が薄かっただけだったようで、今のは割ときつかった。とはいえなんとか耐えられそうだ。

 横を見やるとピビットは既に瀕死の状態のようで、どっかでみたポーズで倒れている。あとはとどめだけだ。

 一度後ろを振り向いて村長を見る。村長は頷く。


 私は目を瞑って大きく深呼吸をする。震える腕で標識を強く握り、上に振り上げてトドメを刺す構えをとる。


 しばらく沈黙が続いたが、ピビットが動き出しそうだったので私は決意し、地に転がるピビットへ標識を振り下ろす、

 マークの端がピビットの体にあたり鈍い音をたてるが、渾身の力で振り下ろされた標識にの力に耐えられず体は真っ二つに分かれた。

 まさか真っ二つになるとは思わなかったが今更だ。周りに血だまりができる。

 ふぅ、とため息をつき、地に座りこむ。

 標識が写し出した瞳で私を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ