4
馬車の窓をぼんやりと眺めながらこの先のことを考える。
ルメリカにはお母様の妹であるおばさまが住んでいるため、そちらに身を寄せるつもりでいる。
いつまでもいていいと言うおばさまの言葉をお母様は真に受けているが、やはりそういう訳にはいかないだろう。
お兄様は送金すると言ってくれているが、歳若く経験のない新米子爵にそこまでの余裕があるとは思えない。
いずれにせよ働かなければならないだろう。
けれど私に何が出来るのか。
不安で仕方がない。
窓の外を振り返ると見慣れた王都が遠ざかっていく。
思えば、私はほとんど王都から出たことがなかった。
もはや帰ることのない王都の屋敷を思い、父を想った。
お父様は出掛けていることの多い方だった。日頃あまり会う機会はなく、珍しく帰ってきたと思えばお母様と言い争っていた記憶しかない。
家庭を顧みず、醜く肥え太ったお父様は、思春期の私にとって嫌悪の対象だった。
しかし父の処刑の知らせを屋敷で受けた時、私の胸に考えられないほど大きな悲しみが去来した。
父親への情などないと思っていたのに……
見れば、愛は枯れ果てたかと思われた母親も泣いていた。
前王毒殺という重大な罪を考えれば、罪が私たちに及ばないなど本来はありえない。
聞けばお兄様が捜査に協力したことの他に、王太子殿下やコゼットが動いてくれたのだという。
その事を考えれば、感謝こそすれ逆恨みするような気持ちは湧いてこない。
ただ……お父様ともっと話をしておけば良かったと思った。
小さくなる王都を眺めながらぼんやりしているうちに、馬車が停まった。
ルメリカまでは途中に何泊か宿に泊まりながら移動する予定だが、今夜の宿泊予定の街に着いたようだ。
お兄様が手配してくれたのは街の中でも上から数えた方が早いような、かなりいい宿だった。
もち公爵家の屋敷には遠く及ばないが、通された部屋は柔らかそうなソファと艶のある年代物のテーブルがあり、滞在中の客を通せるようになっていた。
二つの寝室の他にも召使用の続き間もあった。
「ふん、そこそこの部屋ね。安っぽいけれど」
部屋を見回してそう感想を述べたお母様に、案内の若者が苦笑いをしていた。
その後、部屋で夕食をとり、早めに就寝した。
一日中馬車に揺られていたために案外疲れていたのか、私はすとんと眠りに落ちた。




