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「ほら、こうやって投げるんだよ。よっと!」
エリオットの手から放たれたダーツの矢は、トンッと軽い音を立てて的の真ん中に突き立った。
「すごいわ!また真ん中よ!」
これで三連続で的の真ん中に命中した。
あと一本当てられたら、この屋台のダーツゲームの賞品の中でも一番いいものをもらうことが出来る。
……まあ、いいものと言ってもおもちゃのアクセサリーやぬいぐるみなのだが。
アルトリアで遊んだダーツゲームの屋台を見かけ、懐かしく思ってエリオットを誘ったのだが、こんなに上手だとは思わなかった。
今まで見た中で一番ダーツが上手かったのはレミアスお兄様だったが、エリオットの方が上かもしれない。
「次はレミーエが投げるか?」
興奮してはしゃぐ私に恥ずかしくなったのか、エリオットが頭をかきながら私に矢を渡そうとした。
しかし、私は首を横に振って断った。
エリオットが投げる前に私も矢を投げたのだが、五本中一本しか的に当たらなかった。
下手な私が投げては台無しにしてしまう。
どうせなら五本全部を当ててパーフェクトを達成して欲しい。
「エリオットが投げてちょうだい。そして素晴らしい大記録が達成されるの!」
年甲斐も無くはしゃぎながら、私は両手を胸の前で組み、目を輝かせてエリオットを見つめた。
「しょうがねーなー。よく見てろよ!」
エリオットは照れくさそうに苦笑すると、ダーツの矢を構え、ヒュッと投げ放った。
「きゃあ!命中!」
またしてもど真ん中。
すると、私の喜びの声に被さるように大きな歓声が響いた。
周りを見渡すと、いつの間にかエリオットを中心に人だかりが出来ていた。
「いいぞ、にいちゃん!あと一本でパーフェクトだ!」
「頑張ってー!」
周りに集まった人々が口々に声援を送る。
この屋台のダーツは五本でひとセット。
あと一本が中心に当たれば、パーフェクト達成であるため、群衆の歓声が増していく。
しかしエリオットが真剣な表情でダーツの矢を構えると、周りはシンと鎮まり返り、皆息を潜めて見守った。
ヒュッ……!
トンッと音をたて、矢は的の中心に吸い込まれるように刺さった。
わあああっ!!
見守っていた観客達が一斉に声を上げた。
「やったわ!凄いわ!エリオット!」
私は興奮して、思わずエリオットに抱きついた。
「はは!緊張した!あははっ!」
「きゃ、ちょっと!」
エリオットが抱きついた私の腰を掴んで抱きしめ、くるりと回る。
「レミーエが応援してくれたお陰だ!」
「そんなはずないじゃない!もう……」
何度かくるくるした後、地面に降ろしてもらった私は、慌ててエリオットを押しやった。
「あっついな、あっつい……」
「うふふ、若いわねえ」
冷やかすような声に顔を向けると、私達を取り巻いていた群衆が生あったかい目でこちらを見ていた。
私は恥ずかしさに真っ赤になって、顔を俯けてスカートを握り締めた。
私ったら、なんてはしたない!
エリオットのせいだわ!もう!
エリオットを睨みつけようと顔を上げると、彼は景品を貰っているところだった。
店主から受け取ったのは、大きなうさぎのぬいぐるみだった。
デフォルメされたうさぎのぬいぐるみはとても可愛らしく、男らしく厳ついエリオットが持っている姿は、違和感が半端じゃない。
私は怒っていた気持ちも忘れて、噴き出してしまった。
「あははっ!エリオットったら!ぬいぐるみが欲しかったの?あはっ」
「そんなに似合わないか?欲しかったのに……なんてな!ほら、やるよ」
「えっ……」
そう言うとエリオットはひと抱えもあるぬいぐるみを私に押し付けた。
ぬいぐるみを貰って喜ぶような年ではないのに、と戸惑っていたが、続くエリオットの言葉に私は再び顔を赤くしてしまった。
「レミーエは似合うぞ!可愛いな!」
「…………」
思わず、ぼすっとぬいぐるみに顔を埋めた。
周りの人々の呆れたような声が聞こえて、私はなかなか顔をあげることが出来なかった。




