12
ベッドで丸まっているうち、いつの間にか眠ってしまった。
窓の外はもう真っ暗だ。
水差しからコップに水を注ぎ、喉を潤した。
編み込んだままだった髪をほどき、ブラシで梳かした。
髪に癖がついてしまった。
ブラシを水で少し湿らせて、癖をのばすように丹念に梳かして満足した。
「ふう……随分ぐっすり寝てしまったわ。いま、どれくらいの時間なのかしら」
独りごちて窓を開けて顔を出し、新鮮な空気を吸い込んだ。
昼間ほどではないが、通りにはまだチラホラと人が行き交っていた。
祭りは夜の部を迎えたのだろう。
行き交う人々は寄り添う男女ばかりで、仲睦まじ気に密やかに言葉を交わしている。
街灯の煌めきの他にもチラチラとオレンジ色の光が揺れているのは、街の各所に焚き火を置いて灯りにしているのかもしれない。
通りを見下ろしていた時、ふと下を向くと赤銅色の髪が目に入った。
その瞬間、私の心臓が驚くほど跳ねた。
ヒュッと息を呑み、呼吸もままならない。
頭が麻痺したように働かなかった。
「私の、四度目……」
思いもよらない言葉が、震える唇から零れ落ちる。
囁くような声だったにも関わらず、赤銅色の髪が弾かれたようにこちらを向いた。
私の姿を認めた途端、深い青の瞳が優しく細められた。
「君だったのか…………やっと見つけた」
風に揺れる自分の髪が頬に触れ、いつもの縦巻きロールでは無くなっている事に気付いた。
しかし吹く風で乾くにつれ、徐々に髪が巻かれていくのを感じた。
「名前を……教えてくれないか?お嬢ちゃん」
エリオットの声が甘く響く。
頭が痺れるような感覚のなか、私は必死に言葉を紡いだ。
「お嬢ちゃんなんて……呼ばないで。私は……レミーエ。ただのレミーエよ」
「……レミーエ」
エリオットが更に笑みを深め、見上げる瞳の中に映り込んだ街灯の光がきらめく。
彼は届くはずもないのに、私のいる窓に向かって手を伸ばした。
熱に浮かされたように、私も彼に向かって手を伸ばす。
「エリオット……」
絡み合う視線の熱で頭が沸騰しそうだ。
私はもう彼しか目に入らなくなっていた。
私の、四度目。
彼が私の……運命。
ただ、お母様の言葉だけが私の中に響いていた。




