2日目ー1
夜が明けて次の日。俺が起きたら光牙はまだ寝ていた。
予定を聞くため、起こすことにする。
「おい!光牙起きろ!」
「ん?ああ、零もう朝か?」
「ああ、そうだ。今日の予定を教えてくれ。」
「いいぞ。まず、朝ごはんを食べてから、王様に謁見だ。」
なるほど。ならば、そこで、城を出ることを伝えよう。
「その後、なんかよく分からないけど、神様に会うらしい。」
「・・それ、正気か?」
「俺だってよく分からない。でも、そこで戦う力を神様がくれるらしい。」
うん、よく分からねえ。まあ、どうにかなるだろう。
「ほう、お前たちが異世界の客人か。」
朝飯をすまし、ただ今、王様に謁見中。
光牙に聞いたことによると、ここで勇者が王国に力を貸すことを誓うらしい。
「俺の名は、ジルガ・ラー・ローレシア。ローレシア王国国王だ。」
「まず、謝っておこう。お前たちを召還したことを。」
そう言ってジルガ王は名乗るなり、いきなり頭を下げた。
おいおい、一国の王が簡単に頭を下げていいのかよ。
その王に声をかけるのは、光牙。
「頭を上げてください、王様。僕たち皆、気にしておりません。」
その声に王は頭を上げた。
「ありがとう。召還した身でありながら、お前たちに頼みたいことがある。」
「何でございましょう。」
「今、王国は隣の帝国と戦争をしている。」
「それは昨日、アリシア様から聞きしました。」
「それだけなら良かったのだが、帝国は北の魔王と同盟を結んだのだ。そのせいで、こちらの分が悪くなってしまったのだ。」
「!!!」
初めて聞いた、魔王の存在。その言葉に、皆が動揺する。
それを見た王が口を開く。
「戸惑うかもしれないが、王国の皆を救うため、勇者の力、異世界の皆の力を貸してほしい。」
「分かりました。僕たちの力を王国のために使うことをここに誓います。」
これで、一応謁見の儀は終了。
「雀ヶ森君、どうする?」
「零、どうすんだ?」
「早く行けよ、零」
「割り込むのか?」
そんなこと決まっている。
「この5人で割り込むぞ。」
そう、言って王の前に出る。
「異議あり!」
「っ!零、そこどけよ!」
「まあ、いいじゃねえか、光牙。俺たちも王様に言いたいことがあるんだよ。言ってもいいかい?王様。」
「お前たち、王の前で無礼が過ぎるぞ。」
怒り出した大臣を軽く手を上げて止め、王は言った。
「よかろう、申してみよ。」
「ならば、遠慮なく。王よ、俺たち5人は城を出る。」
「?なぜだ?」
「せっかくの異世界。俺たちは、観光したいのさ。それに・・」
「それになんだ?」
「俺たち5人には[キョウ]の称号があるからさ。」
「!・・・・・・それは真か?」
「もちろん本当だ。だから、城を出る。」
「だが・・」
言いよどむ王様に言ってやる。
「俺たちがいたら、国の兵たちの士気が下がるだろう?」
そう俺が言ったとたん、王様は苦虫を噛んだような顔になる。
いや、王だけではない。俺たち異世界組以外の全員がそんな顔をしている。
「どういうことだ?」
不思議がる光牙に教えてやる。
「勇者が召還されたと国の人が聞けばどうなる?」
「それは、皆喜ぶだろう・・!そういうことか。」
「分かったぽいな。そう、皆喜ぶだろう。だが、それと同時に[キョウ]が召還されたとなれば、その喜びが消えるだろう。」
「なるほどな。」
「そういうことだろ。王様。」
「その通りだ。」
「というわけで、俺たちは城を出るよ。」
そう言って、謁見の間から出ようとする。
そんなとき、王の声が響き渡った。
「少し待ってくれ。」
「なんだ?まさか、城を出ちゃいけないとか?」
「違う。城を出ることは許そう。だが、ジガルデ様には会って行ってくれ。」
「ジガルデ様?」
「そうだ。皆に戦う力をくれる神様だ。これに会ってから城を出てほしい。」
「しかし、[キョウ]持ちを会わす訳には「うるさい。」」
大臣の反論を黙らし、王は言う。
「これは、私の謝罪だ。レイだったか?私の謝罪を受け取ってくれるか。」
「・・そうだな。ならば、そのジガルデ様とやらに会ってみるか。」
これはやられたな。
王の謝罪を受け取らないとか不敬罪で捕まるだろう。
なかなかに賢い王らしい。
そういうわけで、ジガルデ様に会いに行くことになった。
面倒くさいな。