表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三人で遊ぶゲームを思いついた

作者: 南 時英

 通常の将棋盤と駒、および碁石を用いる。


 プレイヤー1(将棋・先手)とプレイヤー2(将棋・後手)は通常のルール通りに将棋を指す。相手の王を詰ませると勝ちとなる。


 プレイヤー3(五目並べ)は将棋の先手・後手が指した後に、駒が置かれていないマスに石を一つ置く。石が直線状に五つ並べば勝ちとなる。


 将棋の指し手は相手の駒を取るのと同じように、駒で五目並べの石を取って無条件に排除することができる。取った石を再利用することはできない。


 ゲームの性質上、将棋のプレイヤーは投了をすることができない。また、五目並べのプレイヤーには三三、四四、長連のような禁じ手は無い。


 ・

 ・

 ・


 このゲームを思いついた時に私がまず考えたのは、このルールでは将棋の先手が有利すぎるのではないかということだった。なぜなら先手は、五目並べ側に石を並べられそうになったとき、その危機の脱出を全て後手に押しつけることができるからである。後手は将棋部分での優勢を放棄し、自らを犠牲にして五連の完成を阻止せねばならない。


 また、考える時間についても、先手は後手が指したあとの五目並べの思考時間の分だけ得をしている。


 この不公平を是正するために、差し手の順番を変則的なものにする。すなわち、


  将棋・先手→将棋・後手→五目並べ→


 ではなく、


  将棋・先手→将棋・後手→五目並べ→

  将棋・先手→五目並べ→将棋・後手→

  五目並べ→将棋・先手→将棋・後手→


 の順序で指すものとする。あるいは、


  将棋・先手→将棋・後手→五目並べ→

  将棋・後手→将棋・先手→五目並べ→


 という順序で指す手法も考えられる。しかしながら、これだと二手指し将棋になる。私としては、将棋の本質的な部分に変化を加えたくはないのである。私がやりたいのは料理に隠し味の調味料を一滴加えることだけであって、具材そのものを変更することではないのだ。


 まったく身も蓋もない話だが、こうした不備を克服しうる、順序を変えることなく円滑にゲームを進められるもっとも単純な解決方法は、このルールを一種のハンディキャップマッチとみなし、より将棋に習熟した人間が後手を担当することである。


 ・

 ・

 ・


 私はこのゲームのルール制定に関して、一切の実践および思考実験を行わないでこの文章を書いている。


 考えなければならないことはまだある。


 たとえば、飛車・角行・香車の走り駒は、石を飛び越えた先のマスに置けるべきか、それとも置けないようにするべきか。もし飛び越えることが出来ないとしたら、石の打ち手は将棋部分の戦況に露骨に介入できることになる。実際のところ、そのような妨害の仕方は私の望むところではない。ただ石を置くだけの行為、石を五つ並べて勝つという行為だけで、十分に将棋側の戦略に対する圧力・妨害になっているはずだからである。


 その一方で、持ち駒を直接石のあるマスに打って排除するのは有効か無効か、という思索を行ってみると、深く考えずとも、これを可能にすれば五目並べ側に勝ちの見込みは無くなることは明らかである。もちろん将棋には二歩の禁じ手があるから、やみくもに歩を打って五目並べを妨害するわけにはいかない。が、それ以外の駒は普通に打てるわけだし、そもそも飛車角の効いているマスに石は置けない。やはりこのルールにおいて、五目並べ側の立場はかなり弱いのではないか、と私はぼんやりと推測している。ともあれ、持ち駒を直接打って石を除くのは禁止とするのが妥当であろう。


 このルールは実質的に二対一の勝負であり、本当にこのルールで五目並べが勝つことができるのか、実際のところ私はかなり疑っている。


 次に差し手が持ち駒を打つであろうマスに先んじて石を置くことで、ある程度は将棋側の戦局に干渉することはできるだろう。しかしそれは勝負を長引かせることにはなりこそすれ、直接的に自身の有利に繋がるものではない。石による干渉によって、将棋側の一方に肩入れすることは出来る。しかしそれによってもう一方の側が負ければ、それはすなわち五目並べ側の敗北にもなるのである。勝利のために五目並べのとるべき戦略は、現状ではまったくの謎である。


 ……とは言ったものの、もしかしたらこのゲームは五目並べの方が有利、それも圧倒的に有利かもしれない。


 将棋の平均手数が120手目であると仮定すると、そこに至るまでに五目並べの石は60個も置けることになる。たかだか9x9の81マスの空間に60個もの石が置けるというのは、随分とゆるい話のように思える。


 私が知りたいのは、将棋側は五目並べの石を潰すために何手を費やすだろうか、ということである。言い換えれば、将棋側は五目並べの勝利を阻止するために、将棋的には全く無意味な手を何手指すことになるだろうか、ということだ。なにしろ石は60個も置かれるのだから、最低でも30から40手は費やされることになるのではなかろうか。これでもし先手が石を減らすための労力を拒否すれば、後手の勝つ目はほとんど残されていないであろう。つまり事実上、このゲームは将棋の先手と五目並べの一騎打ちとなる。なので、後手の勝利になる特殊条件をあらかじめ盛り込んでおくべきかもしれない。が、その特殊条件を、今の私には思いつくことができない。


 ・

 ・

 ・


 繰り返し書くが、これらの件に関して私は実際にゲームを試したこともなければ、いかなる思考実験もしていない。これはただ書いているだけの文章であり、今後検討するつもりもないし、質問にも応じない。


 もし万が一、五目並べの方が有利であると発覚した場合には、「5五に石を置くことはできない」という追加ルールを設けることをここで提唱しておく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ