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二人で・・・  作者: 麻本
6/6

二人の日常 6  (完結)

少し経ったある日の事。

吾平は所属するチームリーダーに呼ばれる。

「高鍋。ちょっとこっちへ来い」

「はい」

「お前なあ、取引先のドラッグストア○○さんからクレーム上がってるぞ。それでな、俺が謝りに行ったんだぞ」

「すみませんでした」

「…でな。最近は、お前の営業成績も悪いし、異動してもらう事にしたから」

「えっ!」

異動と言う言葉に吾平は驚きを隠せない。

「高鍋。確か『安全衛生推進者』の資格を持っていたよな?」

「はい」

「そこでだな。製造ラインでその資格を発揮しろ。それから上の安全衛生管理者の資格を取ってもらうぞ。準備はしてあるから、

読んで勉強しておけ」

そういわれていきなり教本を渡される。

「それと高鍋。ラインが高齢化していてな。お前にラインを引き継いでもらうからな。しっかりと覚えろよ?」

「はい」

…こうして高鍋吾平の新しい日々?が始まった。

そして、翌日の朝。

昨日のうちに彩子には事情を説明し、一応納得はしてくれたのだが。

 吾平は、新しい現場に配属される。

配属されたのは栄養ドリンク材の製造ラインだ。

3交代制で24時間体制のラインを1チーム7~8人で動かしている。

内容としては1ロットの約1000本を造ったら滅菌を約2時間程で終わらせて次の製品の製造に移る。

この繰り返し。

大まかに言えばこんな感じである。

吾平は、製造する為の手順、機械の操作や商品の基準などを教わり、そして、学ぶのだ。

さて。昨日の吾平と彩子のやり取りとは?

「ただいま」

吾平が応接間にいる彩子の所に行く。

「おかえりー。あっくん。今日は早かったね。会議の日だったっけ?」

「いいや…。違くて、その」

「じゃあ、仕事も今日は早くて、昇格の通知…でもないみたいねー。どうしたの?暗い顔して?」

彩子が吾平の顔を覗き込んだ。

「それが…その、異動の通知をされてしまって」

「えっ!異動」

「ああ。異動と言う名の左遷かも知れないけど」

「何が有ったの?」

「実はこの間さ、店で他社の商品と一緒に損害を出してしまって。その責任を取らされたよ。それで、工場のラインに配属になったんだ」

「工場のライン?製剤?それともドリンク剤?どっちのラインなの?」

「ドリンク剤だよ」

「へー。ドリンク剤なんだ。工場内だから、シフト制になるの?」

「うん。そう」

「お給料は?」

「ごめん。何パーセントか下がっちゃうんだ」

「そう」

「ごめん。ごめんな。これからが大変なのに」

吾平が申し訳無さそうに言う。

「大丈夫よ。この会社の福利厚生が良くて、基本給の78パーセントだけど出てるんだし」

「そう?」


「それにあっくん、一つ忘れてるよ?」

「ん?どんな事?」

「シフト制になったんだから、生まれる子供の世話が出来るじゃない」

「そうか。そうだよな」

そうなのだ。時間がまちまちで帰りの遅かった営業に比べシフト制になった事で返って時間に余裕が出来たのである。

 彩子がにっこりと微笑みながら吾平に近づいた。

そして吾平の前に来ると手を上げながら

「これからも頑張ってね。パパ」

と言いながら吾平にデコピンをお見舞いした。

「いてっ!…うん。頑張るよ」

吾平には、何故彩子がデコピンをしたのか少し理解に苦しんだが彩子なりの激励なんだと理解した。

吾平が製造ラインのラインの仕事に変わってから数日が経った。休みの日。

 吾平が

「今日の昼は久々にサ○ゼリヤでもいかないか?」

と、彩子に提案する。

「いいわね。そうしましょう」

彩子は快く受けてくれた。

 外出の用事は、外食とスーパーでの買い物位だ。服を着替える。

今日の格好は吾平が黒のジーンズに赤系のチェック柄のポロシャツ。

それにターコイズのネックレス。

彩子はマタニティママが着るいわゆる「妊婦服」で青系のチェック柄。

それにカーネリアンのネックレスをし、ポニーテールという出で立ちだ。

吾平には彩子のポニーテールが凄い新鮮に映った。

「ポニーテールいい」

見ながらつぶやいたりして。

 その休日の昼間。

吾平たちはイタリアンレストランの

「サイ○リヤ」で食事をとっていた。

サイ○リヤのメニューはピザやスパゲティ、ドリア、ステーキやサラダなどイタリアンレストランとしてはオーソドックスである。

そして、メニュー表にはそのメニューのカロリー表示はもちろん、ちょっとした商品特徴が記載されている。

リーズナブルな値段かつ、カロリーコントロールの為?少し小さめなのも特徴だ。

 まずは向かい合って席につく。

吾平たちは注文をする為メニューを見る。

吾平は小エビのカクテルサラダにフォッカチオとイカ墨のスパゲティ。そしてドリンクバー。

彩子も同じく小エビのカクテルサラダと、ドリア。

そしてティラミスとドリンクバーだ。

注文をとると直ぐにやって来るのはまずはサラダだ。

サ○ゼリヤの場合、サラダの来るのは異様に早かったりする。

注文したサラダがまずは来て二人は食べ始める。

そして、吾平は彩子のしているネックレスの石が気になったので質問する。

「そう言えば彩子のネックレスについているパワーストーンて何だっけ?」

「これ?『カーネリアン』だけど?」

彩子の胸元に橙色に輝く石。

カーネリアンは、ナポレオンの印章として有名。

情熱と勇気を与え、ビジネスやスポーツを勝利へ導くといわれている石。

「あっくんのその石は何だっけ?」

「ああ。コレは『ターコイズ』だよ」

ターコイズ。

戦士の石。災いや危険から身を守る石として有名。気分の揺れを少なくするので、いざと言う時に見につけると良いといわれている。

吾平が言う。

「あの摂流薄教団があった時はこんなの一切つけられ無かったからねえ。

こういうパワーストーンて、例え気休めか迷信みたいなものにしても、信仰と似たもので、

石の由来や意味を知る事で独自の文化を築き上げてきたんだよね」

 彩子が答える。

「うーん?そもそもパワーストーンは海外からの物でよく解らないけどさ。

仏教とは全然違って石に聖霊や、神が宿っていると見立てて

信仰や占いに使ったり、お守りとして身につけるものじゃん?

それこそ個人への自信をつけるため、災いを防ぐために生まれたもので、

この大和の国にあるお守りと意味合いは似て居るでしょう?」

「そうだね。意味は似てるけど。発展した文化やモノの違いナンだよね。

大和の国の、布や木に書かれた文字とかより煌びやかで輝きが有った綺麗なんだよね。

外国人はこう言う物に魅力を感じた訳で」

「向こうはキリスト教やイスラム教とかあるんだもんね」

「そうだね。それと、パワーストーンはやっぱり宝石みたいな装飾品として似合うものだからね。大和のあのお守りでは」

「……あのさ。あっくん。ふと、思ったんだけど勾玉は?」

「へ?勾玉?よく思い浮かんだなぁ」

 吾平は勾玉の事を聞かれて困惑する。

「勾玉は…分からないよただ、縄文だか弥生時代からで、仏教が入る前からある。って事位しか」

「そうなの?」

「そうだって!」

その時だった。仕切りを挟んだ反対側から、

バァン!

とテーブルを叩く音が聞こえた。

「おっ?なんだあ?」

吾平は思わずその場を立ち上がり、上が擦りガラスで出来た、仕切りの上から覗き込む。

少しみると、反対側のテーブルでは男が一人に女が二人。

男がテーブルに両手をついて立ち上がったまま、少し興奮気味だった。

それを見た吾平は、直ぐに座り直す。

まさかと思い、隣に耳をすませた。

 耳を澄ますと女性の声で

「後数年で宇宙…攻めてくる。それを防ぐには浅知恵先生の言う仏法をみんなで唱えていくしか無い」

こんな内容を聞いて「まさか」と思った吾平。ちょっと目をそらすと彩子も、仕切りに耳を近づけて聞いていた。

そして吾平が言う。

「これはひょっとして、ひょっとすると!」

「ひょっとするわ!何だか、許せないっ!」

「待って。ちょっと、様子を見よう。それからでも遅くないよ」

 吾平は彩子にそう言って落ち着くように諭す。

向こう側のテーブルの話しを聞くとどうも、摂流薄教団の時の話しと重なるのが一杯あった。

吾平が思った。

まさか?摂流薄教団は教祖と幹部のほとんどは、AFVと一緒にどこかへ消えたのだし…残った信者が新しく

立ち上げたのならむしろ合点が行くけど。

こうも同じなんて、信じられない。

それに浅知恵先生?

誰だそいつ?

吾平は困惑する。

かつて一国支配体勢をとっていた摂流薄教団が壊滅し、人の生活に平穏が訪れたのにまた、似たようのが目の前に現れたのだから。

こんな事を考えていた吾平の肩を彩子が叩いてこう言った。

「あっくん。あの男の人を助けるわよ!」

 彩子が熱を込めて言う。

吾平は思った。

そうだ。俺だって今は彩子同様に論破する事が可能だ。

かつての摂流薄教団みたいな気配のある狂った団体の信者の手から、彼を助けなくては。

二人は、彼らの前に行き論破して助けて行くのだ。


‐E N D ‐


いかがでしたか?吾平と彩子の生活は意外と他愛ない平凡なものであり、しかも「さすらい」の形で終わるって言う。

でもこれでいいのだ!


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