表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人で・・・  作者: 麻本
5/6

二人の日常 5

この液体窒素も、取り扱いは結構難しく高価ではあるのだが。

「準備出来たよ。行こうか」

「うん」

車は静かにゆっくりと動き出す。


スーパーに向かう。

この時代、電気自動車には歩行者にその存在を知らせる為に各種メロディーフォーンや疑似エンジン音、方向指示音声などが付いている。

また、大きめの交差点や人が飛び出しそうな交差点では、センサーが感知して、人の接近を知らせてくれる。

また、歩行者も同様に、交差点に車が近づいたら外部スピーカーとフラッシュ照明などで車の接近を知らせてくれるのだ。

これらの安全対策により、交差点における事故は大幅に減っている。

車を走らせること十数分。

スーパーに着いた。

スーパーの名前は「ベ○シア」で、

食料品、衣料、日用雑貨、スポーツ用品、家電品、本や玩具に至るまで、殆どのジャンルのものがある巨大スーパーだ。

車を降りて風除室にあるバスケット(買い物カゴ)を取ろうとした時に、彩子に止められた。

「ねえ、あっくん。最初は本のコーナーに行きましょうよ」

「うん?ああ、いいよ」

一旦バスケットを元に戻し、二人で本のコーナーに向かう。

このスーパーの本のコーナーはそんなに大きなものじゃないがそれでも、参考書、週刊誌、雑誌、趣味、実用、少年誌、青年誌、少女誌、女性誌、

旅行、児童書など。

一通りは揃っている。

彩子が先導になり、立ち寄ったコーナーは児童書の所だ。

出かける前にテレビでみたアレを探すのであろう事を吾平は察する。

「これ、これ。あったわー」

「もう見つけたの?」

「うん。ほら」

彩子が本を手にとり吾平にみせた。


A4くらいの大きさのその本には

「ポイントセチア」の文字が。

表紙には何だか普通の男の子と西洋のお城。

そして、ティアラを着けた豚のお姫様が描かれている。

背景は、このお城と森と畦道?が描かれたものだった。

この本についている帯には、


―推薦―


言葉を超えた愛情がここにはあります。

と、書かれていた。

彩子が一言言った。

「何だか良さそう」

って。

 作者名をみるとこれには


さく:こじろう


え:くれない


となっていた。

絵本作家としては随分と珍しいペンネームだと思った吾平だった。

彩子が本を手にとりパラパラとページをめくる。

結構読む時間が長い。

これは、彩子が気になっている証拠だ。

彩子は本を途中で閉じてそのままレジに持って行ってこの本を買った。

一度車に戻って後部座席に買った本を置いて再び買い物へ。

普通に?食料を買った吾平たちなのである。

ほとんど彩子が主導で

「あっ。これは美味しそう」

「これなんかいいかな?」

など言いながら次々と買って行く。

吾平との会話は少なく、吾平は荷物持ちでただ、ついていく様な感じだ。

買い物も終わり、車に戻って乗り込んで家に帰る。

食料を冷蔵庫にしまい込んで、夕食までの時間が少しばかり空いた。

 彩子は早速、スーパーで買った絵本

「ポイントセチア」

を、持ち出して読む事にした。

彩子はリビングのソファに腰掛けて読む。

吾平はその後ろから立って、少し覗き見るような体制でみて居る。

描かれている絵の大半はマンガのイラストの様な線画だが一部に水墨画の挿し絵も入っていて面白い。

 絵本「ポイントセチア」を読み終えて彩子はホロッと涙を流した。

対して吾平は熱いものがこみ上げていた。

「いい話しねぇー。本当に言葉を超えていたような感じ。感動しちゃった!」

「俺も。人とのふれ合い方とか、考えて見るものやメッセージがちゃんと込められているよね。絵本なんだけど何か凄いや」

そうこうしている内に夕食には丁度いい時間になるのだが……。

吾平が

「なんか外食しに行く気が失せた」

と言う。

「えっ!あっくんから『夜は外食にする』って言ったじゃない!」

「そうだけど。なんかごめん」

「しょうがないわね。じゃあ夕食はあたしが」

「いや、俺が作る」

「そぉ?じゃあ任せるね。でも、油っぽいものは避けてね?」

「ん。分かった」

 吾平は冷蔵庫に向かい、食材を見る。

冷蔵庫には木綿豆腐に油あげ。生姜焼き用の豚肉、牛蒡、人参や他。

冷凍庫には魚のサバがある。

これらの食材で吾平が作ったものとは…。

―時間経過―

「彩子。出来たよ」

「何だか、シンプルねー」

さて、吾平が作ったものとは?

 吾平の作った夕食が並べられる。

まず、ご飯にけんちん汁(ただし、豆腐なし)。

それに冷や奴と、電子レンジでチン出来るコロッケに野菜を添えたものを出す。

「へえー。まあまあねっ♪」

「そう?良かった」

吾平がちょっと笑いながら言う。

「うん」

「確かに油っぽく無いよね。でも、けんちん汁(建長汁)に豆腐入って無いじゃない。これじゃけんちん汁って言わないよねー」

「細かいなー。確かにそうだけど、木綿豆腐の冷や奴があるし、それでイイじゃん。だから入れなかったのに」

「ごめんね。言い過ぎたわ。じゃあ、頂きます」

「頂きます」

「ねぇ」

「ん?」

「さっきの絵本の作者さんさぁ。他の絵本は出してないのかしら?」

「うーん。今時の絵本はどうか知らんけど裏表紙には他の絵本の紹介とか無かったし。これが初めてなんじゃないの?」

「そっかー。他にもあると良かったんだけど」

「それは多分、これからだろう。…いや、多分きっと」

吾平は少し困ってしまった。

こんな感じで夕食も進み、後はなんて事の無い一日が終わる。

 ある日の事。

吾平はとんでもない失敗をやらかした。

それは、とあるドラッグストアでの改装陳列で一枚のパレットに、他社品を含む山積み陳列をしていた。

只でさえ雑なのに、急いでやろうとしたものだから、山積みの途中で商品のビンを落とし、10本入りパックのビニールを破いたり、それが運悪く

ビンを割ってしまったのだ。

この事が後あとで余り良くない結果を招く事となる。

ー数日後。

「今日もやっと、仕事終わった。でも、今からだと家に帰れるの9時近くか?妊娠中の彩子に負担かけたくないし、早く帰んないと」

「ただいまー」

「おかえりー。あっくん、今日も遅かったね?」

「ごめん。今日は2店のラウンドだったけど、何だかんだで時間掛かったよ。大事な時だってのにごめんなー。負担かけっ放しだよ」

「何とか成らないのかしらね?」

「営業ってこんなもんだよ。ごめん」

「…あっくん。あのさ、あたしそろそろ産休を取る事にしたから。頑張ってね?」

「うん。頑張るよ」

しかしである。

彩子が産休をとりはじめ、これからって時に吾平に部署の異動の話しが持ち上がる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ