二人の日常 3
ホットサンドを焼く。
少しするとマーガリンの溶けた匂いがしてきた。
焼き加減を見ながら調理してゆく。
…そんなこんなで調理が終わって、吾平は目玉焼きにホットサンド、シチューを並べた。
朝7時過ぎ。
彩子が薄い黄色のパジャマ姿でダイニングに現れた。
「おはよう」
「うん。おはよ」
「彩子。ぐっすりと眠れた?」
「うん」
「なら良かった」
吾平は彩子のパジャマ姿を見た。
彩子はロングのストレートヘアーであるから髪がさぞかし…と思ったが乱れてない。
ピーンとしている。
「そういや彩子ってほとんど寝ぐせ付かないけど何かやってたっけ?」
「うん。パ○ティーのストレートパーマのやつ」
「そんなのあるんだ?」
「もうっ。何年一緒にいるのよ」
「そうは言っても。その箱を家では見たことねーんだもん。
買い物の時だって『いつの間に』って感じだし」
「そお?」
「うん。そうだよ」
「…っと。あのさ。朝食出来たから食べよう」
いつもの朝食。
二人は、平日はニュースなどのテレビを見ながら過ごすけど、休日はもっぱらテレビはつけずに会話になる。
摂流薄教団があった時はここへの愚痴が多かったが無き今は会社での仲間の話しとかが多くなった。
朝食も終わり、吾平は風呂掃除を始めようとする。
用意したのは薄手のビニール手袋とパイプの洗浄剤。
「さてと。取り掛かるか」
まずは、あらかじめ置いてあるお風呂の洗剤で浴槽を洗う。
洗剤を撒いてスポンジでこすって洗ったら、約1分放置してその間にパイプの洗浄剤を排水口に掛ける。
それが終わったら、浴槽の洗剤をシャワーで洗い流した。
パイプの洗浄剤は効果を表すのに30分は掛かるので、トイレ掃除に入る。
トイレのタンクの上のほうから、トイレ用の洗浄シートを使って掃除する。
ゴシゴシ、ゴシゴシ。
「お?余り汚れが付かないぞ?彩子は普段から掃除してんだなぁ」
吾平はこの瞬間、また感謝する。
トイレ掃除も終わり、再び風呂場へ。
見ると排水回りの髪の毛は見事に溶けている。しかし、溶けた髪の毛の臭いが少しキツい。
吾平は浴室の換気扇のスイッチを入れた。
排水口を水で流す。
何だか水の腐った様な匂いは残ったまま。
なんだろうと思い、蓋と網?を取り出す。
「いちおー手袋はめてっと」
更に下にあるストレーナー?に手をかける。
ぬるっ…。
「うっ」
ギャアアアー――ッ!
ストレーナーの周りに白くゼリー状のものが固まっていた。
「匂いの原因はコレかい!」
かなり臭い匂いに顔が引きつる。
「拭き取るには、そうだ。キッチンタオル!」
ストレーナーを置き、手袋をはめたままキッチンタオルを取り出し、ミシン目から切って数枚用意する。
そして、ストレーナーを手に持ち周りの汚れを拭いた。
「うわあ」
ぬるっとした嫌な感触に顔が引きつった。
切ったキッチンタオルを4枚程使って綺麗に出来た。
ストレーナーを排水口に戻し続いて網を付けて、パイプを通して蓋をする。
試しにシャワーを流すと以前より全く流れが違うし臭い匂いもなくなった。
吾平は白い塊が、垢か何かに歯磨きやらシャンプーやらボディソープのカスがくっついて固まってしまったものだと、そう、想像した。
「はーっ。ちゃんとここまでやらないとダメなんだな」
吾平の経験値が少しアップした。
「さて次は洗濯。洗濯っと」
吾平は衣類の洗濯に取り掛かる。
さて、次は洗濯だ。
洗濯籠にある洗濯物に手をかける。
男物も女物も一緒だった。
「彩子ってば別々にはしてなかったんだな」
洗濯物に手をかける。絡まった衣類が籠から取れた。
「やっぱりデカいなー」
一緒に絡まってきた彩子の下着を見てニンマリとする吾平。
「おっといけない。洗濯物を分けなきゃ。確かこーいう下着って別洗い?ネットに入れて弱く洗うんだったな」
男の吾平が何故こんな事を知っているのか?
答えは吾平の職業と仕事内容のひとつにある。
吾平の勤め先の加藤製薬は主にドリンク剤を中心とするメーカー。
スーパーやドラッグストアの改装や新店舗が出来た時、他のベンダーと共に陳列に参加する。
その際大抵は日用品である衣料用洗剤、住居用洗剤、食器用洗剤、医薬品、雑貨などの陳列が終わった次の日にはいり、食品のベンダーさんと共に陳列する。
吾平は、開店前の陳列された日用品の棚の所へ、どんな新製品があるかチェックしていた。
そんな中で、吾平は雑貨も見ていて何気に知っていたのだった。
「さっさと下着はネットに入れて、別にしとくか」
下着とを別にしたら、他の衣類を洗濯機に放り込む。
洗剤は、液体洗剤を入れる。
洗剤の落ちは、界面活性剤の濃度と一部の添加物によって決まる。
その添加物が例えば酵素だったり、オレンジオイルだったりするのだ。
そして、吾平が家で使っているのが
「チャレンジα」
という商品で、通常なら界面活性剤32%もあればかなり汚れは落ちるが、
それらを更に74%まで上げた濃縮洗剤だ。
「本当に良く汚れが落ちるんだよな。コレ」
それで、この洗剤と漂白剤を入れて、最後に柔軟剤を洗濯機の別のとこに入れてスイッチを押した。
洗濯機が動き出す。
しばらくすると脱衣所の引き戸が
「バン!」
と開いた。
「彩子!」
「あっくん。洗濯物 は?」
「今、洗い始めたばっかりだよ?」
「ちょっ、ちょっとどいてよ!」
「わっ!」
ドン!
吾平は、彩子に片手で突き飛ばされた。
「あれっ?下着がある」
「だろ?ちゃんと分けといたよ。こーいう高そうな下着ってウールとかと同じ扱いなんでしょ?」
「あり…がと。けれどちょっとここから出て行って?」
「え?なんで?」
「いいから!」
ドン!
また、吾平は突き飛ばされた。