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飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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9/12

知らない騎士





「すまない。もう、食堂は終わりかな?」



片づけをしていると、見たことのない騎士に声を掛けられた。

誰だろう…第一騎士団の人じゃないし…でも騎士の制服着てるし…

騎士塔に入館できる人は厳重に制限されていて、易々と第三者は入れない。

まだ面識のない他の部隊の人かな?…まあ、怪しい人ではないだろう。



「いえ、大丈夫ですよ?まだ料理も残ってますし…食べますか?」


「うん。お願いできるかな?……君はサトミさん?」


「はい。そうです。用意するので、座ってお待ち下さい」



う~ん、あんな人居たっけ?と思いながら調理場に入る。

ゆるくウェーブした、肩に掛かる程の長さの金髪を

ハーフアップみたいに後ろで縛っている。そして青い瞳。

本来なら悶絶級の美丈夫だが、騎士団の美形にいいかげん慣れた私は、

普通に対応していた。



「ジンさん、1人来たのでこれ盛りつけますね」


「お?今頃か?迷惑な奴だな。片づきゃしねぇ…」


「1人分だから、食べ終わったら私が片づけます。先に上がってください」


「いや、そいう訳には…」


「明日の下ごしらえも終わってるし。もうやることないでしょ?

 奥さんと産まれたばかりのお子さんが、待ってるんじゃないですか?」


「あ?ああ……じゃあ、すまねぇが任せていいか?」


「はい。あ、これ。あまったシュークリーム、ご家族にどうそ」


「おお悪いな。妻がこれ好きなんだ。ありがとうよ」



第一騎士団の食堂長を先に上がらせて、

私はトレーに盛りつけた料理を乗せ、食堂のテーブル席に運んだ。

さっきの男性は、キチンと姿勢良く座って待っていた。



「お待たせしました。どうぞ」


「ありがとう。ああ、美味しそうだ。少し質問しても?」


「え?はい。料理についてですね?どうぞ」



あれ?初めて来たのかな…

何度も同じメニューで出してるんだけど…



「これは、どういう食材なんだろう?」


「はい、こちらはじゃがいもの冷たいスープ、こちらは鳥肉の唐揚げ、

 ラズベリージャムのパン、デザートはシュークリーム、飲み物は果実水、

 素材と味付けは……」



メニューの説明を一通り終えると、

感心したように食べ始めた。



「驚いた…どれも深みがあって美味しい。君が考えたの?」


「はい。そうです。レシピは他の騎士団食堂にも公開しています」


「そうか…これは王都でも、食べられるようにしたいな…」


「王都の方なんですか?」


「あっ、ああ…そうなんだ。別部隊の現場を知る為に、数人交換で派遣される」


「そうなんですね。ここは何もないから、

 華やかな王都の騎士様はつまらなくないですか?」


「いや、そんな事ないよ。その地域によって違った趣があっていい。

 君は…サトミさんは、ここが好きかい?」


「はい。一番魔獣の発生率が高くて、過酷な辺境ですが、

 騎士団の方々は、団結力が強くてみんな優しいし、自然も豊かで私は好きです」


「そうか…そうだね。ここの騎士団の皆が、頑張って食い止めてくれるおかげで、

 王都まで魔獣は侵入してこない。感謝しなくては」



その人は、ふんわり微笑んだ。

何だろう…この穏やかな雰囲気は…騎士らしくない人だな…

騎士団の中にも穏やかな人はいる。

でも、その中でも緊張感というか、筋の通った一線の強靱さを秘めている

感じがするんだけど…

この人からは、そういうのをあまり感じられないのだ。

王都の騎士って、お飾りと言われているし…こんな感じなのだろうか。



「ごちそうさま。トレーは、ここに置けばいいのかい?」



調理場で洗い物や片づけをしている私に、後ろから声を掛けられる。

くるりと向き直り、濡れた手を拭いてトレーを受け取りにカウンターに向かう。



「はい。お口に合いました?」


「うん。凄く美味しかった。この食堂を利用できる団員が羨ましいよ」


「良かったです。またいつでも食べにきてください」


「うん。ありがとう。君は…その…」


「はい?」


「3日前、飛竜を討伐した時に発生した、光の柱を見たかい?」


「え……」



───ええ、もちろんです。何を隠そう私の仕業ですから。



「あれは君だね?」


「……そう…なるんでしょうか…」


「おや、大手柄なのに無自覚なんだね?」


「よくわかりません…とりあえず、団員の皆が無事で良かったです」


「ははっ、謙虚だね。そんな君に敬意を…」



そう言って私の手を取り、手の甲に口づけを落とした。

あまりに自然な流れに、なすがまま。

彼はにっこり微笑んで、呆然とする私を残して優雅に食堂を後にした。


そして入れ替わりで、お腹を悪くして厠に籠もっていた、

今日の私付きの護衛騎士が、バタバタと食堂に入ってきた。



「すいません、サトミさん!大丈夫でしたか?」


「あ、うん。それよりお腹大丈夫?」


「はい、すぐ戻るつもりだったのに、

 なぜか中々治らなくて…焦りました」


「大丈夫だよ。さっきまで食堂長も一緒だったし、

 それに、王都からきた騎士さんも食事してたし…」


「あっ、そうなんですね。良かったです」


「お腹に優しいスープでも飲む?簡単だから作ろうか?

 腹痛のせいで夕飯、あんまり食べられなかったんでしょ?」


「本当ですか!ありがとうございます。助かります」



うっかり一人きりになってしまったけど、これは報告しないでおこう。

またグレンさんに正論で詰め詰め説教されるし。



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