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飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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8/12

魔獣の襲来




「今日夕飯のメニューは餃子?」


「そう、今みんなでちまちま包んでる」


「まじ?超嬉しい‼︎

 でも、あれ美味しくて大好きだけど、作る方は大変じゃない?」


「ううん。包む作業しながら、お喋り出来るし楽しいよ?」



アレンくんは、今日私の護衛当番だ。休憩がてらお喋りしている。

醤油がこの世界には無いので、餃子は基本なにも付けないで食べる。

その変わり、具だくさんに濃い味付けして、皮をパリパリに焼き、

パニーニぐらいの大きさで皮もその分厚くして、

ナプキンで包んで手で掴みで、かぶりつける形にしている。


この世界の食事は、3食ではなく、2.5食だ。

朝は基本少な目のパンとスープと卵料理を食べ、

13時にお腹が空いた人だけ、サンドウィッチのような軽食を取り、

夕方16時半に夕飯をがっつり食べる。


今まで食堂は、朝・夕飯のみの可動だったが、13時の軽食も提供する事になった。

ちなみに、私の手伝いは昼と夕飯のみ。


大きなマッシュルームの傘をバターで炒め、輪切り玉ねぎを塩胡椒で焼いて、

チーズを挟んだマスタードつきの大雑把なサンドウィッチを提供した所、

思いの外好評で、その他に卵サンド、ポテトサラダサンド、

豚肉ピリ辛キャベツサンド、トマトとハンバーグサンド、

ベーコン目玉焼きサンド等を日替わりで提供している。




「さっきお昼混雑してて凄かったね。

 前はお昼食べる人殆どいなかったんだよ。他の部隊の奴らも来てたし。

 第一騎士団の食堂のが美味とか言いやがって…昼食もレシピ配ったんだよね?」


「そうなの?騎士さんって、体力使うから元からあんな感じだと思ってた。

 レシピは渡したんだけど、工程が面倒で省いてるのかも…

 前に夕食も同じ事してたし…時々指導しに行った方がいいかもね」


「へぇ〜作り方にコツがあるんだ。

 はっきり言って、今までの食事は生きるために

 食べてる感じだったもんね。

 サトミさん来てから、美味しい食事が楽しみになって、

 厳しい訓練も頑張りがいあるもん」





カンカンカンカンカンカン‼︎





けたたましく鳴り響く鐘の音に、私の体は跳ね上がった。



「えっ?何、この鐘の音っ‼︎」


「魔獣の襲来だ…サトミさん、城内に!」


「う、うんっ‼︎」



搭上にいた私達は、アレンくんに手を引かれて私室に急いで入った。

窓から様子を見ていると、空に何か飛んでいるのが見える。



「飛竜だ…くそっ…」


「飛竜?……竜っ?」


「うん、あいつ強くて…しかも飛ぶから討伐しずらいんだ…」


「私、弓矢で加勢するよ?」


「駄目だよ。サトミさんは保護対象だし、

 まだ身の振り方決まってないだろ?大人しくしててよ」


「でも…何のために魔力があるの?こういう時の為じゃないの?」


「うん、そうだけど…今は駄目だよ。危険なことしないで。

 気持ちは分かるけどお願いだから…」


「…………うん…」



アレンくんの言っている事も分かる…でも…

みんな命がけで戦っているのに、私1人だけこんな安全な場所にいていいの?



「アレンくんも加勢してきて、私はここに居るから」


「え…でも…」


「ここなら安全でしょ?エリカさんも居るし大丈夫。

 部屋から出ないから。ね?」


「…分かった。本当にサトミさん部屋から出ないでよ?」



そういって、彼は急いで騎士団の元へ行った。


私は弓矢を持って急いで塔上を目指す。

エリカさんは黙って私の後ろを付き従った。

私が何をするのか分かっていたのか、

止めても無駄だ、やれやれと言った感じで肩をすくめて笑っている。


息を切らして空を見上げると、大きな翼を広げ円を描くように飛び、

ときどき咆吼を上げながら、騎士塔を見下ろしている。



でっか…



本当に、竜が存在してるんだ。

真っ黒な鱗に覆われた体に、蝙蝠のような翼。

凄い…こんなのと皆戦ってるの?


飛竜は、まるでこちらの様子を見ているような、

標的を探している鷹のような飛び方をしている。


と、とりあえず、討伐しなきゃ。


空に向けて弓を構え、矢を引き標的をしぼる。

翼を狙った方が、いいだろうか…

でも…力が有り余ってる状態で打ち落としたら

暴れて地上にいるみんなが危ない…被害が広がるかもしれない。


やはり…心臓を狙った方がいい。

ん?心臓ってどこ?

目を凝らすと体の真ん中辺りが、赤くぼんやり光った。


そこだっ‼︎


幸い今は、ホバリングして同じ場所に低空飛行してる…

グンッと矢を引き、まっすぐ標的に向かって貫いた。




ぎゃああああああああっ‼︎




命中‼︎ 的がデカイから全然楽勝!


耳をつん裂く咆吼が発せられる中、すぐに次の矢を放ち続ける。

まだ、飛んでいる飛竜の翼にも矢を次々放ち込んだ。



落ちろっ‼︎



20本目の矢を命中させた直後、まばゆい金色の光の柱が

飛竜を縦に串刺しするように現れた。


それはどんどん周辺に広がり、やがて消えて

キラキラとした粒が舞い降りていった。




この光…なに?

もしかして、私の魔力…?



「す、凄いっ‼︎」



後ろに控えていたエリカさんが、感嘆の声を上げる。

飛竜はとうとう力尽きたのか、翼をゆるりと一回羽ばたかせ、

そのまま体をぐるぐる旋回させながら地上に落ちていった。




…ドォンッ!!バサバサッ…




「ウオォォォォーーーーーーッ‼︎ 落ちたぞ!トドメを刺せ‼︎ 」



騎士団員達の雄叫びが上がる。



「落ちました‼︎ サトミ様…凄いです。全部命中しました‼︎

 まだ息はありますが、瀕死ですね!もう大丈夫です。

 後は騎士団の方々に任せて、私達は部屋に戻りましょう!」


「う、うん…」



良かった…何とかなった…

でも、あの金色の光は何だろう。あれが私の魔力なのだろうか…


地上を見ると、騎士団の皆が飛竜にトドメを刺し終え、勝敗はついたようだ。

私がしたとバレているだろうが、興奮気味のエリカさんと共に階段を降り

大人しく部屋に戻り素知らぬ顔でソファに座った。




「サトミさんっ‼︎」




ノックの後、どかどかとアレンくんが入室してくる。

その手には回収したであろう20本の矢。

バレてーら。




「あ、えーと…お帰りアレンくん。大丈夫だった?」


「あのですねぇ…バレてないと思っているんですかっ?」


「私が勝手にしたんだからっ!アレンくんは悪くないからっ‼︎

 もし何か言われたら、そう報告して!」


「………あなたって人は…」


「ごめんね…でも、守られているだけなんて、

 私の性に合わない…無理…」


「そういう事じゃないです。

 正直助かりました。ありがとうございます。

 でも、で す ね ?」


「はい…」


「サトミさんに、何かあったら困るんです!

 今やあなたは国にとって大事な存在なんですよ?

 それに…俺に嘘をついたり、騙すような真似しないでください!」


「ごめん…でも討伐したいって言っても、

 やらせてくれなかったでしょ?」


「それは、頭ごなしにあんな風に言って俺も悪かったです。

 サトミさんの気持ちも分かります。

 でも、もう嘘はやめてください。信頼されてないみたいで悲しいです。

 討伐の参加をしたいなら…今度からお側で護衛するようにします。

 それでいいですか?」


「うん。ありがとう。アレンくん。本当にごめんね…」


「はあ…グレン団長にも報告しておきます。

 サトミさんは言うこと聞かないって!」


「ちょっと言い方!」



その後、ぷりぷりしたアレンくんが退室した後、

心配したグレンさんにも、危険なことをしちゃダメだと

保護対象者についてコンコンと説明され正論で詰められ謝罪しまくり、

反面、団員達には勝利の女神だとあがめられる始末。


そして、私は今後この力を討伐に役立てたいと希望した。

散々揉めたが、強い魔力を持ってる人が戦うのは当然で、

結果的に国を守るのだからと私の強情な訴えにグレンさんも折れ、

書面で国王陛下からも渋々許可が下りた。


さらに、飛竜の討伐は褒章を貰えるほど栄誉なことらしく、

今度の登城で、私と北の辺境の騎士団が表彰されるそうだ。


平穏に庶民らしく暮らしたかったのに、

自分からそれを壊す目立つ真似をしてしまい、

私は少しの間、自己嫌悪に陥ったのだった。



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