初めまして王様
朝からバタバタと準備に追われ、
豪奢なドレスを進めるエリカさんを断固拒否して、
失礼にならない程度のシンプルなワンピースドレスを身につけた。
あんな床をずりずり引きずるドレス歩きにくいし、重いし汚れるし無理。
その変わりヘアスタイルは可愛く豪華にしましょうと、
編み上げたハーフアップの髪に白い花の飾りを沢山付けられる。
う〜ん、結婚式の新婦みたい。
「綺麗だよ。黒目と黒髪が映えて凄く似合っている。
でも、随分シンプルな装いだね。
サトミさんは着飾るのが好きじゃないのかな?」
「苦手なんです…あのきついコルセットとか…
重くて歩きづらいドレスとか…大きな宝石とか…無理です」
「はははっ。分かるよ。でも、勿体ないな…」
「え?」
「いや、こっちの話し。さて、出発しようか」
「はい。王宮までどれくらいですか?」
「馬車だと片道2時間程だね。寝ていてもいいよ」
「緊張してそんな余裕ないです…」
「そうか、王都は町が賑やかなで発展しているのだが、
それどころじゃないか」
「王様の謁見以外は、初めての外出なので少しわくわくしてますが…」
「良かったら謁見が終わったら町を案内しようか?
何か欲しい物があれば買って帰るといい」
「本当ですか?疲れていなければ行ってみたいです。
欲しい物は、今のところは無いです。
もう少し落ち着いたら物欲出てくると思いますけど」
──今現在は、騎士塔に仮住まいだから、定住する家は欲しいけどね…
「では、その時に聞こう。欲しい物があったら言ってくれ」
山深い自然の景色から、村らしき家々と畑が見えてくる。
そして、大きな街を抜け、海外でしか見たことのない
豪華絢爛な大きな白いお城が見えてくる。
まっすぐな渡り橋を進み、
重い外門の扉が開き、敬礼する騎士に見送られる。
「凄い…本物のお城だ…」
思わずボソッと感想を漏らす。
馬車が止まり内門の扉が開かれ、グレン団長にエスコートされ馬車から降りる。
「とりあえず、謁見まで少し時間がある。別室で待機しよう」
「はい…本当に本物だ…」
高いお城の外観を下から見上げて、ぼんやり歩く。
映画のセットみたい。
空気の違う荘厳な世界観に圧倒される。
天井が無駄に高い廊下を歩き、1つの部屋に通される。
「では、こちらでお待ち下さい。
軽食をお持ちしますので少々お待ちを」
この王宮の侍従さんらしき人が、一礼をして退室する。
豪華なソファに腰を下ろし人心地付く。
「……凄い…豪華すぎて、目がチカチカする…」
「はははっ。国王が住まう城だから、
豪奢な作りや家具は威厳を示すのに必要だからね」
「…落ち着かないです…早く帰りたい…」
そうこうしてるうちに、謁見の間に呼ばれ案内された。
王様が少し高い壇上にいて玉座に偉そうに座って、
天井が高くて豪華なシャンデリアがあって、
両側には高位貴族と護衛騎士がずらっと並んでいる広間と思いきや、
さっきの待機室より少し大きいくらいの応接室のような部屋に案内された。
少しホッとする。
そして、目の前のソファには、この国の国王陛下が鎮座している。
後ろにはお付きの方々が、整列してズラッと直立不動。
恐らく白い制服だから、王都の護衛騎士と侍従だろう。
「陛下、サトミ殿をお連れしました」
「よく来てくれた、ここへ」
施されるまま、陛下の目の前のソファに座る。
あれ?挨拶しなくていいのかな…ソワソワしていると陛下が口を開いた。
「私は、ガレリア国の国王。ガルシャ・ネアン・ガレリア。
ようこそ我が国へ。歓迎する、稀人殿。」
「初めてお目に掛かります。国王陛下。
私は、サトミ・ヒリュウと申します。サトミとお呼び下さい。
この国に快く受け入れてくださって、感謝申し上げます」
「ほお、グレン団長から話は聞いていたが、礼儀正しい方だ。
たしか御年は19歳だったかな?それより随分若く見えるが…」
「はい、19歳になります。
その…私の種族は、前の世界でも実年齢より幼くみえるようです。
皆様に比べると、凹凸のない平面顔に身長の低さがそう見えるのかと…」
「種族?色んな人種がいるとことかな?」
「はい、この国の方々のような人種も私の世界には、存在しています。
主に白人と言われ、他は黒人、黄色人種など…私は黄色人種です」
「ほお、興味深い…環境や生活は、こちらと比べて違うのだろうか?」
「はい。魔法は存在してませんが、技術や科学が進んでいました。
国によって違う言語ですが、自動翻訳もありますし、
インターネットで、世界中と繋がりコミュニケーションが取れます。
乗り物も石油や電気を燃料に動く自動車という物がありまして…」
その後、私の世界の話を色々話した。
文明の進み具合に回りの側近らしき人達も無表情から、驚いた顔になっていた。
国王は話しやすい方で、私は安心して力を抜いて話が出来た。
「いやはや、面白い。まるで夢物語のような世界だ。
しかし、君は聡明で可愛らしい方だな。
北の騎士団達が寵愛するのも理解できる」
「いいえ、私の方がお世話になっているんです。
この世界に来て不安な中、助けていただいた上に、
今でも親身になって親切にして貰っています。感謝してもしきれません」
「…陛下、ご歓談中申し訳ありませんが、
会議の時間が迫っています…そろそろ…」
「ああ、そうだったな。
もっとそなたの世界の事を聞きたいのは山々なのだが…
私はもう時間が無くてな…残念だがそろそろ退室する。
この後、魔術師団の師団長よりサトミ殿の魔力鑑定をしてもらう。
引き続きこのまま待って貰えるだろうか?」
「はい。お忙しい中お時間いただき、ありがとうございました」
「こちらこそ感謝する。ぜひ、また話そう。非常に有意義な時間だった。
…では、ステラここへ」
そういって微笑み席を立って退室した王様は、想像していたより若かった。
たぶんグレンさんより、10歳くらい年上だろうと思う。
腹の出た偉そうな、王様を想像していた私は正直拍子抜けした。
少しクセのある金髪に、タレ目の青い瞳が優しくて、穏やかなテノールボイス。
ダンディで大人の男性。そして、包み込むような優しさと威厳を纏う方だった。
陛下と入れ替わりで、後ろに立っていた一人、
濃い紫のローブを纏った人が一礼して静かに着席した。
うわ…魔術師っぽい人登場。
そして、深く被ったフードを脱いだ。
長い銀髪を横に流して緩く縛り、赤紫の瞳がこちらを見た。
この人も綺麗な人だ。中世的で一瞬女性かと見まごうほどの美形。
この世界…美男ばっか…純日本人の私はいたたまれない…
「初めまして。私は第一魔術師団の師団長、ステラ・ネグマ。
稀人殿の魔力鑑定を担当します。よろしくお願いします」
「初めまして。サトミ・ヒリュウと申します。サトミとお呼び下さい。
こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「私も、ステラとお呼びください…」
何か私の顔凝視してるんだけど…どんな感情なのだ…
探っているような、観察しているような…
魔術師の彼には何か見えているのだろうか。
すると、スッと右手を出した。
ん?何?手を出せばいいのかな?どうすれば…と手をじっと見ていた。
「では、サトミさんの左手を私の手の上に、軽くのせてもらえますか?」
「は、はい…」
そして、ローブの中からゴトリと大きな透明な球体を出す。
…水晶かな…よく占い師が手をかざしてる奴だ…
それを私の前に置き、空いている右手を上に置くように指示した。
「緊張しないで、そのままジッとして…」
「はい…」
これ何してるんだろう…
しばらくすると、左手の指先が温かくなってきた。
ピクリとステラ様の手が動いたと思うと、私の左手をガシリッと掴んだ。
びくっと肩が揺れる。え…?何?でも動いたら駄目だよね?
少し不安になりながら、成り行きを見守っていると、
球体に色とりどりの丸い光がくるくる現れだした。
綺麗…と見ほれていると、
掴んでいた手をグイッと引き寄せられ、体が前に倒れる。
え?何?ちょっ…
「ステラ師団長殿‼︎」
横にいたグレンさんが、引っ張られた私を庇うように抱え込む。
ステラ様はハッとして、私から手を放した。
「すまない…つい…集中して回りが見えていなかった」
項垂れて、大きなため息を吐き首を振る。
「大丈夫か?サトミさん」
「はい。引っ張られただけなので…ありがとう、グレンさん」
「ステラ師団長殿、それで鑑定結果はどうなりました?」
「…それが…その…今まで無かったことで…どう言えば…」
「教えてください。分かる範囲でいいです。
今日登城したのは、この為ですから。
彼女は今後の身の振り方を考えなくてはいけないのです」
「………彼女は……全属性持ちです…」




