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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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追放者の村




「この村は、また…個性的ですね」


「トンネルを通ると、山の窪みのような所に集落があるんですねぇ…

 密林のジャングルの秘密基地みたいです」


「囲まれてるから、日当たりが悪いね…」


「そうですねぇ。この環境じゃ、仕方ありませんねぇ…

 なぜ、こんな不便な山奥深くに、わざわざ村を構えたのでしょう?

 ここに来るまで、恵まれた土地は沢山ありましたよね?」


「ここは、クーデターを起こした元王族縁者の罪人の追放先です」


「えっ?」


「もう、百年以上も前の事です。その間に、村外から人の出入りも

 多数ありましたし、今いる殆どの方々は血筋的に関係ありません」


「だから出入り口が1箇所しかない、こんな管理しやすい環境に?」


「ええ。今はいませんが、当時はトンネルの出入り口には大きな厳重な門が

 あり、門番の騎士がいました。入り用で村を出る時には、監視騎士が付いた

 上に認証が必要でした」


「最低限、生きていける環境を与えたんですね…

 クーデターにしては、随分軽い気がするんですが…王族規範ですか?」


「ええ、その通りです。

 もう罪は償い済みですし、他の土地に移住も可能なのですが、

 先祖の墓が有ったり、代々受け継がれてきた環境を捨てられず、

 留まっていると聞きます。それに山奥深いお陰で自然豊かですから、

 山特有の物を農作物で育み、ある程度の食の恵みあるようです」


「そう…ですか…でも、私達に悪いイメージは、お持ちではないのでしょうか?

 国王陛下からの指示で、来ている訳じゃないですか?」


「クーデターを起こした人達は、もう、この世には居ませんし、

 今の方々は、そういう感情は持っていませんよ。普通に接して大丈夫です。

 でも、自分達は王都に良く思われていない村民という認識はあるらしいです」


「そうなんですか…ここでは、土地の浄化はするんですか?」


「ええ、小さい範囲ではありますが。

 低級魔物の戦闘で、瘴気にやられた元騎士2名の治癒を

 お願いしたいそうです。

 今日は宿で休んで、明日土浄化を後日に元騎士の治癒をお願いします」


「はい。分かりました」



セオドア様の解説を聞きながら宿入りした。

要塞のような孤立した場所ではあるが、それ以外は

そんな後ろ暗い過去があるような村には見えなかった。

建物もしっかりしているし、道もちゃんとこの土地の土から作ったであろう、

煉瓦が敷いて整備されてある。

素材を運び込むことも不便な山奥なので、ほとんどの建物の素材は、

付近で手に入る土と木だった。


そして、周りの崖を一部切り開いて階段を作り、

村全体を見渡せる高さに領主の家を建ててある。


滝や河も豊かで、日差しさえ良ければ楽園のようにも見える。

雑草かと思ったが、よく見ると自生しているハーブも沢山ある。

地理的に貿易しにくいだけで、砂漠村よりも資源と食料は、

恵まれているような気がしたし、ひっそりとしている秘境のような雰囲気で、

私は嫌いではなかった。


畜産は羊が主で、羊肉、羊の毛糸の衣服などが中心で、

奥深い山だから水源も豊か。川魚、木の実や果実、ハーブやキノコも採れる。

食堂の食事も、その辺がメインに提供されていた。



「ハ、ハンモック!」


「まあ!素敵ですぅ!これがベッド変わりなんですねぇ!」


「確かに、めったに来ないお客の為にベッドは経費も手間も掛かるし、

 ハンモックの方が手入れしやすくて合理的だよね。

 なに気に豪華な蚊帳も掛けてあるし…逆にお洒落かも…」


「物珍しさでお客様は喜ぶでしょうねぇ。

 この村の宿は、ここ一軒のみみたいですし…」


「そうだね、訪れる人も少ないのだもの。宿があるだけいいわ」


「1階は大衆食堂…なるほど合理的な作りですぅ」


「私とエリカさんだけ2人部屋で、他の騎士達は4人部屋なんだっけ?

 なんだか悪いわね…」


「野営じゃないだけましですよぉ。

 あ、でもサトミ様は、グレン団長と過ごせないから残念ですねぇ…」


「えっ!べ、別にそういう事を言ってる訳じゃないって!」


「ふふふふっ、仲が良くて結構でございますねぇ♪」


「エ、エリカさんっ」




* * * * * * *




「今日は、これから領主邸に伺います。

 その後一緒に、浄化場所を案内してくれるそうです」


「はい、分かりました」


「サトミ、良く眠れた?」


「はい、グレンさん。ハンモックいいですね!欲しくなっちゃった」


「ああ、あれいいね。北の辺境の騎士塔でも導入しようか?」



他の騎士団員もハンモックを気に入ったらしい。

経費で落とせるか、顔をひきつらせたセオドア文官を皆が囲って詰めていた。

結果、購入出来ることになった。


領主邸は、長い階段を上がり一番高い所にある。

傾斜が凄くて馬も入れず、徒歩になる。

青々とした森林に抱かれるように、

ひっそりと佇む館は、穏やかに眠る森の主のようだった。


玄関で使用人に出迎えられ、応接室に案内される。



「ようこそ、いらっしゃいました。

 私は、この村の領主を勤めさせて頂いております。

 ユニ・アゼリア。こちらは妻のアリアです」



そう挨拶した領主は、金髪碧眼の穏やかそうな初老の男性と女性だった。

隠しきれない上品さは、確かに王家の血筋なのだろう。


こちらもセオドア様が挨拶を返し、皆簡単な自己紹介をした。

ユニ様は、目を細めて私を見て微笑んだ。

面差しが…国王陛下に似ている。多分この方が直系に一番近い血筋なんだ。



「実は、足を悪くしておりまして…私には少々あの階段がきついのです。

 ですので、大変失礼かとは思いましたが、

 わざわざお客陣に、ご足労頂きました。申し訳ありません」


「あの…失礼ですが、瘴気で負傷したお二人の内のお一人ですね?」


「ええ、驚きました。お分かりになるのですか?

 恥ずかしながら…元騎士で腕に自信はあったのですが、

 年には勝てませんでした…はははっ」


「俺は北の辺境の第一騎士団、副団長レイ・バーティスです。

 探知能力保持者で瘴気の気配が分かります。

 村民の為に戦われた名誉の負傷です。敬意を払わせてください」


「おお、そうでしたか。何と素晴らしい…

 敬意など勿体なきお言葉…領主として当然の働きをしただけです」


「あの…良ければ先に、治癒をさせて頂いてもよろしいですか?

 いいですか?ステラ様、セオドア様」


「そうですね、先にしましょうか」


「よろしいのですか?その土地の案内は妻にしてもらって、

 その後にと思っていたのですが…」


「許可もおりましたので、では、お手に触れてもよろしいでしょうか?」



ゴツゴツとした、剣ダコのある騎士独特の手に触れ、

魔力を領主の体に流し込んだ。

黒い瘴気が暴れだしたが、そのまま徐々に消えていく。

この方…瘴気の影響で心臓も弱っている。

こっそり心臓にも治癒を施し、ホウ…と息を吐き目を開ける。


目の前で驚きの顔をした領主がいた。



「なんと…ああ…痛みが無くなりました…

 これは、光魔法の影響でしょうか。体中が温かい…」


「ええ。どこか、違和感はありませんか?」


「大丈夫です…心から感謝を申し上げます。聖女殿」


「いいえ。仕事ですので。あのよろしければ、奥様も…」


「えっ?わ、私もですか?」


「はい、あの…失礼ながら、肩が上がらないのではないですか?」


「まあっ、ええそうなんです!年だと思って、諦めていたのですが…

 治るのですか?」


「はい。そのままでは、お辛いと思いますので、私にとっても、

 そんなに負担ではありませんし…

 セオドア様、ステラ様、予定外ですがいいでしょうか?」


「ええ、構いませんよ。ステラ殿もいいですか?」


「止めてもやるでしょ?いいよ。サトミさんは、魔力量余裕あるし」


「では奥様、肩に触れます…」


「は、はいっ」



奥様の肩はいわゆる五十肩だった。血行促進して筋肉をほぐすよう施した。

もう1人の元騎士の方の治癒も終えて、そのまま浄化地へ案内して貰った。

すっかり快調になったご夫婦は、楽しそうに2人で手を繋ぎ歩いていた。


仲のいい夫婦だなぁ…私もグレンさんとあんな風になりたい。

微笑ましく見ていると、グレンさんがいつの間にか隣に来て、

自然に私と手を繋いだ。



「俺達も、あんな風に年を取りたいな…」


「あ、私も、私もっ同じ事思ってた!ふふっ。可愛いよね、あのご夫婦」


「サトミは、可愛いお婆ちゃんになりそうだ」


「グレンさんは、格好いいお爺さんになりそう」


「…おーお、仲がよろしい事で。結構結構♪」


「公務中は自重して欲しいですがね…独り身には毒です」


「余裕無いねぇ…モテませんよ?セオドア殿」


「煩いですね。その通りだから余計腹が立ちます!」


「あ~ごめん、ごめん。当たってたんだ?」


「婚約破棄された男に言われたくありませんがね」


「あっ酷い!まだ、立ち直ってないのにっ!」


「セオドア様、ステラ様、あの~お取り込み中ですが、

 浄化地に着きましたよ~」


「ほら、最年少のアレン殿にまで気を使わせて!」



土地の浄化も無事に終わり、元気になって喜びの領主夫婦に晩餐に招待された。

出されたお料理も、ワインもこの村の物で繊細さがあり美味しかった。


使用人も多くはないが、みな洗練された方々だった。

僻地に追放されても、腐らずに衣食住と教育はキチンとしていたのだろう。


息子さんと娘さん達は、村を出て自立しているそうで、

戻って跡を継いでくれるなら任せるが、そのまま帰らなければそれでもいい、

村の誰かに領主を継いで貰うと言っていた。

若い人には、この閉鎖的な村は未来が望めず苦痛なのでしょうと。


他の村とも多少の交易はあるが、殆どは自給自足で何とかなっているそうだ。

避暑地のように夏は涼しいが、冬は地形のせいで、雪の吹き溜まりになり

非常に寒さが厳しい。

なので、保存食作りを秋から始めて、冬は村に籠もって暮らす。


私はそれを聞いて、一部の木々の成長制限を提案した。

規定の高さまで木の成長を止める土魔法だ。

そうすれば日の光も当たるし、雪も溶けて農作物が育つし暮らしやすくなる。

領主夫婦は、その提案に何度も御礼を繰り返した。


他の皆にも賛成してもらって、

明日には村を囲っている木々の成長制限をする事となった。




* * * * * * *




「へぇ~~~…凄いね。こんなに違うんだ」


「村が、明るくなりましたね」



セオドア様とステラ様が、感心したように村を見回している横で、

領主夫婦と見学していた村民が、感動で打ち震えている。



「凄い…全然違うぞ…これなら、作物も多く育てられる…」


「まあ、なんて事…あんなに、暗かった場所が…輝いているわ」


「木々の枝の剪定はしてたけど、

 木の高さだけで、こんなに違うもんなんだなぁ…」



私は、思いつきの提案として、今後のために領主に進言してみた。



「あの、この村で土魔法が使える方に、やり方を教えておきたいのですが、

 これから、暮らしていく中で高さの調整も必要だと思いますし」


「おお、そうですね。今後の事も考えてくださるとは、ありがとうございます。

 こんなに良くして頂いて…感謝してもしきれません」


「私は公務として村を訪問していますから、当然の事をしているだけです。

 そんなに畏まらないで、お気軽に接してください。

 魔力以外は、私も皆さんと変わらない人間ですから…」



また勝手に一人で先走ってしまって、

ハッとしてチラリとステラ様とセオドア様を伺うと、少し目を細められたが、

小さくため息を吐きながら頷かれたので、良しとしよう。

勝手な行動や言動をしないよう言われたのに、ついお節介が出てしまう。



「私どもでは、大した権威もありませんが、今後何か困難な事が発生した際は、

 お力になれればと思います。

 このご恩に報いたいのです、どうぞ今後お見知り置きを…」


「そうですね…北の辺境騎士団が守ってくれてますけど、今後私のような者は、

 どうなるか分からなかったので、正直少し不安だったのは事実です。

 頼れる方達が、多いのは心強いです。温かなお言葉ありがとうございます」


「決して社交辞令ではございません。

 どうぞ、頼りにしていただけたらと思います」



今回の浄化遠征で、私は沢山の感謝をされ、そして味方が出来た。

そうか…この浄化遠征は、聖女の威厳を見せつけるだけじゃないんだ。

実際役に立つ働きをすれば、それに対して感謝される。

私もこの国の人達に、好意的になる。

結果、軽い足枷を嵌められて、この国から離れ難くなるってことか。


なんか国王陛下に嵌められた感が否めないけど、

私を強制的に従わせられないから、ここに留めさせる苦肉の策なのだろう。


聖女を臣下に従えてる王家の株も上がるし、

一番得をしてるのは王家か…。


まあ、いいでしょう。

知り合いが増えるのは、私にもプラスになるもの。





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