表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/38

土地浄化の遠征




明日は、いよいよ土地浄化の遠征へ出発する。


遠征組は、グレン団長、レイ副団長、

第1騎士団から他2名(内1人はアレンくん)、

第4・6・10騎士団から各5名づつ、

セオドア文官、ステラ師団長、侍女のエリカさん、私、

といった随分と豪華な大所帯になった。

護衛も兼ねているので、これでも少人数らしい。

ちなみに、サイラス副団長補佐は、北の団長代理で居残りになる。



「結構な距離を移動しますから、宿も取れない場所もあります。

 申し訳ないのですが、何日かは野営になります」


「野営って…外でテント泊ですか?」


「ええ、基本サトミ様とエリカさんには、安全な馬車の中で

 就寝して貰いますが、他はテント泊で、騎士団が交代で見張りの番をします。

 なので、心配有りませんよ。勿論、村に着けば宿に泊まれます」



キャンプみたいで、少しワクワクする。

色々な村を見ることも出来るし、村の人達とも交流したい。

順調に打ち合わせは進み、さすがセオドア文官は、

説明が丁寧で分かりやすいなと感心していた。

それに、初対面の挨拶以来、どういう訳か嫌みを言ってこなくなった。


聖女っぽい、白い聖職者のような衣裳も準備された。

浄化する時に、これを身につけ村人に神格化させ距離を取る狙いがある。


近しい存在も好ましいが、誰でも近づける距離感だと、

悪しき者も近づきやすくなり、護衛しにくくなるからだ。


そして、あまり聖女の外見を公に認識されないよう、

頭から被るケープも用意された。

黒髪と黒目はめずらしいので、その特徴を少しでも隠す為だ。



「神聖力と暗黒力は、他の属性とは違い特別なんです。

 ほとんど保持する者がいないって事もありますが、性質が違うというか…

 まだ解明されていない謎が多い魔力なのです。

 今まで異世界人しか持ち得なかったので、神の力と言われているのは

 そのせいです。しかも通常は、神聖力ならそれのみの保持になりますが、

 サトミさんの全属性保持と膨大な魔力量は、前例のない異常事態なんですよ。

 そして、歴代の聖女は短命です。

 その原因は、神聖力の万能性に依存した王族が聖女を酷使したせいで

 寿命が削られたのです。異世界人の聖女もこの世界に対して無知で

 拒むこともできず、悪い意味で善良な方が多くて、言われるがママ

 素直に従ってしまった、という結果ですが…

 ですから、サトミさん、魔力切れを何度も起こすと寿命が縮むと

 ご理解ください」


「はい、善処します。理解はしてますし、自分の身くらい守れますけど…」


「しかしですね、いくら魔力が強い聖女でも、

 何かあれば命を落とす1人の人間なんです。不死ではないのですよ?」

 

「そうですね。おっしゃる通りです。気をつけます」



ということで、神聖力の使い過ぎと、

多くの人前ではあからさまに神聖力以外は使わないように強く言われた。


もし、全属性持ちなんて知られれば、

何が起こるのかなど、火を見るより明らかだ。


なるほど、王家が必死になるはずだ…




* * * * * * *




そして次の日、私たちは居残り組に見送られ、

土地浄化の遠征に出発した。



ゴトゴトと馬車に揺られ、私とエリカさんは同じ馬車に相乗り、

別の馬車にセオドア文官とステラ師団長が相乗り、荷物運び用に馬車5台、

騎士団員は全員騎乗での移動になった。

時々、グレンさんが様子を見にきてくれたり、休憩したり、

流れる景色を見ながら、私はうつらうつらして平和に過ごしていた。


これから、半年間の長い旅路になる。



「サトミ様、グレン団長とは体の相性どうでしたぁ?」


「へっ⁉︎」


「あら〜、真っ赤になっちゃってぇ。まあ、野暮なことは聞きません。

 お二人の雰囲気でわかりますからぁ〜、うふふっ」



いや、何もなかったんだけど。ただ一緒に寝ただけだし。

それにグレンさん紳士だから、病み上がりの女にそんな事しないし。

でも、相性ってそんなに大事なことなのかな?



「…相性って、その…そんなに重要なの?」


「勿論ですよぉ!特に魔力持ちの方々は大事なんです。

 魔力にも相性があって、例えどんなに愛し合っていても、魔力の相性が悪いと

 閨が上手く行かず、子を成せない夫婦もいるんですぅ。

 反面、魔力相性が良ければ快楽が倍増して、もっと愛が深く繋がるんです。

 なので、後々困らないように、婚前交渉を許されているんですよぉ」


「そう、なんだ…」


「だから、そんなに恥ずかしがる事じゃないんですよぉ〜」



この世界の男性は、女性を大切にする。

性行為も例外ではなく、男性にとって面倒であろう愛撫に時間をかけて、

女性に快楽を与え、性行為の苦痛を少しでも軽くする工夫をしている。


女性は性行為そのものは、あまり好きではない人も多く、

人によっては苦痛になるが、愛している男性から受ける、

前戯や抱擁で幸せを感じるのをこの国の男性は、理解しているという。

なんでも、女性の心理や性の心得という、必修の義務教育があるそうだ。


この世界の女性は、主導権もあるし、大切にされるし、

凄く幸せなのではないだろうか。

そのせいで、我が儘な人が多いらしいが。


もし、子供を持てなくても、変わらず女性を大切にするという。

男性側からすれば、数少ない女性の価値と重要性を理解しているから、 

守るべき大事な存在なのだろう。

だから破局するのは、たいてい女性側の理由によるものだそうだ。


エリカさんから軽い性講座を喰らいながら、内心関心しながら耳を傾けていた。



「そういえば、魔力の授業は順調ですかぁ?」


「うん、大体は出来るようになったかな…魔力量出力の調整は

 まだ安定しないし、試してないのも沢山あるけど…」


「羨ましいです。私は生活魔法しか持てませんでしたからぁ。

 まあ、殆どの人が魔力は微量なんですけど。

 その変わり優れた魔力があると、責任ある役職に就くよう進められるし、

 国から要請があるので、その分大変ですけど」


「強い魔力を持ってる人がそういう役目を担うのは、仕方ないよ。

 親が弱い子供を守るように、強い人が弱い人を守るのは当たり前だと思うし」


「望んでなくてもですかぁ?」


「え…?」


「サトミ様は、望んでこの世界に来た訳じゃ無いです。

 なのに…こんな重大な役割を…こんな運命を背負わされて…

 恵まれた魔力を与えられた事を羨ましいと思う反面、

 お気の毒に感じてしまいます」


「…ありがとう…もう自分で決めたから、ここで生きていくって。

 でも、まだまだ分からないことばかりだし…時々、助けてね?エリカさん」


「勿論ですよぉ!がっつり頼ってください!」



みんな…優しいなぁ…

だから、ここで生きようと思ったんだけどね。



「あら、馬車止まりましたねぇ」


「うん。休憩かな?」



コンコンと扉をノックされ、開けるとグレンさんが立っていた。



「サトミ、エリカさん、今日はここで野営になった」


「えっ?まだ明るいのに、早くないですか?」


「このまま進むと宿泊できる村もないし、テントをはれそうにない

 深い森に着きそうなんだ。

 だから、今日は早めにここで野営する事になった」


「そうですか。分かりました」



テントを張る作業を進める、騎士団員を尻目に、

女性陣は薪になる枝を集め、料理の準備を進めた。

パンとメインとデザート料理は保存魔法で持参していたが、

スープは流石に荷物として嵩張るし、出来たてが美味しいので、

現地で作る事にした。

材料を刻み、調味料を入れ、すぐに出来るように下ごしらえは

済ませてあったから、仕上がり時間は、そんなに掛からない。



「そろそろ、出来上がりですかねぇ」


「うん。テント設営も終わりそうだから丁度いいね。

 トレーに食事並べて配布しようか?」



計23人分の料理を配膳し、みんなで食事を取った。

食堂と同じメニューだが、外で食べると更に美味しく感じる。



「サトミ、疲れてないか?」


「うん。大丈夫。馬車に乗ってただけだし、グレンさんは大丈夫?」


「ああ、遠征や野営は、慣れているからな」


「たまには、こういうのも新鮮でいいわ」


「怖くはないか?」


「1人だったら怖いけど、強い味方が沢山いるもの」


「ははっ、確かにその通りだ」



そう言ってグレンさんは、私の髪をなで頬に口付けを落とし、

食べ終わったトレーを持って行った。

隣にいたエリカさんはニヨニヨしてるし、他の皆も笑顔である。

ステラ師団長とセオドア文官だけは、なぜか微妙な渋顔だけど。


そうか…もう私達の仲は公認なのよね。婚約してるし。

グレンさんは、意外と独占欲が強いみたいで、私が恥ずかしがっているのを

分かっているのに、皆の前で平気でこうい事をするようになった。


そういえば、国王陛下よく婚約認証したな。横槍入れてくると思ったのに。




* * * * * * *




「そうか、対面したか。良い娘であったろう?」


「ええ。人柄も賢さも申し分ないかと。

 外見も非常に黒目黒髪が、エチゾチックで愛らしい方でした。

 細すぎる体が、少々心配ですが。

 今現在は、浄化遠征に出ていられるのですね…」


「ああ、そうだ。騎士団も最強の護衛で同行させているから、

 危険はないだろう。あの娘が来てから、国全体も魔獣の出現率が

 下がっているしな。…というかヴァニタリス、おぬし以前に騎士団食堂に

 忍んで行ってサトミ殿に会ったらしいな?」


「…ご存じでしたか。その件で少しご機嫌を損ねてしまいましたがね」


「あの娘は手強いぞ?あの者の前では、王子とて1人の人間にすぎん。

 権力は通じないからな」


「それは、そうと…父上、なぜグレン団長との婚約を承認されたのですか?

 保留にしても、よろしかったのでは?

 お陰で取りつくシマもありませんでしたよ。

 騎士団員は全員あの二人の味方ですし、なぜか予定の視察滞在日数より

 2日も早く追い出されました」


「仕方ないであろう。そんな妨害みたいな真似してみろ。

 この国を出ていってしまうかもしれん…

 それにあの娘は、華やかな生活や贅沢を望んでおらんからな。

 地位や金で釣れないし、自由な庶民としての生活を希望しておるのだ」


「それは、話していて分かりました。…困りましたね…

 是非、王家に嫁いで欲しいのです…まだ婚約中なのが幸いですが」


「ほう?お前、あの娘を落とす気か?」


「王家としても、それが最善では?」


「そんな心構えでは、無理だな。あの娘は賢い。

 直ぐに本音と建て前を見抜かれるぞ?」


「確かに…試すような真似をする人間を信用できないと言われました」


「貴族の本心を隠す話術と、駆け引きが煩わしいのだろう。

 相当頑張らねば、浅はかな気持ちでは籠絡できん。

 まあ、頑張れ。はっはっはっ!」


「一番の難題ですね。心を盗むですか…」


「まず、お前自身が、あの娘に心から懸想せねば無理だ。

 グレンのようにな」


「…今まで必要なかった事を実行しろと?」


「私は、別に強制はしておらんぞ?

 自分より優れた者を手に入れるには、それ相応に覚悟がいると言う事だ。

 お前に出来るか?なあ、ヴァニタリス?」


「承知しました…善処します」



王族だから、貴族だからと地位と権力だけでは、

平民を有無を言わさずに支配し、従わせるような時代ではなくなってきている。


これは、いい転機かもしれない。

あの娘、サトミ殿の考え方や人柄は、王子達にもいい影響を与えるに違いない。

例え妻として娶れなくとも、交流する機会を多く設けることで

王子達の価値観を変えてくれるだろう。




* * * * * * *




「それでは、サトミ様洗浄魔法かけますね」


「う、うん」



フワッと風につつまれ、心なしか肌がお風呂上がりのようなサッパリ感。

魔法って便利。



「これで、野営中は体を清めます。

 実際にお湯に浸かった方が体が温まって、血行がよくなるので、

 野営のみになりますが」


「便利だねぇ…」


「多分サトミ様も使えますけど、魔力の無駄使い防止に、

 侍女の私に任せてください。

 お世話全般の生活魔法は、私が担当させていただきます」


「そっか…なるほど…よろしくお願いします」


「サトミ様の肌も綺麗ですけど、髪が凄くサラサラで手触りが良くて、

 お世話のし甲斐があります。まるでシルクのよう。

 サトミ様の世界では、こういう髪質の方が多いのですか?」


「これは遺伝性だから、こっちより多いかな。

 でも、最近クセ毛の人のが多くて、そっちが劣性遺伝で、

 ストレートヘアの人は減少してるらしいから…珍しいのかもね」


「ああ~羨ましい…雨が降ってもサラサラで…

 クセ毛ってうねって、広がってホント困るんですよ」


「私はその綺麗なウェーブが、ゴージャスで羨ましいけど…

 まあ、お互い無いものねだりか…」



今日は、このまま就寝となった。

横になろうとしたら、グレンさんが訪ねてきて、

お休みの口付けを額にして涼しい顔で去っていった。

後ろで見ていた、エリカさんはニヨニヨ顔である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ