騎士団の皆と仲良くしよう
騎士塔に保護されてから1ヶ月ほど経った。
早朝から、騎士団員の訓練する威勢のいい声を聞きながら目が覚める。
時々見物させてもらい、騎士団の人達ともだいぶ顔見知りになった。
そして、私はやることがなく手持ちぶさたで、
騎士塔の掃除、洗濯や食堂の皿洗いの手伝いをさせて貰っていた。
この世界の料理は、基本シンプルで焼いて茹でて味付けも塩胡椒バター。
主食はパサパサのパン。不味くはないが、少し物足りない。
ある日、森になってたベリーでパンに塗るジャムを作ったらビックリされた。
そして、その調理法にジン食堂長が興味を持ってくれて、
私にも食堂の料理を試しに作らせて貰えるようになった。
手始めにクリームシチューもどきを提供したら大好評で、
私は調子にのりまくり、その後もこの世界で再現可能な
ビシソワーズ、コーンスープ、ポトフ、からあげ、豚カツ、餃子、
ハンバーグ、サンドウィッチ、ホットケーキ、プリン、シュークリーム
などをどんどん提供して、騎士団の食堂メニューに採用され、
食堂の調理兼、配膳担当になった。
私は大学を卒業後、プロのスポーツ選手のサポートトレーナーを目指してたから、
体作りの為の料理も研究していたから、その知識が役に立った。
第一騎士団の食堂だけ、食事が美味しくてずるいと少し揉めてしまい、
解決策として他の騎士団食堂担当の方々に、レシピを公開して作り方を伝授した。
調理担当の人達とも仲良くなって、どうやらこの世界でも
胃袋を掴むのは有効のようだ。
保護してくれた第一騎士団の副団長のレイさん、副団長補佐のサイラスさんは、
団長のグレンさんと一緒に行動している事が多く、特に彼等とは親しくしていた。
他には、彼等の下に10名ほどの部下がいる。
その中の1人でまだ見習いの新人のアレンくんには、
美味しい食事と私の世界の話で随分懐かれた。
私より年下で弟みたいな可愛い存在だ。
騎士団は全部で第10部隊まであり、
各部隊も同じくらいの人数で編成されている。
グレンさん達は北側の国境付近に派遣されている、北の辺境区部隊だった。
国内の騎士団の中で一番魔獣が多く過酷な在勤先で、
精鋭の凄腕騎士が集結している。
そして、東西南にも同様の騎士団が在勤されている。
王都にも騎士団は少数だが編成されている。
彼らは主に、王族の側仕えの護衛や式典に参加したり人目に触れる仕事が多く、
騎士としての腕は並で、見目のいい人達が多いそうだ。
お飾り騎士と皮肉られ、剣術が秀でている実力者には敬遠されているらしい。
騎士の制服も王都騎士団は白色、他は黒色で色別されていて、
各部隊の団長のみ、少し装飾とマントが豪華で凝っている。
つまり、グレンさん達は騎士団の中でも、
最強の精鋭部隊だということだ。
「サトミさん!」
「アレンくん。おはよう」
「おはよう!どうしたの?見物?」
「ううん、ただの散歩。王様と謁見するまで外出できないし、
騎士塔内しか出歩けないから…」
「そっか。じゃあ、謁見終わったあと俺が色んな所案内するよ!」
「ほんと?ありがとう」
「アレン!サボるな!戻れ!」
「はーいっ!じゃあね、サトミさん!
あ、昨日の卵サンドウィッチ美味しかった!」
「うん。頑張ってね」
アレンくんは16歳の子爵家3男。強力な風魔法で巨大な竜巻を起こせる。
通常貴族学院は14歳で入学し17歳で卒業するが、聡明な彼は飛び級で卒業。
すぐさま北の騎士団に入団希望して見事合格。
新人は順番的に一番下の第十部隊に入団予定だったが、
将来性を買われ異例の第一部隊に入団している。
まだ成長期の外見は、ベテランの多い第一部隊の団員より大分幼く見える。
クセのある赤髪に真っ青な瞳。愛嬌のある子で、みんなに可愛がられていた。
タタタッと走っていく彼と入れ替わりで
レイ副団長とサイラス副団長補佐が、こちらにゆっくり向かって歩いてくる。
「サトミさん。おはよう」
「おはよう、サトミちゃん」
「レイ副団長、サイラス副団長補佐、おはようございます」
「君の弓修理終わったから、使い心地試してくれる?」
「本当ですか?ありがとうございます!」
私の弓が一部破損しており、それの修理をしてくれたのだ。
こっちの弓と比べると巨大で、非常に珍しがられた。
レイ副団長は、金髪碧眼のこれまた美丈夫。
感じのいい人で、回りをよく見てフォローが上手い。
私にとっては、頼りになる近所のお兄さん的な存在だ。
手先が器用で武具の修理を担当している。
水魔法と探知能力の保持者で、策敵に重宝される魔力持ちだ。
副団長補佐のサイラスさんは、茶髪の短髪、茶色の瞳で、
一番体がでかくて無骨、顔もしかめっ面だけど、男らしい顔つきでカッコいい。
体の大きさも相まって、少し威圧感があって見た目が怖い。
寡黙で無口だが、紳士的で優しく人情深いお父さん的な頼りになる存在だ。
元は木こりで、その怪力を見込まれ騎士団に入団したそうだ。
武器は、大剣と大斧を振り回し、身体強化能力の保持者。
風と土魔法、軽度の治癒魔法も使える。
この世界の人の髪色は大体、金髪、銀髪、赤髪、茶髪、藍色。
瞳は濃淡はあれど、青が多い。同じくらいに多いのが、茶色。
端正な顔立ちで基本美形だらけ。あくまで騎士団の人達の統計だが。
弓を持って目指すは、訓練場の端の一角。
地面に刺さった大木にワラを巻いた人に見立てた的が5本ある。
「はい、これ。打ってみて」
「はい、ありがとうございます」
私は足を肩幅まで開き、弓を構え矢を引いた。
的に向かってヒュンッと矢を放つ。ドスッ!と的の真ん中に見事命中。
横で見守っていたレイ副団長とサイラス副団長補佐が
「おーっ」と低い声で唸る。
「いい感じです。違和感ありません」
「そうか、良かった。矢も5本だけじゃ足りないと思って
作ったんだけど。これ」
「えっ?」
「試してみて」
にっこり笑って、50本追加で作った矢を手渡してくれていた。
それも違和感なく撃てたので、そのままありがたく貰う。
「レイ副団長器用ですね…凄い…全然違和感ないです」
「ふふん、俺の仕事だからね。それよりいい腕だ。
俺も試し打ちしたんだけど、サトミさんみたいに格好良く打てないんだよなぁ…
何かコツあるの?」
「これは、あんまり腕に力を入れないんです。矢は添えるように持つというか…
私も慣れるまで1ヶ月位掛かりました」
「へえ~~…どれ、ちょっと貸りていい?」
「俺も次貸してくれ」
「却下。自分の怪力自覚しろ。弓が折れるだろ」
「………………」
しょんぼりサイラスさん。ちょっと可哀想。
しばらく指導したが、こっちの弓矢とは勝手が違うのか、
へろへろして綺麗に飛ばない。
やっぱり弓道の弓は、心身の鍛練用だから特殊なのだろうか。
あーでもないこーでもないと、指導しているとエリカさんに呼ばれた。
「サトミ様、グレン団長がお呼びです。私室にお戻り下さい」
「え?あ、はい!」
二人にお礼と挨拶をして、慌ててエリカさんと一緒に部屋に戻る。
ふと言葉が通じているのを今頃疑問に思って、エリカさんに訪ねると、
こちらの世界の空間を通過時に、翻訳魔法が施される仕組みがあり、
以前言葉が通じず、不安感で衰弱死した稀人がいて、その対策だそうだ。
私は日本語をしゃべり、読み書きをしているつもりだが、
この世界の人にはこちら言語に聞こえ、見えている便利魔法。
だから、初めからグレンさんと喋れてたんだ。
そして、北の辺境騎士団の最高責任者。
私を保護してくれたグレン団長。
アイスシルバーの瞳、綺麗な藍色の髪を持つ長身細マッチョ。
血の気の多い騎士団員を統制する頼りになるリーダーだ。
冷静沈着でキリッとした見た目。一見冷たそうだが、凄く優しくて面倒見がいい。
火と水と氷、風魔法、さらに火魔法が特に強力。
おまけに、剣術の達人で国一の精鋭剣士。
念動力と、物体の時間を凍結する能力保持者。
重傷者を仮死状態にして、治療可能な場所まで運ぶのに便利だそうだ。
何、この人。完璧すぎて別の人種みたい。
「おまたせしましたっ!」
「ああ、いいよ。そんなに慌てないで。まあ座って」
「はい。失礼します」
「さて、王の謁見日が決まったよ」
「いつですか?」
「3日後だ」
とうとう来た。国王陛下との謁見だ。




