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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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怪我の功名




最近、王子殿下がちょっかいかけてきて、

グレンさんが、なんか不安そうにソワソワしてる。

せっかく両思いになったのに…邪魔されて落ち着かない。


それに、なんか私がモテてるみたいで嫌だ。


グレンさんも、嫌な気持ちだろうし、

なんだか距離ができているみたい…彼ともっと近づきたいのに…


言葉をどう紡いでも、この距離は縮まらない。

どうしたらいいんだろう。


あの王子殿下は、私たちはまだ婚約者同士で、

多分、いつでも引き裂けると思っているんだろうな。

あームカつく。



そんな事を考えながら、身代わり魔石の付与作業をしていたら、

つい作り過ぎてしまい、指導中のステラ様の前で軽く目眩を起こして

倒れてしまった。


魔力量が多くても、私の体はまだその量に対応できておらず、

出力する出口が細いのだそうだ。

例えば、蛇口から繋がるホースに水を一気に大量に流すと、

細いホースが耐えられす、暴れて、引きちぎれて、最後は暴発する。

そのホースを太くするには、体の鍛錬と魔力放出口を広げる訓練が必要なのだ。

それもステラ様から魔法の授業で指導してもらっている。


私の今回のこれは、ホースが少し暴れてしまったのだ。


油断してた。


付与って神聖力と防御派生の守護2種類だし、

結構集中力と体力使うんだった。



「…サトミ様、お目覚めになりました?」


「うん、…エリカさん」


「具合はどうですかぁ?」


「もう、大丈夫だと思う…ごめんね、心配かけて」


「いいえ。だけど、みんなが心配して大変でしたよ〜。

 騎士団員入れ替わり立ち替わりで、部屋を訪ねてきて。

 五月蝿くするなって、ステラ師団長に追い返されてました。

 大の大人がオロオロしてて、見てて面白かったですけどぉ」


「あはははっ、後で元気な姿見せないとね」


「グレン団長が、特に心配してましたぁ」


「あ、そっか…」


「お会いになります?

 目が覚めたら、呼んでくれって頼まれてるんですけどぉ」


「うん。心配してるだろうから…」


「ああ、そのままで。グレン団長が来るそうなんで、少しお待ちください」


「うん、ありがとう」



そっか…心配かけちゃったなぁ。


エリカさんが部屋から出て行って、3分も経っていないと思う。

バタンッとドアが突然開いた。

ビックリして顔を向けると、グレンさんが息を切らして立っている。

ノ、ノックしてくれ。



「グレンさ…」


「サトミ!」



ん?あれ?何だろう、違和感。

長い足であっという間に、ベットの前にくるグレンさん。

あ、呼び捨てだ。呼び捨てにされたんだ。



「どこか、辛くないか?」


「ううん。少し休んだから回復したし、大丈夫。…ごめんなさい、

 考え事しながら、身代わり魔石の付与しちゃって…魔力使いすぎたみたい」


「良かっ、た…」



あ…本当に心配していたんだ。


彼の辛そうな顔を見て胸がズキリと痛み、無意識に彼に手を伸ばした。

それに応えるように、グレンさんは体を屈めて私をソッと抱きしめる。

私も彼の広い背中に腕を回して、しがみ付いた。



「ご、ごめんね…心配かけて…ごめんなさい」


「君が無事なら、それでいい。でも、本当に気をつけてくれ。

 サトミに何かあったら…俺は……正気でいられない…」


「う、ん…」




この時、震えるほど彼が愛しかった。


ああ、この人もそうなんだ。


私と同じで、失う怖さを知ってしまったのだ。




彼は、私を守るためなら命を投げ出すだろう。私と同じように。




離れ難くて、今夜はグレンさんが私の部屋に泊まることになった。

まだ心配だし、病み上がりの私の世話をするという名目だ。

エリカさんがなんか嬉しそうにニヨニヨしてたのが気になったが、

婚約者同士だし何も問題はない。


部屋に運んでもらった夕食を一緒に済ませて、

私がお風呂を済ますと、彼も入れ替わりでお風呂に入っていった。


お湯の音を聞きながら、何気なく自分の部屋を見渡たす。

スッキリとした部屋。

着の身着のまま、この世界に来たから私物はほとんど無い。


これ、現実なんだよなぁ…


お母さん、心配してるだろうな。


…そういえば、グレンさんの家族の話を聞いたことない。

将来結婚するなら、教えて欲しいけど。

この世界は、そういうの踏み込んで聞いてもいいのだろうか。

でも、そのうち本人から言ってくれるだろうか。


あれ?そういえば彼からも、私の家族についても聞かれた事ない。

グレンさん優しいから、私が引き離された家族を思い出すと辛くなると思って、

あえて聞かないのかも。


もうすっかり暗くなった外を窓から眺めていたら、

あの3つの衛星が見える。

あれを見ると、ここは私のいた世界とは違うと嫌でも実感する。


そして、グレンさんがお風呂から出て来て、足を止めた。



「サトミ…どうした?」


「外、見てただけだよ?」


「…やはり、帰りたいか?」


「え?」


「サトミの元の世界に…」


「…ううん…今はグレンさんがいるし…」


「そうか…」



私が物思いに耽っているように見えたのか…不安そうな顔をする。


この世界に繋ぎ止めておきたいけど、もし私が帰りたいと望んで、

帰れる方法があるのなら、彼は私のために自分の心を押し殺して

帰してくれるだろう。


この人は…そういう人だ。



「帰らないよ。私はもう、ここの仲間なんだから」



そう言って、お風呂上がりでホカホカの湯気を上げている

彼に駆け寄って抱きついた。



「それとも、帰って欲しい?」


「いや、駄目だ!帰るなっ…」


「ふふっ。うん。帰らないから心配しないで」


「ずっと…側にいてくれ…」


「うん。前も言ったでしょ?

 グレンさんが一緒なら、ここで生きていけるって」


「ああ…そうだったな…」


「髪、濡れてるよ?」


「風魔法ですぐ乾かすよ」


「え〜、タオルで拭いてあげたかったのにぃ」


「…じゃあ、やってくれる?」


「ふふっ、うん。座って」



藍色の柔らかい髪をタオルで思いっきりワシャワシャと拭き、

ボサボサの髪になったグレンさんを笑っていたら仕返しされた。

子供みたいにジャレて、二人で大笑いした。


何だか、このおかげで、私達はまた距離が近くなった感じがする。

そして、お互いの温もりを感じながら一緒のベットで仲良く眠りについた。

本当に眠っただけだったのだが、

なぜか、あの二人は身も心も結ばれたのだと、もっぱらの噂になっていた。


そして、ヴァニタリス王子殿下は、来週から始まる遠征の準備で忙しい上に、

私が倒れてパニックになった騎士団員たちに、忙しいからと勢いで追い出され、

いつの間にか王宮に帰されていた。


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