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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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試食会と嫌な文官



「こっちです!グレンさん!おはようございます」


「ああ、おはよう……ん?随分多く…ないか?」


「代替え食材が沢山見つかって一気に作りました!」


「凄いな。どれも美味しそうだ…」


「残していいので全種類味見してください。

 残り物は、他の人に食べて貰うので。

 では、小皿に取り分けます。…少々お待ちを」



新メニューをテーブルにズラリと大皿を並べているのを見て、

我ながら圧巻だった。



「……全部、美味い…」


「本当に?苦手な味とか、触感とかありませんか?」


「いや、何で君が作るのは、すべて美味しいんだ?」


「やだ嘘うれしい凄い誉め言葉。特に、気に入ったのはあります?」


「そうだな…全部美味しいが…好みは…

 これとこれとこれ…これとこれ…これかな?」


「コロッケサンド、かぼちゃスープ、スパゲティミートソース、

 ロールキャベツ、肉じゃが、ピーマンの肉詰めですね?

 グレンさんの好み分かりました!」


「あえてだからな?全部美味しかった」


「ふふっ。良かった、全部新メニューで出せそうです」


「あ────っ!ずるい!」


「アレンくん。おはよう」


「何なに?なんで団長だけっ!これ新メニューでしょ?俺も食べたい!」


「俺は一通り食べたから…いいか?サトミさん」


「ええ、構いません。アレンくんもどうぞ。

 ただし、感想聞かせてくれる?

 グレンさんには、もう合格点もらったんだけど…」


「やったー!いただきます!これ何ですか?」


「お品書きはこれ、こっちからカツサンド、コロッケサンド……」



食堂で全メニュー追加される事になった。

いくら日替わりでも、何度も同じ繰り返しだと飽きる。

これだけあれば、2週間メインメニューがかぶらないから、

2週間のローテーションになる。

以前は1週間のローテーションだったから、

今のままで充分だと言われたが、私が嫌だったのだ。


そして、他部隊の食堂全体にレシピ公開調理実習勉強会を行って、

新メニューをお披露目する予定になった。




* * * * * * *




試食会の後、グレンさんに話があると連れ出される。



「今日は、これから予定ある?」


「えーと、素材仕入れ先と少し打ち合わせがあって、

 それ以降はないです」


「じゃあ、王都からきた文官を紹介するよ。

 昨日の夜に、こちらに来たらしい。予告より随分遅くなったけど」


「あ、そういえば頭脳担当が来るって言ってましたね。分かりました」


「その後、2人で出掛けようか?」


「えっ。いいの?忙しくない?」


「サトミさんの愛馬が届いたんだ。

 慣れるのに、遠出の乗馬してみないか?」


「ほんと!?行く!」



一緒に歩いていると、グレンさんがそっと手を握った。

私は彼の方に顔を向けて微笑むと、少し気まずそうに口を開いた。



「あのさ、気が早いと言われるかもしれないけど…」


「うん?」


「婚約、しないか?」


「え…こんやく?」


「ああ。婚約して欲しい…そこまで決心は付いていないだろうか?」


「いえっ!しておいた方がいいなら、全然私は構わないです」


「良かった。では、国王陛下の承認がいるから伝えておくよ。

 あと、書類にサインが必要だから、後で持ってくる」


「は、はいっ」



少し驚いたが、いずれ結婚するつもりではあったし、

私達の関係は回りに周知しておいた方がいいだろう。

グレンさんも、ライバル達を牽制する目的もあるんだろうし。



「多分王家が、何か言ってくると思うけど。心配しなくていい」


「え……」


「ほら、陛下は王子と君を合わせたがっていただろ?」


「……お断りしましたけど?」


「まあまあ、そうむくれるな。反対なんて、させないから」



むくれて頬を膨らませる私の頬を掴んで、

指でグリグリ楽しそうに押すグレンさん。


それにしても、婚約かぁ…何だかジワジワと実感が湧いてきた。




* * * * * * *




「初めてお目に掛かります。私はセオドア・ネロ・エダーヴァルト

 騎士団と聖女様の為に、文官担当として勤めさせていただきます。

 以後、お見知り置きを」



茶色の髪と瞳にメガネ。長い髪を綺麗に後ろできっちり縛り、

前髪は横に流し、サイドの後れ毛がお姫様カットみたいに

これも、きっちり切りそろえてある。


スタン宰相の公爵家の息子で、将来の王宮の宰相候補だそうだ。

メガネのせいか、キッチリした身だしなみのせいか、賢そうな外見。

表情が読めない、いかにも王宮から来ましたって感じの貴族。

口は弧を描き綺麗な笑顔だが、目が笑っていない苦手なタイプだ。



「サトミ・ヒリュウです。よろしくお願いします」



気のせいか、私に対する視線が冷たいような、

軽蔑感がある気がする。

まあ、全ての人に好かれるのは不可能だ。

どんなに善良でも、親切でも、妬み嫉みで嫌う層は一定数いる。

当たり障り無く距離を持って、この方とは対応した方がいいだろう。



「噂には聞いていましたが、随分とお若い…」


「若く見えるだけで、この国では、成人している年齢です」



この国は18歳が成人とされる。

結婚も性行為もお酒も、18歳からしか許されない。

貴族も婚約者が幼少の時に、決められる場合があるが

18歳まで清い関係だそうだ。

以前は成人は15歳だったが、体が成長しきっていないせいで、

出産時に亡くなる女性が多発して法制定しなおされたそうだ。



「夫は、もう決まっているのですか?」


「それについては、俺から言おう。

 今現在は、俺が婚約者として決定している。

 婚約認証同意書を陛下に、提出する用意があります」


「なるほど…半年で婚約とは、流石お早いですね。

 しかも難攻不落のグレン団長を落とすとは…

 まあ、男ばかりの騎士塔に居住したいとご希望でしたから、

 目的は大体予想できましたが…」


「……はい?」


「その可愛い華奢な外見は、庇護欲をそそりますからね。

 ご自分の武器を良く理解していらっしゃると感心したんです。

 せいぜい沢山の子供を授かるよう、私以外の方々と励んでください」



何、この人…私を淫乱みたいに…


それに、グレンさんとの関係は、

少しずつお互いを大事に想いあって育てた間柄だ。

やっと、最近になって気持ちを通わせたのに…


それを汚されたみたいで、嫌な気分がふつふつと怒りと共に沸いてきた。



「私は、夫はグレンさんただ1人と決めております。

 複数持つ気はありません。

 なので、間違ってもあなたは候補に入らないのでご心配なく」


「謙遜ですか?あなたなら、望めばいくらでも思い通りになるでしょうに。

 ああ、強引に押さずに引く戦略ですか…なるほど。

 逃げると男は追う習性がありますからね。実にうまい作戦だ。

 でも、無理に清楚な聖女のふりなどなさらずとも…」


「無礼がすぎませんか。セオドア殿」



低く通る声で、グレンさんが遮る。


この声…凄い怒ってる…



「王宮勤めから、この北の辺境ごときに、

 王命で派遣され不愉快なのは分かりますが、

 サトミさんに、それをぶつけるのはお門違いです。

 不服なら国王陛下に取り消しを進言いたしますが?」


「不服など…これは、失礼いたしました。

 婚約者の前で不躾でしたね。でも、女性はみなそうでしょう?」


「まだ初対面のあなたが、彼女の何を知っているのですか?」



ああ、そうか。この国の女性と同じだと思っているんだ。

そして、この人は男性として、それが面白くない。プライド高そうだもん。


丁度タイミング良く私とグレンさんが婚約したから、そう思ったんだろう。


迷惑だなぁ…思い込みって。



「グレンさん、ありがとう。もういいです。

 挨拶も済ませましたし、もうお暇しましょう?」


「サトミさん…しかし…」


「先入観で、目が曇っている方に何を言っても無駄です。

 私の事を知らない方に、説明しても仕方ありません。

 徒労に終わるだけですよ」



私はグレンさんに微笑みかけ、彼を労った。

私のために怒りを露わにして反論してくれたのは正直嬉しかった。

でも、私を懸想している相手、ましてや婚約者の言葉など、

この人は、きっとまともに受け取らないだろう。



「セオドア様、あなたが私をどう思おうと勝手です。

 でも文官というお立場なら、

 中立に物事を見定め判断されるのをお薦めします。

 では、失礼します」



そう言って一礼し、踵を返して部屋を退室した。

まだ何か言いたそうな、グレンさんの手を引いて、廊下を歩く。



「すまない…不愉快な思いをさせた…」


「グレンさんのせいじゃないです。ああいう人もいます。気にしてません。

 それより、愛馬に早く会いたいです!」


「はははっ、君って人は…」



私はグレンさんと手を繋ぎ、愛馬の初対面と遠乗りの楽しみが勝り、

気持ちを切り替えた。




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