南の辺境へ出発
調査派遣部隊は、第1・3・5・7・9の5部隊が南の辺境区へ
入れ替わりで行く事となった。
同行者の中で、女性は私とエリカさんのみ。
私達を乗せる馬車、荷物を運ぶための馬車以外は、皆騎乗移動になる。
道中は宿を利用して9泊して南辺境区を目指す。
休憩無しで馬のみの移動なら、片道4日半くらいで着くらしい。
しかし、今回は総勢約50名の大所帯。
ちゃんと休憩を取って安全を優先された。
今は4日目の移動中の馬車の中。
これまで行く先々の村や町の人達に、騎士団員は歓迎されていた。
宿じゃなくて家に泊まってくれと言ってる人も多くて、
食べ物も差し入れてくれた。
途中で北の辺境を目指す、南の辺境の騎士団員達とすれ違い、
軽く皆挨拶を交わしたが、北の人達と雰囲気が随分違っていた。
王都の騎士団に近い緊張感のない浮ついた人達が多いと感じた。
やはり環境によって、纏う雰囲気が変わるのだ。
私は、元々動かなくても平気な引きこもり体質で、
窓から景色を見るか寝ているかして、ほとんどを馬車の中で過ごした。
そして、とうとう10日目の夕方南の辺境区の騎士塔に到着。
南の騎士団の団長レッドさんに軽く挨拶して、その日はすぐ就寝した。
騎士塔は同じような作りだし、過ごすのにはそんなにストレスは無かった。
しかし、他の問題が発生した。
「食事が不味い…」
「え?あっ、そうか」
「仕事終わりの食事の楽しみが無くなって、
マジでやる気なくなる…北に帰りたい」
「サトミさんの料理で、舌が肥えたからな。こいつら」
「わ、分かった。このままじゃ、みんなの志気が落ちるし、
北の辺境騎士団の分だけでも、私の料理レシピで食事を
提供できるように交渉してみる」
「やったーっ!サトミさん頼むね!」
南の騎士団の食堂の方達に、手伝って貰いながら、
私の調理法を教えて一緒に料理して、
食事を提供するように何とか体勢を整えた。
最初面相臭そうにされたが、私が手際よく仕上げて
美味しい料理が出来上がって行くのを見て、
皆徐々に態度が変わって、積極的に参加してくれるようになった。
「変わった調理法だが、少しの手間でこんなに美味しくなるのか…」
「え、北の騎士団はいつもこんな美味しい食事を食べてるんですか?」
「サンドウィッチも美味しすぎる!」
「他にもあれば教えてください!
騎士団員だけじゃなく、家族にも作って食べさせたい!」
ここでも、唐揚げはエールにあうと大人気だった。
他の部隊の団員にも噂が広まり、北の辺境と同じ事態になり、
全体の食堂にレシピを公開した。
南の少し緊張感とやる気がない騎士達も、
食事が楽しみなせいか、ピシッと務めるようになった。
美味しい食事は、正義である。
「魔獣の群れが目撃されたと報告があったが、本当か?
全然見ないが…」
「気配もありませんね」
「我々が来てから、魔獣の討伐は1匹もありません。
これはやはり…」
グレン団長と、レイ副団長、サイラス副団長補佐が、
そう言い合って、クルリと踵を回して私を見る。
「え、何?」
「やっぱ、君か…」
「サトミさん魔力付与の魔石の作り方は、もう会得してるね?」
「はい!属性ごとに分けて付与しときました」
「団長、例のあれを置きますか?」
例のあれとは、私の光属性の神聖力を付与した魔石の事だ。
国境近くの大きな木の根の下に、1個の魔石を埋める。
「これで少し様子を見よう。あとの10個の魔石は
半径10キロごとに1個づづ、各部隊2個づつ配置して、
今日の作業は終わりだ。いいな?」
「はい!」
魔石埋め作業をしている途中で、探知能力者のレイ副団長の様子が変わった。
瘴気の気配がするが魔獣ではないと。
そして、その付近は一番魔獣の目撃が多い場所だった。
「この辺なんだが…」
「あそこです。瘴気が漏れてます…」
「見えるのか?サトミさん!」
「黒い煙みたいなのが少し…」
「おい!あった!これ魔石だぞ!」
なんと、魔石が置いてあったのだ。しかも闇属性の暗黒力の魔石だった。
ここから瘴気を放ち、魔獣が発生していたのだろうと、
すぐに、魔力封じをして回収する。
これを王都のステラ師団長に渡して、魔石の詳細分析をして貰うそうだ。
「これは、完全に人為的だな」
「他にもあるかもしれない。
他の部隊にも見つけたら、回収するように伝達しろ!」
「神聖力の魔石を置いてるから、回収しなくても相殺しあって
効力は無くなると思うが、このままにはしておけない。
何も知らない子供が物珍しさに持ち帰る可能性もあるし、
動物が口にするかもしれない」
「これで効果があったら、東と西の辺境にも神聖力の魔石を
埋め込んだ方がいいな」
「そうですね。まったく…誰の仕業なのか…」
「大体想像はつくがな…暗黒力の魔石を分析すれば、
証拠になるかもしれない」
他の部隊も合計5個の暗黒力付与された魔石を回収し、
合計6個に及んだ。
それを持ち帰ると、南の辺境のレッド団長は呆然としていた。
そして、あと1週間ここに滞在して何も無ければ、
私達北の辺境騎士団は帰還する事になった。
「帰還の途中で、王都に寄るように王命がきた」
「え?私もですか?」
「ああ、君からも話が聞きたいそうだ。
というのは建前で、ただ会いたいだけだろう」
「は?」
「国王陛下は、サトミさん気に入っているからなぁ」
正直うざい…陛下、親戚の叔父さんみたい。
あの人自身は嫌いじゃないけど、やっぱり国王という地位が無駄に緊張する。
「あと一週間で、帰っちゃうんだ?」
「はい。何も無ければ」
「寂しくなるなぁ…頼りになる北の辺境騎士団員と
サトミさんが居なくなると…なあ?」
「ええ、でも今後も交流がなくなる訳じゃないですし、
今度は皆さんが交換交流で、北の辺境にいらっしゃってください。
食堂のメニューも様変わりしてると思いますから」
私達の帰還を知って、南の食堂の人達と団員達が別れを惜しんでくれた。
もっと長くいる羽目になるかと思ったが、予想外に早く帰還できる。
南の騎士塔は、北に比べると気温は少し温かくて過ごしやすい。
それに、魔獣も出現率は低い。
気候もあいまって、のんびりした雰囲気の騎士塔だった。
今回、問題の原因が見つかったのはいいが、
あえてここを狙って暗黒力付与の魔石を置いたのだとすると、
その目的の意図が不明で、なんとも言えない気持ち悪さと不気味さしか
残らなかった調査結果だった。
そして、この国に何かを仕掛けてきている者が
いる事だけが明確になってしまったのだ。
久しぶりに行った歯医者で、歯石とりを思いっきりキュイーンキュイーンやられて、定期的に行こうと決心しました。(歯医者苦手)




