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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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グレンさんと町へ




「もっと、可愛い服にすればいいですのに…」


「いや、動きやすいのが一番だし、充分可愛いよ?」


「だって、デートですよね?」


「いや…違うと思うけど…?」



エリカさんが髪を結いながら、不服そうにしている。

私は、いつもの白ブラウスと腰高の黒ロングスカート姿。

髪だけでもと編み込みとリボンを駆使して、エリカさんが頑張ってくれている。

やたら装飾の多いドレスは重いし歩きづらい。そしてコルセットがきつい。

正直、登城以外に着たくなかった。




コンコン




ちょうど支度が済んで、一息ついた所にドアがノックされる。

エリカさんが対応して、すぐにグレンさんが入室してきた。



「グレン団長、いらっしゃいました!」


「おはよう。お迎えにあがりました、姫君」


「おはようございます!準備万端です」



クルリと振り向き、グレンさんを見る。

いつもの騎士の制服じゃない姿の普段着も格好いい…

白いシャツに黒パンツ。なんだか、お揃いみたいな色合い。

騎士で鍛えているからスタイルもいい。



「髪、可愛いね…」


「そうですか?ありがとうございます。エリカさんのお陰なんです。

 普段着のグレンさん新鮮で格好いいです!」


「はははっありがとう。さ、行こうか」



町までは、馬の相乗りで片道20分。

いつも塔の上から眺めていた町が見えてきた。

町の関所で馬を預けて、そこからは徒歩になる。


やっぱり、中世のヨーロッパって雰囲気。

可愛いデザインの家々に、お洒落なお店。

王都に比べると豪華さはないが、私はこっちの素朴な雰囲気の方が好きだ。


大通りに行くと、出店が沢山並んでいた。

お祭りみたい…何だか懐かしさを感じてワクワクする。



「今丁度、豊穣祭の時期なんだ」


「豊穣祭?あ、だからさっきから野菜や果物の出店が

 多かったんですね!」


「ああ、花と果物を装飾したコサージュブローチを人に贈る風習もあって…」


「じゃあ、私グレンさんに贈りたい。どんなのが好きですか?」


「いや、そんないいよ。結構高いんだ、あれ」


「でも、いつもお世話になってるし…駄目ですか?」


「では、俺からもサトミさんに贈ろう。それならいいだろう?

 俺に似合いそうなのを選んで欲しい。俺も君に似合うのを選ぶから」



私は、ブルーのユリとブラックベリーをあしらった格好いいブローチを選んだ。

グレンさんは、白のバラとさくらんぼをあしらった清楚で可愛い

ブローチを手に戻ってきた。

結構大きくて丈夫に作られていて、保存魔法が施してあり、

3ヶ月はこの状態を保持可能だそうだ。



「これ、渡すだけでいいんですか?」


「正式なやり方があるんだ。俺が先にやるから見てて。

 そうすれば、贈った相手に縁づいたり幸運が訪れるそうだ」


「そうなんですか?では、見本みせてください」



グレンさんは、私の手にそっとブローチを持たせる。

そして、ブローチを持った私の手を取り、

手の甲に口づけを落とし、私の服の左上にブローチをつける。



ドクンッ と心臓が跳ねる。



いやいやいやいや、初めに言ってよ…

この世界の人は、こういうのは平気かもしれないけど…

私が目を泳がせて真っ赤になっていると、

彼は「あ」みたいな顔をして、今頃頬を染めて照れてしまった。


平気な顔をしていれば、良かったのだろうが…無理でしょ。

粋なりあんな美形が…あんなっ…



「すまない…嫌だっただろうか?」


「いえ!大丈夫です!すいません!私、慣れて無くて…」


「いや、俺も慣れてないというか…女性に、こんな事するの初めてで…

 つい、祭りの雰囲気に飲まれたかな…」


「私も同じように、すればいいんですよね?」


「いや、いいよ。無理しなくてもっ…」


「駄目です!ちゃんと正式なやり方しないと!

 御利益なくなっちゃいます!」



私のクソ真面目な屁理屈に屈したグレンさんは、大人しくじっとしていた。

勢いでやりきらないと、恥ずかしさで叫び出しそうだった。

彼がやったように、私も彼の手の甲に口付けを落とす。

恥ずかしいのか、目を伏せているグレンさんの長い睫毛に見とれながら、

ブローチをつける。藍色の髪がサラリと揺れる。

伏せていたアイスシルバーの瞳が開き、パチッと目があった。


………どうしよう…逸らすのも失礼だし…

至近距離で自然に微笑んでしまい、グレンさんが目を瞬く。


しばらく、見つめ合って時が止まる。

吸い込まれそうな綺麗なアイスシルバーの瞳…



「よっ!お二人さんラブラブだねぇっ!

 良かったら、こっちのもペアでどうだい?」



ビクリッと体が跳ね上がり現実に戻される。



「……あ、ありがとう」


「いえ…これで、いいんですよね?」


「ああ…その思った通りだ。君によく似合ってる。凄く可愛い」


「グレンさんは、格好いいです。ふふっ」


「ねーねー!そこのお二人さん、ラブラブなの分かったから、

 俺の声聞こえてるー?こっちの腕輪どうだい?腕輪!お揃いで!」


「聞こえてるよ、店主。見せてくれ」



その後、店主のゴリ押しで、結局お揃いの可愛い花の腕輪も買った。

色々な出店を回り、遠慮する私にグレンさんが似合うからと、

すずらんがモチーフの髪留めも買ってくれた。


串焼きを食べ歩きしたり、他のお店を沢山見て回り、

お目当てのハンドクリームも購入。普段着用のワンピースも購入した。

買い物するたびに、傲ろうとするグレンさんを必死に止めて

何とか自分で買った。


町を案内されながら小高い丘の上に来て、一休みして景色を眺めていると

町の向こうの景色も見えてくる。



「あそこ…湖ですか?」


「うん。町を突っ切って森を通るとある。

 夏は泳げるし、冬は氷が張ってスケートができるんだ」


「へぇ~…いいなぁ…」


「今日は、これから行くと暗くなるから、今度連れて行くよ」


「ほんとですか?ぜひ、行きたいです!」


「良かった、元気そうで…」


「え?」


「いや、この間嫌な話を聞いただろ?

 君を国の攻撃に利用するために、人為的に召還したかもしれないって…」


「ええ、まあ…それ聞いた時はショックはショックでそんな事を考えて

 実行に移す人がいるんだと、その悪意が信じられなくて…怖かったです。

 一歩間違えば、大変な事になっていたかもしれません。

 でも、もう私はこの世界に来てしまったし引き返せないし…

 それより、初めて合ったのがグレンさんで本当に運が良かったなぁって…

 あの時、助けて貰って心から嬉しかったし、今だって心強いです」


「そうか…」


「はいっ!だから、そのご恩は忘れません」


「俺も召還されたのが、サトミさんで良かった。こうして出会えたからね」


「ふふっ。これからも、よろしくお願いしますね!」


「ああ、こちらこそ」


「あれ?何か賑やかですね、人だかりが出来てる。ほら、あそこ」


「パレードだな。仮装した人達が音楽と共に練り歩くんだ」


「え~楽しそう!」


「見に行こう、おいで」



グレンさんて、意外とお祭り好きなのかも…

手を引かれて連行され、近くで色とりどりのパレードを見学する。

うわぁ楽しい…

結構迫力あるし、野菜と果物と花で、よくこんなに綺麗に装飾できるなぁ。

巨大な灯籠を引いて練り歩く、日本のお祭り思い出す。


大きな山車が目の前で止まり、そこに乗っていた民族衣装らしい

ドレス姿の女性が、私の所へにこやかに走ってきた。

そして、私の頭に小さな果物がコサージュされたティアラをつけてくれる。

周りの観衆がワアッと盛り上がり拍手が上がる。

私が呆然としていると、おめでとうと口々に知らない人に歓迎される。



「おっと、人が集まって危ないな」



グレンさんは、私をヒョイっと抱き上げる。



「え?あの、これどういうこと?」


「今年のミス豊穣に、サトミさんが選ばれたんだよ」


「へ?な、何それ」


「来年あの山車に乗って、君が次のミス豊穣を選ぶんだ」


「ええっ?」


「凄いじゃないか、光栄な事だよ。ははははっ」



ちょっ…グレンさんてばっ…めっちゃ笑顔で可愛いんだけどっ…

この人、今日凄い勢いで私の心臓止めようとしてくんだが?


私の心の状態が影響したのか、

パレード中の回りの木々に、一斉に花が咲き誇った。

花びらが舞い落ちて、まるでフラワーシャワーのよう。



「何これ?精霊の祝福なの?」


「凄い凄い!綺麗~~!!」


「今年の豊穣祭は縁起がいいな!」



再び観客達の喜びの歓声があがる。



「これ、もしかして君が?」


「多分…すいません。まだ制御が上手くできなくて…」


「ははははっ凄いな。見てご覧、向こうの方まで満開だ」


「あ~…ステラ様に怒られそう…」



大盛り上がりの中、

私はミス豊穣に選ばれたご褒美のミニかぼちゃを貰って帰路についた。



「はあ~♪楽しかったです」


「俺も久しぶりに楽しかった。いい気分転換になったよ。

 サトミさんのおかげで、今の季節に見れない花を見れたし」


「それ、忘れて欲しいんですけど…

 馬もだいぶ乗り慣れたし、そのうち1人で乗れるようになりたいです」


「この世界の女性は殆ど乗馬しないけど、そうだね。乗れた方がいい」


「はい。そのうち私も討伐に参加するんですよね?

 少しでも出来ることを増やして、足手まといになりたくないんです」


「君は、いつも俺達を充分助けてくれているが…手段は沢山あった方がいい。

 確かに1人で馬に乗れれば逃げるのも容易だし…

 よければ、俺が乗馬を指導しようか?」


「はいっ!お願いします」


「サトミさんは努力家だな。見習わないとね」


「聖女なんて、大層な称号貰っちゃいましたし、

 この世界での自分の役割を果たしたいんです。

 じゃなきゃ、何のために召還されたのか…厄災に利用されたなんて…

 間違いだったなんて、思いたくないっていうか…

 今、こうしている意味を肯定したいんだと思います。

 私の意地です。自分を見失いたくない…」


「君は本当に善良の塊みたいな人だな。気持ちは分かるが…

 でも、君が聖女じゃなくても俺は変わらない。

 たとえ意味がなくても、君は君だ」



なんて嬉しいことを言ってくれるのか。

この人いい人すぎでしょ…欠点あんの?



「だから、聖女って分かる前にグレンさん達に知り合えて良かったです。

 だって、こんな風に普通に接してもらえなかったかもしれないし。

 多分、多少は扱いが違ったでしょ?」


「確かに、ちょっと遠く感じたかもしれない。

 だが、現にこういう形で出会えたし、それが運命だったんだろう。

 俺にとって、君に巡り会えたのは奇跡であり幸運でしかない」


「あはははっ、もうっ!誉めすぎです!」


「俺は嘘はいわない。本当にそう思っているよ」




私は、前を向いているから、背中の彼がどんな表情は見えない。

でも、ふざけて言っていないのは分かった。


馬に揺られ、流れる美しい自然の景色と風の心地よさを感じながら、

いつまでも、こんな平穏がこの世界でも続くようにと心から祈った。


初めて仕事抜きで、グレンさんと一緒に出掛けたけど、

あの美貌と色気に度々殺られたが、ビックリするほど自然体でいられた。

そして、なんだか今日1日で更に距離が縮まった感じがする。


今日の景色がキラキラして見えるのは、気のせいではないだろう。

こうして沢山の思い出を紡ぎながら、

私は、この世界で未来を生きていくんだ。



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