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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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魔法を学びます



「詠唱しても発動しますね。

 まあ、サトミさんは詠唱なしで発動するから、

 覚えなくていいですけど」


「あの詠唱なしは便利ですが、

 反面、思っただけでも発動しそうで怖いんです」



魔力の基本、制御コントロールについて魔法塔より講師として来たのは、

忙しい筈のステラ師団長だった。


国宝級の私の扱いは、やはり慎重にするべきだと

最高権力を持った魔術師を派遣するに至ったようだ。


彼が来れない場合は、副師団長が講師に来るそうだ。

週の頭2日間こちらで授業する為、彼等は騎士塔に泊まり込みになる。

3日目は、貴族学院の女性教諭がガレリアのマナーと常識の授業をする。


残り後半4日間は、自由に過ごしていいと言われ、

夢みたいな週休4日制だった。


聖女の仕事は不定期にあるから、その時は駆り出されるがそれは仕方ない。

だから、騎士団の訓練と食堂の手伝いは、ずっと続ける予定だ。




「ああ、なるほど。そういう弊害が…では、魔力発動前に鍵を付けますか」


「鍵、ですか?」


「そうです。特定の言葉を言うと鍵が解けて、

 魔力が発動するようにするのです。

 それなら、うっかりは防止出来るでしょう?」


「ぜひ、お願いします。難しいのですか?」


「簡単ですよ。自分に暗示をかけるんです。

 魔法契約書に、その発動パターンを書き込み自身に投影して、

 第三者の私が承認するのです」



発動する時のパターンを自分で作る。

私は、決まった数字を声に出して鍵を解除して魔力発動させるように、

補助鍵は声が出せない場面になった時用に、手である形を示す事で解除する。

それを先程の説明通りに行い、魔術師のステラ様に承認魔法を施し完成である。



「うん。これでいいでしょう。副師団長にも承認しておくので、

 次回の授業で実践してみましょう」


「2人の承認がいるのですか?」


「ええ、どちらかに何かあった時の保険です」


「あ、なるほど。良かった…これで安心です」


「話し変わりますが、昨日の夕飯に出たアスパラの巻いてあるの

 美味しかったです」


「ああ、アスパラのベーコン巻きですか?」


「ええ。とても美味かったです。よくあんな調理法を思いつきますね。

 アスパラのみずみずしさと、ベーコンの塩気とカリカリの食感。

 あと薫製チーズ最高でしたよ。エールに合いすぎる」



宿泊の際には、騎士団の食堂で食事をして貰っているが、

彼にもそれは好評のようで、毎日感想を述べてくれる。

そして、ふと思ったことを口にした。



「あの、この暗号化の発動は、自死の場合でも有効ですか?」


「……は?」



一瞬時が止まる。

目を見開いて私を見て、ステラ師団長はもう一度口を開いて問う。



「自死って、いいました?」


「はい」


「何故?そんなの必要ですか?」


「私の場合、どうしても助からない状況に陥った時の為の保険です」


「例えば?」


「私は、もうガリレア国の人間ですし、この国の内情も少し知ってます。

 具体的には、もし敵国に捕まって逃げられない、

 あるいは自白を施された場合、あるいは魔獣に生きながら捕食された場合は…

 苦しみたくないのです。

 要するに、死んだ方がましだと思う程の場面に遭遇した時用ですね」


「……どれだけ、覚悟決まってるのですか?あなたは…」


「本音を言えば、使いたくはないです。でも…何があるか分からないでしょ?」


「…………出来るけど…承認できません」


「何故ですか?」


「自死は、我が国では許されない行為だからです」


「ああ、そういう教えなんですね?」


「ええ、だからこの国の人間だと言うのなら、ご理解いただきたいです」


「でも、私の魔力は他国に渡ると危険なのでしょう?」


「そうですが…魔力はその人の精神に繋がっている。

 あなたが拒否すれば、魔力は発動されない。強制は無理なんですよ?」


「強制以外でも、その人を追いつめて利用することはできます。

 例えば、私の大切な人達を人質に取られたら?

 私を意のままに操るような暗示のような、そういう魔力が存在したら?」


「だけど…そうはならない。あなたほどの魔力量を押さえるのが可能な

 魔術師は今、この世にいないはずです」


「目の前で、大切な人が殺されたら?

 物理的に支配するのではなく、心の弱い所を操られたら?

 私は、その時がきたら…耐えられる自信がありません。

 その結果、魔力の暴走で多くの人が死に苦しむことになる…」


「あなたは…」


「だったら、私1人が死ねば済むでしょう?」



国王陛下は、この娘にだから、この魔力を与えられたと言った。


まっすぐな、どこまでも澄んだ善良な正義感。

誰に対しても饒舌だった私は、初めて言葉に詰まった。

自己犠牲もいとわない、黒い瞳は純粋に澄んでいる。


こんなに美しい瞳を持った女性を

私は今まで…見たことがない。



「サトミさん…」


「はい」


「あなたは、死が怖くはないのですか?」


「怖いです。私のこの場合の自死は、目的ではなく手段です」


「自己犠牲は尊い行為です。生半可な覚悟では、できない勇気のいる行為。

 それに、あなたが命をかけて守ると言ったのは、殆ど面識ないの国民達。

 感謝などしないかもしれない。それでも?」


「ええ。分かってます。別に感謝して欲しいわけではありません、

 私は、私の役目をまっとうするだけ。

 そして、膨大な魔力を持つ者としての責任を取りたいのです。

 魔力暴走の最悪を常に考え、それを避けるためにも必要なんです。

 この世界に意図的に召喚された時のように…もう利用されない為に。

 分かっていただけませんか?」


「………私は、あなたと仲良くしたいと思っています」


「え?あ、はい?」


「初対面で私の不躾な言葉のせいで、あなたには嫌われてしまいました。

 サトミさんの人となりを知る前に、この国の女共と同じように考え、

 偏見で投げつけてしまった無礼な言葉を…これでも後悔しているのですよ」


「はい…?…」


「今なら、なぜあなたが騎士団員に好かれているか、

 その魔力を授けられたのか、私も分かっているつもりです。

 勿論、初対面の時とは違いあなたに親しみさえ覚えています」


「…ありがとう、ございます…」


「そんな人に正論とはいえ、自死の承認をするのは心苦しいのです。

 私にも心がありますから」


「でも、特に私の場合は…利用されれば、

 隣国の考えのように厄災の存在になり得るんです。

 ステラ様のお立場なら、ご理解いただけるでしょう?」


「……少し、考えさせてください」



論理的な考え方をする人だと思っていたから、

この返答は少し意外だった。


何で、こんな辛そうな顔をしているのだろう。

私の命なんかより、国を一番に考えるべき立場なのに…



「それと、もうひとつ確認したいことがあります」


「はい、何でしょう?」


「聖女の魔力は、無くなったりしないんですか?魔力切れではなく、

 ある日突然、魔法が使えなくなるみたいな…」


「前例はありませんね…魔力が弱くなる時は、ありますが…」


「もし、前例のないそれが私の身に起きたら、私はどうなります?」


「どうとは?」


「役立たずとして追放されたり、処刑されたり…」


「いやいや!そんな事しませんよ‼︎ どれだけ野蛮な国家なんですか!

 この国の為に尽くしてくれた臣下に、そんな使い捨てみたいな…

 もし、そうなったとしても、退役軍人みたいな扱いになると思いますよ?

 功績に免じて、国から最低限の衣食住の保証はされますので

 ご心配には及びません」


「あ、なるほど。これで私に何があっても大丈夫かな。

 暗号化の自死も承認してもらえば、安心して暮らせるのですが」


「……………さて、今日の授業はここまでにして、昼食にしましょう。

 今日のサンドウィッチは、何でしょうか?お腹空きました」


「えーと、今日は卵サンドです」



長い沈黙の後、それを振り切るように話題を変えられた。

自死の暗号化発動を認めて貰えなかったが…

とりあえず聖女じゃなくなっても、切り捨てられるのはなさそうだ。


そしてどうやら、この食堂の食事は、

この人の胃袋もすっかり掴んでしまったようだ。

恐るべし美味しい料理の力。


確かに、私が騎士団に急激に受け入れられ始めたのは、

食堂の料理を提案した時期だったなと、妙に納得した。



本編と関係ありませんが、

健康診断を終えて、我慢していたカ○ムーチョとモ○バーガーを解禁しました。

ジャンクフードうめえぇぇぇぇ〜♪

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