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飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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国王陛下からの贈り物




「その太刀筋は一体なんだ?」



サトミさんの熱望で、剣術覚えたいと参加し、

その前に、彼女の世界の剣道という物を見せて貰ったら、

あたりがざわついた。



「剣道です。でも、これは対戦用というか、人を殺める目的じゃないんです。

 使用する剣も竹刀という物で…竹製で、競技というかスポーツの一貫かな?」


「面白いな…そのかまえ方といい……太刀筋がまったく読めなかった…」


「そうですか?役に立ちますかね…」


「ああ、この世界の剣術より、君はそっちを鍛練して極めた方がいい。

 女性だから、どうしても男の剣士には力で押し負けるしな」


「うーん…魔力で人体強化すれば…」


「慣れていないと、魔力を使いながらの戦闘は体力を消耗する。

 すぐスタミナ切れで倒れてしまうぞ?

 最初はなるべく魔力は魔力、剣術は剣術で集中して使い分けた方がいい。

 我々も魔力は使うが、ずっと使うと体力も気力も削いでしまう。

 だから補う為に、物理的に攻撃できる剣術を用いているんだ」


「なるほど!はい!分かりました」



彼女は賢く器用で、教えにはすぐに反応し覚えていった。

主に大剣を使う我々の大降りな動きとは違い、

彼女の剣道は動きが早く、正直驚いたし、真剣だったら怪我を負わされただろう。

騎士団にも、この動きは取り入れた方がいいかもしれない。



「そういえば明日だったな、登城」


「あ…うん…」


「はははっ嫌そうだな」


「だってあの王様、優しそうに見えるけど…あの笑顔とは裏腹に、

 絶対私を王家に取り込むの諦めてないもの」


「まあ、そうだろうな。君は魅力的すぎる」


「…私はここでみんなと、こんな風に暮らしたいです」


「大丈夫。言いくるめられないように、俺も一緒にいるから」


「ありがとう。グレンさん」


「君はもう我々の仲間だよ。もし王家が強引な事したら、

 北の辺境の屈強な騎士団を敵に回すことになる。

 それは国王も避けたいだろう」


「ふふっ、強い味方がいますね」


「恐らく、王子が接触してくるだろうな…」


「え?私断りましたよね?」


「提案は断ったけど、君が好意を持てば話は別だ」


「……はあ…だから無理ですって…息苦しい…」


「もし、サトミさんが王子を好きになって、それを望むなら…

 残念だが仕方なく我々は手を引くよ?」


「なりませんて!だって私はっ……」


「ん?」


「…いや…え~と…ここが好きですから!」



今、私何て言おうとしたんだろう。


一汗流し、みんなとお昼を食べて夕飯の支度に参加した。

飛竜の肉がまだまだあるので、チキン南蛮をつくってみる。

タルタルソースも、面倒だけどなんとかここの食材で作れそう。

甘すっぱいソースは…アルコール飛ばしたワインビネガーで代用しよう…



「それは、何をしてるんだ?」



私が新しい事をしているのを横で見学していた

ジン食堂長が、話しかけてきた。



「タルタルソース作っているんです。揚げた鶏肉に合うので」


「ほお…」


「出来たら試食してもらえます?」


「おお、勿論!しかし、次から次と、どんだけ料理の種類知ってるんだ?」


「前の世界が、食べ物に妥協しない人達ばかりだったんです。

 他の仕事でも、職人みたいな人が多かったですね」



甘すっぱいソースは、なかなかいい感じできた。タルタルソースも問題なし。

飛竜の肉を油で揚げて、ソースにくぐらせて、タルタルソースをかける。



「出来ました。みなさん、ちょっと休憩がてら、試食お願いします!」


「うわぁっ、新しい料理だ!」


「良い匂い!美味そう!」



みんな一口食べると、満面の笑みになる。

よし、新しいメニューに加えよう。


生パスタみたいのも、この世界にあるから製麺屋さんから仕入れて

スパゲティミートソースも作りたい。

あれ絶対みんな気に入る。


そうそう、特大のアスパラガスを食堂長が仕入れてくれたから、

ベーコン巻きしてみよう。絶対エールに合うおつまみになるはず。

あ~みんな喜んでくれるから、やりがいがあって楽しい。



「甘酸っぱくて…美味しい…よくこんな料理思いつくね」


「ほんと凄いよね。前の世界の人達が作り出した物なの」


「いや、それをちゃんと再現できる、あんたのが凄いだろ。

 それよりタルタル最高♪」


「サトミさーんっ!グレン団長が呼んでるよー私室に来いって…

 って、何食べてるの?それ初めて見る!なになになに?」


「アレンくん、丁度良かった。新メニューだよ。試食してみる?」


「うん!やったー!」


「後で、感想聞かせてね」



グレン団長の元へ急いでで行くと、

何やらリボンが付いた箱が、沢山運び込まれていた。



「ああ、来たか」


「…何ですか、これ…」


「国王陛下からだ。明日これ着て登城しろって」


「……着る?」


「多分ドレスと、アクセサリーだろう」


「え~!着たくない…只でさえ登城したくないのに…酷い追い打ち…」


「まあまあ、とりあえず開けてみましょう。ね?」



エリカさんが、いそいそと箱を手に取る。

仕方なく開けると、出るわ出るわ、豪華なドレス、アクセサリー、ハイヒール。

私が呆然としている横で、エリカさんはきゃあきゃあ大喜び。



「凄いですよっ!これ!まるで、婚約者への贈り物です!」


「は?」



王子との婚約を打診された時の記憶が甦り、憮然とする。

やっぱり諦めてないわね、あの国王。



「着たくない…」


「えっ?着ないんですか?こんなに、素敵なのにっ!」


「いや、着た方がいいぞ」


「え?何で?グレンさんまで!裏切り者!」


「違う違う。公式の表彰式だから正装した方がいい。

 この間の簡易的な謁見じゃないし。正式な謁見の間で行われるんだ。

 今度は両側に、護衛騎士と高位貴族ズラッと立って参加するだろう」


「……え…そうなの?…やだ、益々行きたくない…」


「まあまあ。…ん?これなんか、どうだ?清楚だし…」


「それ、聖女様の装いですね。確かに名実ともにサトミ様に似合いそうです」


「…他の絢爛豪華なフリル満載ドレスより、いいかな…腰も締め付けなくていいし。

 でも、シンプルに見えて凄い刺繍が凝ってる…」


「大方、この間の詳細な鑑定結果で、聖女認定されてるんだろう。

 これを送ってくるという事は、そういう意味も含まれている。

 飛竜の討伐といい、全属性持ち、測定不可能な魔力量、稀人。

 好条件がありすぎるからな、君は」


「よくわかりませんが…とりあえず、これにする…」


「サトミ様、アクセサリーは、真珠が合いますよ?コレは頭に被るケープで…」


「…エリカさんに任せるよ」



さすが侍女。テキパキと衣裳合わせを済ませてくれた。

なんだか神殿にいる神官みたいな衣裳だけど、ドレスよりましだ。

国王陛下から余計なお世話をされて、

すっかりテンション駄々下がりになってしまい、

その日は、早めに不貞寝したのだった。


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