第3章:水底の真実
リリアから「円環の秘宝」の真実を知らされた修一は、秘宝が持つ強大な力と、それが悪用された場合の危険性を理解した。秘宝は「水底の円環」と呼ばれ、過去と未来を繋ぐ力を持つが、もし悪意のある者に渡れば、世界は崩壊してしまう可能性があるという。
予感は的中した。ヴィクターは、水底の円環を手に入れるため、貴族連合を結成し、水底の聖域への大規模な遠征を計画した。彼の目的は、秘宝の力を手に入れ、この世界の頂点に立つことだ。
「ついに、この時が来たか……」
修一は、セシリー、ガルド、そしてリリアと共に、ヴィクターの野望を阻止するため、水底の聖域へと向かった。聖域の深部に進むにつれて、修一の「円環の賢者」の能力が、聖域そのものと共鳴し始めた。
まるで、水底が修一の心の奥底と繋がっているかのように。
聖域の神秘的な水底を進むと、修一の脳裏に、強烈なフラッシュバックが押し寄せた。それは、現代日本の記憶。いじめられ、川に突き落とされ、死の淵を彷徨ったあの日の記憶だった。
――助けてくれ! 誰か、俺を……!
過去の自分が叫ぶ声が聞こえる。修一は、いじめられっ子だった自分と、アクアリスで力を手に入れた新たな自分との間で、激しい葛藤に苛まれた。
「うっ……!」
突然の激しい頭痛に、修一は膝をついた。セシリーが駆け寄ってくる。
「修一さん、大丈夫!? 顔色が悪いわ!」
修一は苦しそうに、セシリーに過去の記憶について語った。いじめられっ子だったこと、誰にも助けてもらえなかったこと。
「俺は、また同じ過ちを繰り返すんじゃないか……。こんな力を手に入れても、結局俺は、変われないんじゃないか……」
修一の言葉に、セシリーは静かに彼の背中を撫でた。
「そんなことないわ、修一さん。あなたはもう、あの頃のあなたじゃない。あなたは、私を、そしてガルドやリリアを救ってくれた。あなたは、私たちにとっての英雄よ。それに、過去を乗り越えようとするあなたは、本当に強いわ」
セシリーの言葉は、修一の心に温かい光を灯した。彼女の優しい眼差しは、彼の心の闇に寄り添い、彼を支えてくれた。リリアもまた、静かに修一を見つめ、彼の心の動揺を鎮めるかのように、聖域のエネルギーを彼に送っていた。
「ありがとう……セシリー」
修一は顔を上げ、セシリーの目を見つめた。彼女の存在が、修一を過去の自分から解放し、未来へと進む勇気を与えてくれた。
聖域の深部では、ヴィクターの部下たちが待ち構えていた。彼らは、ヴィクターによって強化された強力な魔法使いや騎士たちだった。
「円環の賢者か。貴様のような下民が、我々の邪魔をするなど、身の程知らずも甚だしい!」
ヴィクターの側近がそう叫び、部下たちに攻撃を命じた。修一たちは、強大な敵との激しい戦闘に突入した。
修一は、「円環の賢者」の力を駆使し、敵の攻撃を無効化したり、軌道を逸らしたりした。時間の流れを操ることで、敵の攻撃を予測し、完璧なカウンターを決めることもできる。セシリーの水魔法は、縦横無尽に敵を翻弄し、ガルドの剣技は、修一の援護を受け、次々と敵を打ち倒していく。リリアは、聖域の魔力を操り、修一たちの支援を行った。
ある瞬間、敵の魔法使いが強力な魔法を放った。それは、修一たちをまとめて吹き飛ばすほどの威力を持っていた。
「修一さん、危ない!」
セシリーが叫ぶ。修一は冷静にその魔法の軌道を見た。
「円環、起動!」
修一の周りに、目に見えない円が展開される。魔法が円に触れた瞬間、その勢いは完全に吸収され、霧散していった。
「な、なんだと!?」
敵は驚愕の声を上げた。修一は、その隙を逃さず、セシリーとガルドに指示を出す。
「セシリー、水流で敵の動きを封じ込めろ! ガルド、頼む!」
セシリーの強力な水流が敵を拘束し、ガルドがその隙に一気に斬り込んだ。次々と敵が倒れていく。修一のチート能力と、仲間たちの連携は、まさに圧倒的だった。
激戦の末、修一たちはヴィクターの部下たちを打ち倒した。しかし、ヴィクター自身は、すでに秘宝に近づいているようだった。
「このままでは、過去を繰り返すだけだ……。今度こそ、俺は、俺たちの運命を変える!」
修一は、ヴィクターとの最終決戦を誓い、さらに聖域の奥へと進んだ。彼の心には、過去の苦しみと、それを乗り越えようとする強い決意が宿っていた。