初の戦闘
今日も俺は森の中でスキルの鍛錬をしていた。
だけど今の俺はまだ五歳児。
子供だ。
だから少し鍛錬をするだけですぐに疲れる。
けれど主人公になるために俺は鍛錬を続ける。
「やぁ!たぁ!」
俺は【機械化】の能力で左腕を剣に変形させ、振るっていた。
初めてやった時と比べると、たいぶ成長している。
ただ剣で戦うよりも拳で戦った方が楽だ。
だからボクシングや空手の動画を見て、格闘術を学んでいる。
「ふぅ……こんなものかな」
スキル【機械化】を解除し、元の姿に戻った俺はタオルで顔に浮かんだ汗を拭く。
今日は疲れたな~。少し休むか。
俺が大きな石の上に座ろうとした時、
「グルルルルル」
獣の唸り声のようなものが聞こえた。
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには四足歩行で立っている不気味な生物が立っていた。
大型犬ぐらいの大きさで、足から鋭い爪を生やしている。
全身黒い鱗に覆われており、瞳をギョロギョロと動かしていた。
「ドラゴン!なんでこんなところに!」
ドラゴン。地球とは別の世界からやってくる地球外生命体。
知能はなく、人の血肉を好んで食べる化物。
「やばい……逃げないと!」
俺は逃げようとして……足を止める。
逃げてどうする。
主人公になるんだろう。
ここで逃げたら……俺はきっと後悔する。
俺がなりたい主人公は……どんな敵だろうと逃げないで、戦うやつだ。
だから……逃げるな!
「覚悟を決めるか」
俺は肉体を機械化させ、左腕を剣に変形させた。
ドラゴンは俺を睨みつけ、ゆっくり近づく。
そして、
「ガァ!!」
鋭い爪を振るった。
俺は左腕の剣で爪を弾く。
金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。
「グアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ドラゴンは爪を何度も振るう。
俺はなんとか剣で防ぐが、力が強すぎて後ろに下がってしまう。
クソッ!このドラゴン……強い!
だけど!!
「俺だって!」
俺は爪撃を躱し、剣でドラゴンの顔を切り裂いた。
「グアアアアアアアアアアアアアアアア!」
顔に傷を受け、ドラゴンは血を流しながら悲鳴を上げる。
「今だ!」
俺は剣をドラゴンの胸に突き刺した。
青い血が刺した場所から噴き出し、俺の顔や服を青く染める。
ドラゴンは口からゴポッと血を吐き、痙攣した。
そしてドラゴンは両目から光を失い、地面に倒れる。
「た…倒せた」
はぁ…はぁ……と荒い息を漏らしながら俺は地面に座り込む。
はぁ~……マジで疲れた~……戦闘ってこんなに大変なんだ。
でも、
「倒すことは……できた」
俺は初めての戦闘で勝利できた。
疲れたというより、嬉しいという感じが大きい。
だけどまだまだ鍛錬は必要だな。
主人公になるには……まだ遠い。
「今日は帰ろっかな」
俺は森を出て、家に帰った。
その後、ドラゴンの血を浴びた俺を母ちゃんがとても怒り、父ちゃんがとても心配したのは言うまでもない。
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