真奈美の存在
千鶴の葬儀を終え、少し落ち着くと、お義父さんが家族会議を開いた。
「色々あったが、これからも家族何気ない話をしよう。隣の猫が生まれたとか何でもいい。会話をしよう」
澄子は、涙ながらにうなづいた。
不思議なもので、千鶴のいない毎日は、平和ではあるが、7年という月日の濃さなのか、抜け殻のような気持ちになりそうになった。
しかし、真奈美と拓也の存在があるから、澄子は千鶴の居ない世界を進めたと思う。
真奈美は、1つ問題があった。人より行動が遅い。千鶴の一周忌をすぎても真奈美は、歩くことが出来なかった。
あの時、ミルクを飲めていなかったから?澄子は不安に押しやられた。
ある日、、遊びに来た母に相談した。
「お母さん。真奈美、歩けないのかしら?」
お母さんは、机に在るあるものを真奈美に見せた。
「ほれ、これが欲しかったら、取りにこんか。」
それは、お菓子だった。そんなもので歩ける……歩いた!
真奈美は、お菓子につられて立ち上がると歩き出した。
澄子と母は2人大爆笑をした。
その日からは、真奈美の自由が始まった。拓也が幼稚園に行くと帽子などが欲しく泣く。とにかく手のかかる真奈美だが、拓也は可愛いのか、怒らず何でもくれた。
真奈美と言う存在は、家の中を明るくしてくれた。
真奈美が2歳になる頃、家を引っ越すことにした。今の家より大きな家らしい。
らしいという理由は、その家を澄子に何も言わずに男性二人で決めてきたから。
なんでも話せる家族とはかけ離れた2人の行動に怒りながらも引越しをする事に不安もある澄子だった。