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旅立ち
千鶴は、歩けなくなると人が変わったように、穏やかになった。
仏に向かっているのだろう。
真奈美を連れて病院にいくと、一緒にオムツを変えると喜んだ。
こんなに子供がえりをするのかと驚いた。
あんなにケチっていたのに、小遣いもくれるようにまでなった。
千鶴は、澄子に甘え甘え甘えた。
千鶴は、54と言う若さでこの世を去った。
不思議なもので、あんなに辛い思いしかしていないのに、澄子は涙が止まらなかった。お通夜の晩は女王と二人1晩起きた。悟と舅はこんな時なのに寝ていた。
親戚の人達は、皆口々に「よく耐えてくれた。」「ありがとう」と言ってくれたが、今となっては、お通夜の晩に言うことでは無いだろと澄子は、千鶴のために怒った。
真奈美を看護師の姪っ子に預け、準備をしていると、姪っ子が走ってきた。
「おばさん!おばさん!」
「どうしたの?」
「このこ、母乳のんでないよ!栄養失調だ!」
澄子は驚いて、母乳を出そうとした……だが、出なかった。
真奈美は、いつから飲んでない?いつから?千鶴に気を取られ、真奈美は空腹に耐えていた。
澄子は、後悔をした。
そして、千鶴の葬儀はおわった。