第51話~可能性~
そうしてマリアーノは腰を下ろして話を始めた。
「正直こんなに放置しておくつもりもなかったんだけど~。なんか過去見てるときの春香ちゃん、楽しそうだったからさ...。でも本題は精神系魔術の習得。その最後に微かな可能性として残ってるのが転移・転生ってことを忘れちゃいけないわ。過去を見れたのも私の時の旅人のおかげだし、決して自分の能力と思い込まないことよ。あれはただの精神修行だから...。」
本題の存在など忘れかけていた春香にとっては今すぐにでも転移・転生のステップへと踏み出していきたいということが本音だったが、マリアーノの言葉を聞いて何か思い出したような感じの表情をしていて、少し落胆したような素振りを見せた。
下を向いて少し落ち込んで見える春香の顔を覗き込むように見つめ、少し煽りながらマリアーノが話を続けた。
「まぁでも春香ちゃんは元から優秀な魔術師...。だからまさか結界の張り方を忘れたなんてことはないだろうけど大丈夫かしら~。もしかして、サ一緒の座学からやり直した方がいいのかしら~。でもあの双方技術者の春香未来様だもんね~...。まさかそんなことないよね~。」
そんなマリアーノを見て若干苦笑いになりながら春香は答えた。
「まさかこの私がそんなこと忘れるわけないじゃないですか~!でも念のため、念のためにもう一回座学やりたいな~とは思います。念のためですけどね!!」
「まぁそうね~。念には念をって言うくらいだからもう一度やりましょうか。」
マリアーノがそう返したことで春香の心は緊張から少し安堵の方向へと変わっていった。
マリアーノは腰を下ろしたまま、地面に木の棒で説明を始めた。
「まずこの世界で重要な要素があって、それは”感情”。特に怒り、恨み、憎しみ、悲しみ、妬み、苦しみ、不安みたいな負の感情。そしてもう一つは”想像”。想像は技とか魔術とか使うときには特に重要な要素よね。特に魔術の使用は頭の中で想像して魔法陣を作る必要があるから大事な要素だわ。精神系魔術の使用だと攻撃魔術の時みたいにフィールドに映しかえることができないから想像力は大事ね。ここまでは分かる?」
「まぁ...これはこの世界の仕組みみたいなものですから...。」
そう春香が言っている横で恭介は眉間にシワが残りそうなくらい難しそうな表情をしていて思わずマリアーノは笑っていた。
そして咳払いをしてマリアーノは話を続けた。
「そ、そうね。私たちみたいな光・闇の属性か無属性の人たちは比較的使いやすいのが精神系魔術の特徴って話もしたわね。だから元々精神系魔術に適応してる光・闇の属性ならそこまでは苦労しない。そもそも元素属性の魔術師や異能者が覚えるようなことはまず前例が少ないってことも覚えておいてほしい。攻撃魔術使うと一回リセットされることが元素属性の人は多いみたいだし、そういう所でパワーバランスも維持されているんだとも思う。まぁあとは攻撃魔術に比べると無詠唱で使える魔術も少ないかな~。あとは目に見えにくいからできたかどうかが分かりにくいって事かしら。要点をまとめるとこんな感じだわ。恭介、大丈夫かしら?」
そう言って恭介を見ると口がずっと空いたまますごくアホそうな顔をしながらポカンとしていた。
一方春香は当然のように理解しているようで、恭介の方を見て呆れよりも優越感すら感じた。
「まぁ恭介はずっとこんな感じだったし別に今更驚くことはないわ~。もう精神系魔術を習得したわけだし別に文句はないわ...。」
マリアーノはそういいつつもアルザードのリーダーならば少しは理解していてほしかったとも思っていたため、少し表情を暗くしため息をついた。
そしてまたマリアーノは話を続けた。
「精神系魔術を使うのに最も必要なことはブレない精神力をつけること。それは試練の中で完全ではないけど完成しているわ。あとは数をこなして慣れるだけ。そうすれば自ずと結果も伴ってくるわ。ただ現世に戻るのにはまた別の魔法陣を完成させなければいけないの。まぁそこからの仕事は私たちの役目よ。そのために恭介を連れてきたんだから。なんかちょっと心配ではあるけど...。」
そう言って恭介の方を見ると、やる気に満ち溢れている表情をしていたのでマリアーノは少し期待してみようと思い微笑みを浮かべた。
そしてマリアーノはまた春香に言葉をかけた。
「魔術って言うのは全てイメージによって成り立ってるものなの。それは攻撃魔術も精神系魔術もなんら変わりないわ。陽介が短期間で力を発揮できるようになったのもそういった想像力が豊富でそれをしっかり形にできたからってところもあるわ。ここからは自分次第。魔法陣のイメージと攻撃内容のイメージ、またその他の全てのイメージを頭の中で合致させることができれば、その時貴女は精神系魔術を操ることができるようになるわ。もともと魔力量の多い貴女なら特に負担もないはずよ。じゃあ私たちは魔法陣の方に取り掛かるからあとは頑張ってね~!恭介行くわよ~。」
春香は「いい意味で適当というかなんと言うか…。」と思い、口に出しそうになったが何とか堪えて「はい。」とだけ返事をした。
そしてまた別の場所へと歩いていく二人を見送ると早速魔術の訓練へと取り掛かった。
春香が教えられたことはたったの二つ。
・魔法陣は攻撃魔術と違って頭の中で対象を定めないといけないこと。
・精神系魔術も攻撃魔術同様にイメージが攻撃の鍵を握るということ。
正直これだけではどうにもならないと思うのが大半だと思うが、彼女はやはり召喚者だ。
魔術に関するノウハウというものが自然に植え付けられているため、マリアーノの結構適当な説明でもある程度理解して形にしてしまう才能の持ち主なのである。
一方春香と恭介は少し歩きながら話をしていた。
「恭介はどう思う?時空を超える魔法陣なんて完成できると思う?」
今までにないくらい悩んでいるのが分かる顔をしてマリアーノが問いかけた。
恭介もかなり真剣だったようで、少し考えてから言葉を発した。
「正直厳しい、難しいことではあると思います...。やれない可能性の方が高いだろうし、もし仮に完成したとしても魔力量の問題で使用できない可能性もありますから...。」
「それに私はあちらの世界に戻る気はない。だから私がその魔法陣を使って自分で転移することもできないわ。」
下を向きながら歩く二人にはどこかもう既に失敗したかのような雰囲気が漂っていた。
そして二人は、しばらくしてから魔法陣を完成させるためのピースを地面に描きながら確認していった。
通常の転移魔術をもととして考えるという方向性でその行先を変えると成功するのではないかという考えをマリアーノが出した。
ただこれには重大な欠点もあった。
現世の転移先をそこに記したところでそれが認識されるか否かわからないということ。
普通で考えれば、現世の存在は一般的には知られていないもので、言語や文化だけでなく、空間という根本的なものが違うのに成功するとは考えにくいのであった。
そういう所に気付いていながらもまずはそれで試していく二人であった。
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また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。
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