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転生魔術師の覇道譚  作者: 蒼翔ユウキ
第三章~魂と過去、生命編~
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第50話~星に願いを~

 マリアーノは見ていた。知っていた。

 彼女には此の世の全てがお見通しである。

 ”最強の闇の魔術師”と呼ばれる彼女は未来を見ることができるのだ。

 春香がこの先どんな道を辿るのか、全ての予知を見ている。




 春香が再び目覚めると、またいつも通り芝の上で横になっていた。

 上を見上げると満天の星空が広がっていた。

 「星...。綺麗...。」

 春香は昔を思い出して言った。


 昔はどうやったらあの星に手が届くのか、そんなことをよく考えていた。

 流れ星に向かって願い事を声にしたこともあった。

 月に行きたいとも何回も思った。

 この惑星(ほし)宇宙(そと)から見てみたいとも思った。

 そんな日々を懐かしんで胸がキュッと締め付けられるような感覚がした。




 この世界は一方通行である。

 マリアーノが過去に語ったように現世から転移・召喚された者が元に戻ることはできないとされている。

 ただもうその説は古いのではないかとも言われている。

 マリアーノ含め多くの人が己の過去に遡ることに成功している以上、もう既に一方通行ではないとも彼女は語っている。

 マリアーノの持つ特殊魔術:時空旅行(タイムトラベラー)を使用してのタイムスリップで自身も過去に飛んだことがあるとは言うくらいだから、一方通行と言うのはどこか違うのかもしれない。

 ちなみに試練を行っている門の術式の仕組みはこの時空旅行をもとに作られているため、容易には再現できないという。




 マリアーノが春香に対して抱いている気持ちには少し複雑なものがあった。

 自分の方がずっと長く生きてきて、この世界の本質にも近いと思っている。

 その世界の本質に近づき立ち向かう、そんな姿を見せてくれるのはすごく懐かしいような気がいていた。

 マリアーノ自身が見て切り開いてきた人々の過去の世界を越えていくような人物が自分の下から現れかけているこの現状が非常に嬉しく思えた。




 かつて過去を見ることでこの世の真実に最も近づいたのがアスケル=マリアーノである。


 「歴史は繰り返す」


 そう言われるように今を学ぶには過去を知ることが必要である。


 「故きを温ねて新しきを知る」

 当に温故知新の意味のまま。


 自分の過去、世界の過去、あらゆるものを見てきたマリアーノが知った真実は数えきれないほどだ。

 争いがなぜ起きるのか、世界にはなぜルールが必要なのか、人々はなぜ幸せを求めるのか、どれだけ世界が醜いものなのか、決して全てではないがあらゆることを知った。

 ただ自分にはできなかったこと、それが春香未来が目指す未知の世界、逆召喚なのである。


 なぜマリアーノがハピダルの下から春香を引き抜いたのか、それは常々春香がある言葉を口にしていたことを知っていたからだ。

 「いつまでもこの世界(ここ)に居ていいのか。私はここで何をしているのか。家族のみんなは何をしているのか。」

 マリアーノにはそんな春香が過去の自分に重なって見えてすごく惨めに思えた。

 もちろん戦闘能力を高く評価していたのもあるし、戦略的な行動心理に長けていたからという理由もあるが、もちろんこれは建前である。


 マリアーノ自身は召喚後すぐに自力で洗脳を解くことに成功していたから特に何もなく日々を過ごしていたが、春香が自力でその能力を持つことができなかった。

 ハピダルとは古い仲のマリアーノは幾度か春香とコンタクトをとっていたが、相手の心理状態を読み取れるマリアーノはすぐにそのことには気づいていた。

 いつ洗脳を解くか、そのタイミングを常に窺っていたがその洗脳の特徴が少し厄介なのだ。

 召喚者にかかる洗脳は召喚主に依存することになることで、召喚者自身が即戦力として機能することができるという特性がある。

 しかし、この洗脳は召喚主の方も自覚することがない結び付きなのだ。

 そしてこの洗脳を解くには召喚主、召喚者自身、最高峰の精神系魔術の使い手のどれかでないといけない普通の洗脳とは違うのが一番厄介な特徴である。

 春香が使えるようになった洗脳よりも遥かに強さのベクトルが違う、この世の中で最強レベルの洗脳である。


 どうやったら春香を自由にしてやれるか、マリアーノが陽介が転生してくる前からずっと考えていたし、実行のタイミングを今か今かと窺っていた。

 そして訪れた好機が佐藤陽介のインテグラリッシュ王国への派遣且つ修行という名目での潜入調査だった。

 マリアーノとアルザードのメンバーにしか伝わっていない極秘ミッションが遂行されていたのだ。

 ちなみにインテグラリッシュ王国へ潜入したのはマリアーノのみで、アルザードのメンバーに課されたのは陽介にかけてある盗聴用術式の解析と有事の時の戦闘準備であった。


 春香未来奪取作戦としては正直あまり成果は無かったが、外的要因を理由に結果的には上手くいったので、洗脳を解くことに成功したという経緯がある。(詳しくは第二章の第12話から第33話の間に記載あり)


 こうして春香に対する想いが積み重なって、どうにか願いを叶えてあげたいとマリアーノが思うようになったし、自分ができなかった、見れなかった世界を見せてほしいという思いもあった。





 マリアーノは毎日祈っている。

 民を治めるため、全ての幸福のため、自分のため、周囲の人間のため、あらゆることを願って毎日修道服を着て祈りを行っている。


 ー そして人は神に救いを求める ー


 神などこの世に存在しないなんてことマリアーノは思っている。

 『魔法の神官(マジックプリースト)』と呼ばれるものは神に近しい力を持つ存在としてこの世界に君臨しているが、自信に神の様な力が宿ったことはなく、実感したこともないという。

 だから神はいないとマリアーノは思っている。




 祈るマリアーノの頭の中に電流の様なものが流れたような感覚がした。

 そしてとある映像の様なものを見ていた。

 「そう...。やっぱりそうだったのね...。」

 マリアーノは春香の挑戦についての予知を見てしまった。

 ある程度抽象的な内容ならば、自分で全ての結末を見てしまうこの予知能力がすごく有用的ではあるが、その分人生を楽しめなくなるような気がしてある意味いらない能力だとも思っていた。




 一方春香はまだ夜空に浮かぶ星や精霊を見て心を落ち着かせていた。

 あまりにも激しく動いていく時間の流れについていくのは肉体的だけでなく精神的な疲労を生み出すため、正直生きていくだけでも精一杯といった心理状態だろうか。

 それに過去で過去の自分や母親と会ってきて余計頭に負荷がかかっているような状態になっているから仕方ないことのなのだろう。


 流れ星が夜空を駆ける時、春香は何かを言いだそうとして、それでももう何処かへといってしまう流れ星を目線で追いかけていた。

 そして春香は空に向かってこう呟いた。

 「私の願いが叶うなら...。ううん...。願いは叶えてもらうもんじゃないよね...。それでも...それでももし私のこの願いが届くなら......。」

 ここまで言って踏みとどまったかのように急に眼を閉じて黙り込んでしまった。

 何度星に、神に願った私の願いなんて叶うはずがない、そう春香は思っていた。

 現実はそう甘くはない、そう思っていたから...。




 今日も今日とて門へと向かっていく春香だった。

 いつもと何ら変わりのない天気、景色。

 また一歩一歩と進んでいく春香が進んでいく未来はどこに繋がっているのか、真実を知っているのはマリアーノだけだった。


 春香は毎日過去を見て、反省し、後悔し、色々なことを目の当たりにしてきたが、この全てがどう繋がっているかは何もわからなかった。

 ただ一つ知っていることはマリアーノに言われた「精神を統一し、鍛え上げること」だった。

 そして今日も歩いていった。


 「春香ちゃ~ん!ちょっと待って~。」

 春香は後ろから聞こえる声に反応し振り返ると、マリアーノと恭介がこちらに向かって歩いて来ていた。

 思わず「何で?」と思ってしまったが、その場に足を止めた。


 「どうしたんですか...?」

 春香は不思議そうな顔をして二人に尋ねた。

 するとマリアーノは笑顔でこう答えた。

 「久しぶりに見に来ちゃった~。」

 「って言うのは建前で本音は何なんですか?」

 すかさずツッコミを入れる恭介に嬉しそうなマリアーノは本音を語り始めた。

 「いや実はね...、今日から他の精神系魔術の習得に移ってもらおうかと思うの。もう十分過去みたでしょ~?それに他の人たちよりも若干負荷強めに設定してあったからもう十分だと思うわ。」

 そうして三人はまた別の場所へと歩いていった。


 歩きながら恭介が春香に尋ねた。

 「春香さん、しばらく拠点の方でも見なかったですけどずっとどこにいたんですか...?」

 「そ、それは...」

 「春香ちゃんはずっとあそこの芝生の上で野宿よ~。」

 春香の話の途中でマリアーノが割り込んできて話を続けた。

 「私はちょくちょく様子を見に行ってたんだけどね~。いっつも星を見ながら寝ていたわよ~。まあそれでもあそこにずっといたくなる気持ちもわからなくもないわ。」

 「確かにそうですよね。あそこはエクスパンドライズでも随一の星の名所。昔は何か落ち込むようなことがあったらあそこで気持ちを整えてたくらいですからね...。俺にとっても思い出の場所だし大切な場所...。」

 恭介が昔のことを思い出し、少し涙目になりながら思い出を語った。


 そんな風にしばらく歩いて着いたのはだだっ広いコロッセオのような闘技場。

 かつてエクスパンドライズが拠点を置いたのがこの付近だったと言い、この大闘技場が国内最大の観光資源だったというが今はもぬけの殻。

 そんなここに連れて来た理由はただ一つ。

 「ここならだれにも何にも迷惑かけずにやりたい放題やれるわ~。」

 というマリアーノの思いつきだった。


 そしたら突然、マリアーノはその場に腰を下ろし、何やら話をし始めたのだった。

ご覧いただきありがとうございます。

こちらの作品は不定期更新となっております。

また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。

また、本作品はTwitterでの投稿告知を行っておりますので是非「転生魔術師の覇道譚」(@tenseimajutsusi)で検索していただけると助かります。

今後ともよろしくお願いします。

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