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転生魔術師の覇道譚  作者: 蒼翔ユウキ
第三章~魂と過去、生命編~
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第43話~無属性~

 マリアーノと春香は二人でエクスパンドライズ郊外にある捕虜収監施設へとやって来ていた。

 主に戦闘不能もしくはそれに近いような状態の捕虜が多数収監されている施設だ。

 精神系の魔術は対生物で能力を発揮し、そのため練習にも生物を用いなくてはならない。


 「この前やった洗脳のかけ方くらいは覚えてるかしら。」

 「いや、それが...。」

 「やっぱりねぇ...。攻撃魔術を使いすぎると全部が台無しになっちゃうのよ。でもまた覚え直せば大丈夫よ。春香ちゃんは普段どんな感じで魔術を発動してた?」

 「攻撃魔術ですか...?魔法陣を頭の中で描いてそれをフィールドに映し替えてイメージしたものを現出するって感じです...。」

 「そうよね。精神系の術式で大事になることは、ずばり“想像力”よ。頭の中で魔法陣を描くのは同じ。対象をしっかり狙わなくちゃいけない。でもフィールドに映し替えることはできないわ。じゃあどうするかって言うと転移魔法の使い方って分かるでしょ?感覚的にはそれと同じ。術式の中に対象となる個体名をしっかり刻み込むことよ。それに精神系の魔術の最大の特徴は誰が使ってもその魔術の魔法陣も術式もほとんど同じってことよ。要するにある程度の型が決まってるのが最大の特徴よ。前やったのは結界の展開と精神掌握(メンタルジャック)だったわね。もう一回最初からやってみようか。まずは自分がやりたいようにやってみて~。」


 ー 場に映し出すことができないならばイメージをより鮮明に、より大切に...。フィールドを展開するための要素を確定。

 「魔法陣が見えた...。」

 ー ならばあとは空間に落とし込む。


 「まあまあって言ったところかしらね。頭の中の仮想空間に向かって術式を発動したってところかしら。この術式は序の口も序の口。正直これが出来なかったら諦めてもらおうと思ったわ~。」

 「ていうことは発動できたってことでよろしいのでしょうか...。目に見えないんで手応えはあってもあんまり自信がないって言うか実感がないって言うかなんと言うか...。」

 「最初は手ごたえもほとんど感じないと思うわ。でも繰り返す度に身体が覚えていって、いつかそれが目に見えるように映るときがあるの。でも普通の魔術とかと違ってやっぱり目に見えない分、成長を実感しにくいものではあるけどとにかく反復練習よ。精神系の魔術の習得は自分との闘い、言わば精神修行よ。結界くらいじゃ自分の精神がどんな状態であろうと使えるけど人を操るような術式を使うならばまずは自分の精神に向き合わなきゃいけない。それが精神系の魔術の使い手が圧倒的に少ない理由の一つよ。」

 「一つというのならば他にも何かあるのでしょうか...。」

 「一つは私たちのような魔法の神官(マジックプリースト)と呼ばれる地位の人々かしら。ただの攻撃魔術がいくら起用に使えようと決してそれだけでは辿り着けないような境地だわ。そのレベルの人たちは不老不死を手にしてたり、自らの魔術を完全に操れるような人で新たなものに手を出そうとしていたりって感じの人よ。そしてもう一つ、最初から攻撃魔術に適性を持たない人よ。」

 「最初のは理解できます。実際国を治める者は皆精神系の魔術の習得に成功している。ですが攻撃魔術に適性を持たないとは...。この世界の魔術師は皆が火、水、風、地、光、闇って言う六つの属性のうちどれかを持っているはず。それならば必ず攻撃魔術に適性はあるはず...。それを持たずしてこの世界に転生するなんて例は...。」

 「身近なところだと恭介もそうだったかしら。彼は最初は攻撃的な魔術を使えるようにしようとしたんだけどね。それで適性検査しても何も見当たらない。それで彼には属性的な役割がない。つまり想像しているような強い魔術師にはなれないってことをを伝えたわ。それでも拾ってくれた私のために力になりたいって言うのよ。その覚悟を私は無駄にはしたくなかった。それで今の恭介がいるわけよ。」

 「つまり本当に実在するってこと...。少なくともあっち(インテグラリッシュ王国)にいるときはそんな人を見た覚えが...ない...ですね...。」

 「それもそうだわ。ハピダルは基本即戦力になるような人しか望んでいなかった。貴女のような召喚者をはじめ、理解力に長けていて習得が早い人、もともとの基礎能力が高い人、それにそのほかの強力な魔物が基本の国家体制だったわ。属性を持たない者は最初から除外されているのが真実よ。」

 「ならば彼らのような人も結構多かったりして...。」

 「そんなこともないわ~。彼らのような無属性が誕生する確率はごく僅かよ。」

 「でも...。エクスパンドライズでは数多くのバッファーもいますしロジェスタンスなんて基本が精神系の能力者の集まりじゃ...。人口もそこまで多くないエクスパンドライズが彼らをたくさん抱えているならばそれはなぜ...。」

 「それはね...。」

 今まで何も変わらない表情で話していたマリアーノの表情が急に曇り始め、口をゆっくりと開いた。

 「ほとんどの地域では迫害されているからよ...。それはインテグラリッシュ王国も含めこの世界のほとんどではゴミと同じ扱いを受けているわ...。私はそれが許せなかった。それで私にできることがないか、探した結果がこれよ。もともと私には他の魔法の神官より高い精神系の魔術への能力があったわ。そしてこの国を興したばかりの時には人口もいない。ならば不遇な人達に救いを与えられるような国にしようと考えたわ。もちろん周りからは「不良債権処理係」みたいな馬鹿にしたような言葉を投げかけられることも多かった。それでも自分の信念を信じて正義を貫き通して、誰もが口出しできないような国を作ることを心に誓ったわ。そしてそれぞれに抗う術として精神系の魔術を習得させたのよ。そんなことももう相当前の話だけれども、それがこの国に精神系の魔術の使い手が多い理由よ。」

 「世界的な迫害...。それがマリアーノ様がこれ以上の召喚者を喰い止めるのにどうつながるのでしょうか。それに今は迫害なんて事実を聞いたこのはないですし、そうしたら今の無属性の人たちは一体どこから来るのでしょうか。術式の獲得よりもこの話が...。」

 「今の無属性の人たちの多くはもともと無属性の人たちから生まれてくるタイプが多いわ。でも中には転生者が無属性って言うパターンもある。私は特にそういう人たちには戦いを強要したりしない、寧ろ戦線に立つことを良くは思わない。だから街の方でのんびりと暮らしてもらうようにしているの。私は思うの。"戦うのは戦う義務がある者だけでいい。戦える者が戦えばいい。”ってね。魔術師に異能者って二つに属している人にはもちろん戦う能力があるし、義務がある。そして能力を持つことへの副作用からか知らないけど戦う意思を持っている。だから今私の下で戦っているのは皆、戦う覚悟を持った者だけなの。でも転生者って身寄りもなければ何もないのよ。今いる人たちはほとんどがそんな感じよ。それに私たち召喚者に一番遠い言葉って何かわかるかしら。」

 「それは、”普通”とかでしょうか。召喚者の能力は通常の者よりも高く、非常に優遇されている立場でありますから...。」

 「普通...。確かにそれも間違いじゃないわね。でも私は不遇って言葉だと思うの。私たち、特に能力がある人達には能力っていう一つの物差しがあるわ。それは一目でその人を表せられるような、二つ目の顔のような存在なの。人々はそれで比較し判断する。でも無属性の人はそもそも能力が使えないの。するとその人たちを測るものは必然的になくなってしまう。それがはるか昔に迫害があった真意だと私は思うの。ただ生まれた時の差で判断されるのは言い方は悪いけど不遇としか言いようがないわ。」

 「だとしたら召喚者とその他の違いってのは何なのでしょうか...。」

 「それは春香ちゃんの言った通りだと思うわ。まずアドバンテージがあることもそうだけど、比較的に同じ能力を使うものだとしても召喚者の方が若干融通の利き方が違う。私が望むのは皆が平等に扱られるような世界だわ。そりゃ人間には得意不得意あって個人差はあるけれど、それを認めあっていけるような世界に変わっていかなくちゃいけないと思うの。だから無属性の者に力を与え、召喚者が来るのを根絶しようとしているわけよ。」


 春香は今まで何をマリアーノが考えているかをあまり理解していなかったため、自分のような思いをする人を減らしたいと思って召喚者根絶を目指していたの他と思い込んでいた。

 少し互いに暗い表情になり沈黙が続いたとき、春香が重そうな口を開いた。


 「マリアーノ様、もしそれを一人で叶えようとしているのならば貴女様が一番不遇な立場なんじゃないでしょうか。私には現世に戻りたいって言う願いがあるし、理解してくださっていると思います。もちろん私も実現させたい。でもマリアーノ様は本当にそれでいいのでしょうか...。一人で背負って、不遇って言葉を敢えて自分で引き受けるから不遇って言葉が召喚者から一番遠いのじゃないでしょうか...。」

 「春香ちゃんがなんて思ってるかは図らないけどこれは先を生きる者としての責務でもあるの。もちろん不遇な立場に立たされているのも分かってるし、本当にできるかはわからないわ。でも私は過去を見た。自分の去った後の現世の世界を見たのよ。絶えない争いにいつまでも続く人種差別。まあ話したら長くなるだけね...。ちょっと目を閉じて。そして心を無にするの。今から私と私の過去を見に行ってもらうわ。」

ご覧いただきありがとうございます。

こちらの作品は不定期更新となっております。

また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。

また、本作品はTwitterでの投稿告知を行っておりますので是非「転生魔術師の覇道譚」(@tenseimajutsusi)で検索していただけると助かります。

今後ともよろしくお願いします。

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