第32話~愛情~
フロストウィングはドラゴンらしく翼を広げインテグラリッシュ王国を飛び立った。
少し離れたエクスパンドライズを目指して、街を越え、山を越え、海を越え、様々な景色を見ながら進んでいった。
上空から見るエクスパンドライズは中心にある教会を中心に円が広がっていくような形で街が広がっていき、その様はまるでパリの街並みを見ているかのような感じである。
現世でいう所のエトワール凱旋門に当たる場所に教会があり、そこから八方に伸びる大通りを中心に街が形成されており、非常に綺麗な見た目をしていた。
フロストウィングはインテグラリッシュ王国の現代的・近代的な街並みとは違う様子に少し心打たれながら教会の前に降り立った。
教会の門の前に向かって歩いていると前方の扉から侍女が現れた。
「フロストウィング様。待っておりました。マリアーノ様が中でお待ちですのでこちらへ...。」
そう言われ案内されているフロストウィングはエクスパンドライズの教会の複雑な内装に少し戸惑いながらも侍女についていきマリアーノが待つ部屋の前へと着いた。
「マリアーノ様。インテグラリッシュ王国より使者様が参られました。」
そういうと木の観音開きの扉がゆっくりと開いた。
そこにはまるで宴会場のような長いテーブルが丸々一個余裕で入る程度の空間が待ち構えていた。
その先に座るのがアスケル=マリアーノである。
フロストウィングは堂々と真ん中を歩きマリアーノの前まで行った。
そして二人は固い握手を交わし、耳元で他の誰にも聞こえないような声量で何かを話していた。
フロストウィングの大きな体に周囲がざわついていた為何を話していたかはわからない。
すると二人は奥にある部屋へと移動して話を進めることにしたようで、話しながら移動していった。
二人部屋に入り、木製の大きな椅子に座り、真ん中のテーブルに置いてある果物を食べながら会談をスタートさせた。
「さて、ハピダルは私に何か言ってたのかしら~。」
「ハピダルはマリアーノに聞きたいことがあるって言ってたぞ。儂に伝えられたのはアンドロメダ皇国戦での詳細じゃのぉ。」
「詳細ね~。これといって特別なことはなかったわ。強いて言うなら開戦予定時刻前に奇襲されて結構な被害が出たことかしら~。」
「それは結構大事じゃぞ。あとあそこには召喚者がいなかったっけか...?」
「まさかだったわ~。二人いたもの。何とか倒したわ~。」
「二人もか...。儂でも能力によっては苦戦するレベルじゃのぉ...。」
「一緒に攻撃してきたわけじゃないわ~。一人目は春香ちゃんが、二人目は陽介が倒したわ~。」
「流石は陽介じゃなぁ。儂が認めただけあるわい。」
「フロストも認めていたのね...。まあでもなんとか勝ったって感じだわ~。」
「それで春香はどうだったんだ?」
「...。」
「春香はどうだったんだ...?」
「彼女は...。危うく死ぬところだったわ...。」
「危うく...。それはなぜじゃ...。」
「一人目の召喚者と対峙してた時に奥にいた二人目の攻撃が飛んできてそれに気をとられたときに一人目の方に腹部を刺し抜かれたわ...。」
「それで...今春香はどうなってるんだ...。」
「今はもう回復して戦線に復帰するための鍛錬を行ってるわ~。」
「それでどうしたって言うんだ...。春香を呼んでくれ...。」
フロストウィングの話の中心は春香未来についてのことであった。
インテグラリッシュ王国の使者としてきた以上、それはハピダルの心境でもある。
しばらくして春香がその部屋に入ってきた。
すると春香にフロストウィングが感情を露わにして話し始めた。
「春香...。今は大丈夫なのか...?」
「えぇ。もう大丈夫ですわ。心配は無用です...。」
「なぜじゃ...。なぜ死にそうになってんだ...。」
「これは私の...。私がとにかく原因ですわ。マリアーノ様を責めるのは止めてちょうだい...。」
「何が原因って言うんだ...。」
「私が行きたいって言ったのよ...。マリアーノ様は私をずっと引き留めてたわ...。だけどエクスパンドライズでもたくさんの戦士が死んでたのよ...。そんなん見て見ぬふりして私だけ助かろうなんて思えないわ...。」
「でも春香...。気持ちはすごい分かるがよ...。一番大切なのは自分自身の命なんじゃぞ...。」
「そうは言っても...。私一人の命でここにいる人が助かればそれでいいのよ...。私は戦士よ...。仲間がやられそうなら飛んでいく。仲間の為なら命を懸けて戦える。戦士ってそういうもんじゃないの...。」
「春香...。」
「私の...。私を犠牲にしてでもここを断ち切りたいって思いが...心が体を動かしたのよ...。」
「そういうことだわフロスト...。春香ちゃんは私の静止を振り切ってエクスパンドライズの為に動いたのよ...。私だってインテグラリッシュにとって春香ちゃんがどれだけ大切な存在かなんてこと分かってるわ...。それでも行くことを選んだのは春香ちゃん自身よ...。」
フロストウィングは春香が昔と比べて精神的に成長している様を見て若干涙していた。
春香に対して戦士としての使命を全うしたということに対する敬意と同じ国に住む言わば弟子的な立場の春香が生死の境を彷徨ったということに関する心配から感情がぐちゃぐちゃになっていた。
「あのな...春香よ...。儂は何度も死の淵に立ってきたんじゃ...。それはお前も知っているとは思う...。でもよ...。死ぬってのは怖いことなんだよ...。儂は死にかけたことも何回だってあるし、目の前で死んでいく奴も幾度となく見てきた...。儂はお前のこと我が子のように見てきたし、愛情を注いできたつもりだ...。そんなお前が...春香がいなくなることを儂は許せねぇんだよ...。だから...ずっと儂のそばにいてくれ...。」
「フロスト...。そんな風に思っていたのね...。でも私は前に進み続けるわ。例え誰が止めようとも私は進み続ける。例えこの身が砕け散ろうとも私は止まらない...。そのきっかけをマリアーノ様に貰ったと感じているわ。」
「そうか...。儂が引き留めてもお前は進み続けるというのか...。それでも一回戻って来てくれないか...。ハピダルのやつがお前に会いたがってる。流石に一カ月も会ってないとなると心配でしょうがないんだろう...。とにかく一回帰って来てくれないか...。」
「そうね...。きっとハピダルも心配すぎて夜も眠れなくなってると思うわ~。少しでいいから帰ってあげなさ~い。」
「まぁハピダルも国王とは思えんくらい心配性だからな~。」
「分かりました...。一回インテグラリッシュ王国へ帰って挨拶でもしましょう...。その後はまたエクスパンドライズへ戻ってきます。次ある戦いに備えて...。」
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