第28話~死の圧力~
急ぎで戻った上陸部隊はマリアーノとの接触を図った。
とにかく仲間の命のために戦うために道を急いだ。
その頃マリアーノらは敵の攻撃を防ぐので精一杯だった。
自らの攻撃はあまり効かないし、春香の攻撃参加をまだ許可できないままでいた。
だがこのままでは次々と戦闘員が死んでいってしまう。
気が付くと丘の上も既に血と死体で溢れており、いくら回復術師が魔法を掛けようとその速度を仲間の死が上回るような事態となっていた。
「マリアーノ様。このままでは全滅する恐れもあります。私に出撃命令を出してください。必ずこの状況を打開してみせます。」
「...。いや...。まだ許可できない。春香ちゃんが向かえば上にいるという地理的有利の状況が意味なくなっちゃうわ...。」
「まだそんなこと言ってるんですか...。それよりも守るべきは仲間の命でしょ?今どれだけの犠牲が出てるか分かってるのですか?私が行けばその犠牲を最小にするって言ってるんですよ...。」
「それでも許可できないわ...。これはハピダルとの約束だもの...。あなたを傷つけてはいけないって...。必ず生かさないといけないって...。あなたはハピダルの召喚者よ。その意向に背くわけにもいかないし背かせるわけにもいかないわ...。」
「ハピダル様ならばこの状況になったら間違いなく出撃命令を出すと思います。私の命のことを考えてくれるのは凄くありがたいことではありますが私は戦士です。仲間のため、国のため、そして自分のために戦ってるんです。マリアーノ様。どうかわたしをお使いくださいませ。」
「...。分かったわ。春香未来。あなたの出撃を許可するわ。必ずこの状況を打破して生きて帰ってきなさい。」
マリアーノは渋々ではあるが春香の言う通りに出撃を命じた。
アルザードが、陽介が戻ってくるまで何とか持ちこたえてくれればという気持ちだった。
春香は丘から降りると、電気系統の召喚者に向かって正面突破を図った。
双方技術者の権能を十分と生かしながら平野をかけていく姿はまるで炎を纏った馬のようだ。
颯爽と目の前の敵を倒しながら進んでいく春香の前にはついに召喚者が登場したのであった。
「貴様...。何者だ...。」
「お前こそ何者だ。我は召喚者ぞ。」
「私も召喚者だ。精一杯ぶつかり合おうじゃないか...。」
「臨むところだ...。お前ら俺の力になれ...。」
召喚者はそういうと周りにいた電気系の能力者を殺し、自分の能力の一部としたのだ。
「この火力の我に勝てるとでも思っているのかこの愚か者がぁぁぁ。」
「貴様...。今仲間を殺したろ...。」
「あぁ殺したさ。我の力になるためになぁ。それの何が悪いというのだ。勝つためには手段を択ばないというのが常識だろうがぁぁぁぁ。」
「仮にそれが認められるとしても仲間を殺す奴は決して許さない。何があってもだ。貴様が奪った私の仲間の命と貴様に殺されたそいつらのためにも私は戦う...。」
「何を正義のヒーロー面してんだよぉぉぉ。思いだけでなれるヒーローなんていねぇんだよぉぉ。お前がどんな能力者だろうと勝利は我のものなり。」
「誰がヒーローになろうが私は構わん。だがお前の行為は決して許さん。火炎地獄・改!」
「そんな攻撃我には全く効かんのだぁぁ。そんなもんかお前はぁぁ!!そんなんじゃヒーローどころか悪魔にもなれねえぞ雑魚がよぉぉぉぉぉぉぉ!!電撃の雷装」
「フッ...。貴様の攻撃も全く効かんようだな...。火炎爆弾!!!」
「喰らえ電撃砲!!」
それはお互いの攻撃を完全に打ち消し合った。
召喚されてからまだ短いと見ていた春香にとっては想像以上の強敵に少々手こずっていた。
一方の召喚者も春香の強さに若干押され気味ではあったが、まだ自分の情報が完全につかまれていないという余裕が心の中にあった。
ただ戦いが長く続いていくにあたって経験値の大きい春香の方が有利になると布どちらもが考えていたため、なるべく長期戦に持ち込みたい春香とそれを阻止したい召喚者側の思惑は対立し、どちらもなかなか思うようにいかなくなっていた。
早く終わらせたい召喚者は次々と春香に攻撃を仕掛けるが、春香は防御に徹していて減っていくのはお互いの体力と火力だけであった。
戦略的に導き出された答えからその行動を起こす春香にとっては上手くいっていたがここであることが起こる。
それは、春香自身が魔術で生成した炎が春香の元から消え、どこかに引っ張られていったのだ。
急な出来事により唖然としている春香に隙ができてしまった。
そしてその隙を突かれ召喚者が電気で生成した剣のより心臓を突き刺されてしまった。
「お前はもう終わりだ...。戦争は一対一じゃないってことをよく覚えておくことだな...。」
召喚者はそういうと剣を抜き、それと同時に春香は地面に倒れた。
春香の腹部からは大量の出血があるが、体から湯気が出てきている。
「誰がこんなところで終わりだ...。私はそこまで弱くないぞ...。」
「な、なんだと...。なんでお前起き上がってんだ...。俺はお前の心臓をとらえたはずじゃ...。」
「これが死の圧力ってやつだ...。自分の最後の最後にその限界を超えてくるんだよ...。」
「だからと言ってこんな様のやつにこの我が負けるわけなかろう。次は全身を切り刻んでやるからな...。」
「貴様が何を言おうが構わない。お前はこれで死ぬからな...。陽介...。お前の技借りるぞ...。火炎砲撃ぁぁぁぁ!!」
「そんなもんで我が死ぬとでも思ったかぁぁぁ!!!」
「隙あり...。燃やし尽くせ...。火炎地獄...。」
とどめの一撃を与えたことで、召喚者は燃え尽き死んだ。
しかし春香も死の圧力のおかげで立てていたが、やはり心臓を刺し抜かれたダメージは大きくその場に倒れ込んで動かなくなっていた。
ただ敵の脅威はまだ去ったわけではなく、もう一人の召喚者がいることを忘れてはいけない。
今の春香に頼ろうともその召喚者もまた春香と同じような能力の使い手で、火炎操作系の能力を持っているのだ。
この状態の春香では全く手出しできずに敗北することとなるだろう。
丘の上から一人目の召喚者の存在が消え去ったのを確認できたマリアーノはすぐに春香の回収に行くように残った戦士に命令した。
誰もがアルザードの帰還をいち早く望んでいたがそう上手くはいかなかった。
挟み撃ちではなく、丘の上に戻ることを決めた彼らにとってその道のりはかなり長く、陽介の瞬間移動にもまだ制限が多く、味方の移動には向かないような状態である。
また、マリアーノや春香のように転移魔法を使える者もおらず、全体の転移というものを行うことができないのも時間がかかる理由である。
更に丘の上からは既に二人目の召喚者の様子も見えるようになっており、急がねば全てが終わりかねない状況に陥っていた。
春香は既に戦闘不能に近い状態であり、攻撃に参加することのないマリアーノ一人の力では召喚者に対してどうも抗うすべはなかった。
春香を連れて戻ってきたロジェスタンスのメンバーはもう春香が戦えないことを察していた。
大量の出血にほとんど開いていない目、そして反応の薄い意識の中で春香を戦士としてこの戦いで登用するのは無理である。
いつ陽介は帰ってくるのか...。
マリアーノを含め残ったメンバーの意識は既にそっち側へと向かっていた。
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