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転生魔術師の覇道譚  作者: 蒼翔ユウキ
第二章~インテグラリッシュ王国編~
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第27話~まさかの事態~

 しかし、陽介を含む上陸部隊には二人目の召喚者の存在は全く感じ取れなかった。

 存在しているのかもわからないような雰囲気であり、さらには敵も残党が存在しているような感じで要塞自体も蛻の殻である。

 誰がどこを探しても強者の面影すらもない。

 上陸後に出てきた足軽部隊以降の敵はほとんどなく、要塞を堕とすのにも攻撃は不要であった。

 何も動きのないままの進軍を繰り返している上陸部隊は、当然防御力が皆無な西側を一日足らずで制圧していった。

 

 だがおかしい。

 何かがおかしいのだ。

 

 敵はどこにもいない。

 東側に回り込んでいったステピックムーブ部隊によるとあちら側にいるはずの住民が一人もいないというのだ。

 東西が完全に海に覆われているアンドロメダ皇国は国土もそれほど大きくはなく、住民の避難場所も非常に限られているという地域であるのに、それが全くいないというのはおかしな話である。

 北部南部の国境沿いも山間部で谷間の集落と言ったところであり、人が大勢移動し住みつくには酷な話である。

 

 ー 魔法の神官。こちらは葉山恭介。アンドロメダ皇国に人の気配全くなし。 ー

 

 その連絡を受けたマリアーノはとあることを察した。

 

 ーまさか、全国民で攻め入って来ているのではないだろうか...。

 

 この予想は少なくとも予知では捉えきることのできなかったものであり、それはマリアーノが考える最悪の事態であった。

 敵は国を背負ってエクスパンドライズの向かってきているとなるとそれは当に国の威厳を懸けた争いである。

 そしてとあるものがマリアーノの予知によって捉えられた。


 ーもう一人いる...。

 

 驚くことに殿筋異能者のかなり後ろ、まだ肉眼では確認できない敵陣最後方辺りに炎を纏った能力者がいるのをマリアーノは見つけたのだ。

 いくら春香と言えど召喚者二人に一人で向かっていって勝てるようなものではないということを春香は知っている。

 それは既に予知しており、仮に自分がその戦に加わったとしても勝てる確率というのは非常に低く、実質この戦争の負けを意するものであった。

 ここでマリアーノが思いつく作戦はただ一つであった。

 

 ー 恭介。急いでこちらへ戻ってきてちょうだい。 ー

 

 マリアーノはたった一言だけを上陸部隊に伝え自らも戦に加わろうと戦場に向かっていった。

 「マリアーノ様。そんな慌てた様子でどうかされましたか?」

 「実は予知で見えたわ。もう一人。最初に行ってた例の召喚者もこっちにいるわ。」

 「となると...。私が二人を相手せざるを得ないようですね...。」

 「そうしてくれるとありがたいんだけど~...。そうもいかない事実もあるんだわ...。」

 「そう言いますと...。」

 「さっき恭介から連絡があったわ。向こうにいたのは残党のような足軽部隊だけだって...。要するにこちらに全国民、全精力を送ってきているだろうということだわ。」

 「嘘...。だろ...。そりゃ敵の数も減らないわけだ...。でしたらどうすれば...。」

 「私だって精一杯考えたわ...。けど今もまだ何も浮かんできていないわ。とりあえず上陸部隊の帰還命令は出したわ。」

 「ならば我々はとりあえず足止めに専念しろと...。」

 「えぇ。それで間違えではないわ...。私もそのつもりできたんだもの...。」


 春香はとあることを悟った。

 それはこの戦いの中で自分かマリアーノのどちらかが死ぬということである。

 ただマリアーノが死ねばこのエクスパンドライズという国の崩壊があるが、自分が死ねばただ一人の戦士の死に過ぎないと考えていた。

 それならば捨て身の覚悟で丘の下に降りていき、召喚者とぶつかり合った方がいいと考え、丘を飛び降りようとした。


 すると、春香の右手を好かんでいたのはマリアーノであった。

 マリアーノは春香がどれだけ行こうとしても決してその手を離すことはなかった。

 春香はあくまでもまだインテグラリッシュ王国の人、ハピダルの手下であるため「春香の死という手段は択ばない」という強い意志の表れであった。

 

 「春香ちゃん...。もう少しの辛抱だわ。あの召喚者の周りの戦力が薄くなるまで待ちなさい...。私は貴方を守る義務があるわ。この命令に従いなさい...。」

 「かしこまりました...。だがその後の作戦や戦いの展望はどうなっておるのでしょうか...。」

 「それについてはあまり考えてないけど陽介が必ず来るわ...。それまで何とか足止めをしてほしいんだわ。そのために今は仲間の死があっても貴方は貴方のことに集中してここにいなさい。」

 

 瞬間移動者の陽介なら必ずすぐに来てくれる。

 そんな希望が春香にはあった。

 陽介がこれば、アルザードがこれば何とかできるともマリアーノは考えていた。

 

 その頃上陸部隊は自らのテント地を片付けることもなく連絡を受けてすぐに港に向かい船に乗った。

 丸一日と掛かる航路をまた移動することになるが、それでは恐らくエクスパンドライズにつく頃には戦いが終わっている可能性が高いという予想を葉山はしていた。

 ただ陽介の能力の範囲じゃ船ごと飛ばすのにも質量制限がかかり3メートルまでしか動かなかったり、人ひとり飛ばすのには距離制限があり一気にエクスパンドライズまで飛ばせなかったりと実現不可能なことばかりが課題としてあった。

 その移動問題の解決に名乗りを上げたのはイザベラを含む水流操作系の能力者が協力し、海の流れを変えたり、ジェットエンジンやスクリュープロペラのあたりの水流を操作し反発力を強めたりして一気に進む距離を長くしようということだった。

 それにより予定の半分以下の時間で突くことが想定され、約半日でエクスパンドライズまで帰れるような計算が立った。

 

 いち早く帰らなければならない。

 さもなければ仲間だけではなく自分たちの居場所までも失うことになる。

 勘の良い葉山はマリアーノからの一言がどのようなことを意するのかをざっと考えていた。

 またもし仮にあのタイミングで春香がエクスパンドライズに戻っていなければもうどうなっていたかなんてわからない。

 おそらくマリアーノが一人で戦っていることであろう。

 

 葉山の頭の中にはもう一つの不穏な予感がよぎった。

 それは二人目の召喚者が出たことに慌てて一人目を無理やり倒しに行き、多くの犠牲が出ることである。

 仲間やチームを大事にする葉山にとって味方が多く犠牲になるということはやはり避けたいところではある。

 それを阻止するためにもやはり早く帰らなければならない。

 帰った後の作戦を葉山は立て始めた。

 

 まずひとつ言えるのはこのままエクスパンドライズに帰ると必然的にマリアーノ達と上陸部隊でアンドロメダ皇国の軍を挟み撃ちにすることができる。

 ただこの場合は挟み撃ちが最善の策なのであろうか。

 しかし恐らく帰還後のすぐの位置にアンドロメダ皇国軍の仮設要塞的なものがあると考えられる。

 ならば回り込んでマリアーノと合流して正面から倒しにまわるよりかは、挟み撃ちの方が有効であると考えた。

 

 「みんな聞いてくれ...。俺からのお願いだ。今エクスパンドライズは二人の召喚者に責められて大ピンチの状況だ。俺たちは魔法の神官から命を受け今帰っているわけだが今回の戦闘で既に死んだ仲間もいる...。このままでは俺たちの帰るところが無くなっちまうんだ...。俺はそんなの嫌だ。だからお前らは俺について来てほしいんだ...。」

 「もちろんですわ。恭介が言うように私は国が大好きです。ほらエリスもイザベラも陽介だってもうやる気満々ですよ。それで作戦は...。」

 「お前ら...。作戦は挟み撃ちにするつもりだが賛成だろうか。」

 「恭介。私はまず魔法の神官のところへ行くべきだと思うわ。陽介が相手の第一目的とは言っても魔法の神官はその第二目的よ。私と同系統の召喚者がいるのも当然知ってるわ。そんな奴がいるところに二部隊で挑んだって限界があるわ。」

 「エリスの言う通りかもしれませんね。俺もまず魔法の神官のところへ行くべきだと思います。仲間の救助が最優先。これ以上みんなが死ぬところ俺は見たくないです...。」

 「イザベラはどう思うんだ...。」

 「私は何だっていいわ...。私のやることは与えられたことを確実にこなすこと。ただ一つ言うなら魔法の神官だけは失ってはいけないってところかしら...。」

 「みんなの意見は分かった。ならば上陸後すぐに魔法の神官に合流を図る。体制が整い次第全員で一斉攻撃を仕掛ける。斬り込み部隊の意地見せてやろうか!」


 葉山の声掛けで士気は一気に上がった。

 どうやら葉山はこの行軍中に言魂(ことだま)のスキルを手に入れており、言葉にしたものがそのまま実現されるという権能の持ち主となったのだ。

 

 速度を上げてエクスパンドライズへと向かう一行を邪魔するものはおらず、当初の予定よりかはかなり早く戻ることができた。

ご覧いただきありがとうございます。

こちらの作品は不定期更新となっております。

また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。

また、本作品はTwitterでの投稿告知を行っておりますので是非「転生魔術師の覇道譚」(@tenseimajutsusi)で検索していただけると助かります。

今後ともよろしくお願いします。

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