第26話~二人目~
アンドロメダ皇国に上陸し六手に分かれて進軍し始めたアルザードとエクスパンドライズにやはりハプニングが起こった。
あらかじめ下調べはしてあったものの、やはり初めての地。
エリスが同行している部隊が道に迷ってしまったのである。
通信魔術も繋がらずにあたふたしているところに敵がやってくる。
「やっぱりバレていたのね...。ならやるしかないわ。」
対峙したのは敵の足軽部隊で、大した強さは持ち合わせないような部隊であった。
エリスがボソボソと呟いて気合を入れている時に、既にステピックムーブが自慢のスピードを生かして敵を斬り刻み、木端微塵にしていた。
その様子にエリスは若干引いていた。
すっかり自分は進軍するための護衛で、戦闘はすべて自分の仕事であると思い込んでいたからか、手を全く出すことがなかったことに少し残念がってもいた。
敵を倒すと通信魔術がつながり、道に迷ったことや敵に遭遇したことなどの一連のことをメンバーに共有した。
その報告を受けアルザードの頭脳的な役割を担っている柊は、敵も自分たちのことについて偵察しに来ていると分析した。
かなり離れた二国間の戦争で自分たちがエクスパンドライズに赴き戦っていると思っていたアンドロメダ皇国には驚きの奇襲で、これに何とか対応すべくと動いているから遭遇するのではないかということであった。
その後も敵に遭遇することは多々あったが、あまり強くない敵であるため簡単に掃除し、無事自陣の拡大に成功し地下に一つの簡易的な基地を作った。
ー こちら葉山恭介。魔法の神官。無事自陣の拡大に成功しました。日が昇り次第砂漠地帯にある要塞を一つずつ破壊して進んでいく予定。それと同時にステピックムーブは東側の航路を完全閉鎖することを目標に行軍する予定です。 ー
上陸軍の一日の総括報告を行った時にエクスパンドライズでは第二陣の進軍が確認されていた。
マリアーノの予知能力ではこの第二陣にも召喚者らしきものはいないであろうということであった。
しかし第一陣よりかは遥かに力のある敵との対戦になるということだ。
するとマリアーノは戦場となる例の丘の上から降りて、下の草原に降り立った。
「天の声よ。攻撃無効フィールドの展開を要請。また攻撃防御バフ供給エリアの展開を要請...。」
ー 二件の要請...承認しました。この地での有利をエクスパンドライズ側に供給。 ー
そしてマリアーノはこの戦の地での攻撃をより有利にするために自らの能力から天の声に申請し、承認させた。
そして向かってくる敵陣に向かってマリアーノが一発撃ち込んだ。
それほど強力な攻撃魔術ではないが、敵陣を分断させるような、計画的で洗礼された攻撃術からなる闇属性の砲弾のような魔術丸を撃ち込んだのであった。
もともと高能力の闇属性魔術師だった彼女は今はスタイルを変え洗脳などの精神系統の魔術を扱っているがかつてはしっかりとした攻撃的な魔術師であったのだ。
闇属性の魔術を全て習得して上り詰めたのが魔法の神官というランクであり、エクスパンドライズという領土である。
卓越した魔術能力で相手を翻弄していた彼女の姿はまさに魔女という表現が正しかった。
そんな彼女の最大の特徴は戦のことには凄く関心があり、予知を応用したその作戦は相手の弱点を突き、力負けをしても勝負では勝つという凄まじい価値への執念から展開されるということである。
インテグラリッシュ王国現国王であるアブドゥル=ハピダルとのコンビネーションは他の人間を震え上がらせるような存在であったが、今は互いに一線からは退き指揮を執ることに注視している。
彼女の狙い通り敵陣を分断することができ、予定通り敵陣を分断したまま戦場へと誘い込むことができた。
そこで待ち構えるのは丘の上から攻撃するロジェスタンスである。
組織的に動く彼らにとって戦とはいかに簡単なもので難しいものかはよく知っているはずである。
このような圧倒的に有利な状況での戦は彼らにとっては容易いことであり、指示された通りにすべてを行うだけである。
しかし攻撃は全く効かない。
正しくは効いていないのではなく敵の数が多すぎて効いてないように見えるのだ。
そして敵陣一番後ろには異様なオーラを放つ者がいた。
「マリアーノ様。あちらに見えるのが恐らく召喚者であると...。どうされますか...?」
「そうね...。どんな能力者かはわからないけど一旦様子見の方が賢明な判断じゃないかしら...。春香ちゃん。何か動きがあるまであなたはここで待機しなさい。」
「了解しました。ですがあの召喚者は恐らく異能者でしょうか...。その周りを囲むのが電気系の魔術師ばかりです...。」
「なら電気系の攻撃は控えるべきね...。全隊員に告ぐ。今より電気系統の魔術の使用を中止する。恐らく敵の召喚者は電気系の異能者よ。」
マリアーノは電気系の召喚者がいることに少し異変を感じた。
色々なツテを使って調べた召喚者の能力は風系統の魔術師というのが多かった。
なのに現れたのは電気系統の異能者で全くの別物である。
「まさか...。二人の召喚者の可能性...。」
「可能性としてはあるかもしれませんね...。ですがそれならばどちらかは急造の召喚者もしくはずっと隠され続けた秘密兵器...。」
「春香ならどう倒す?」
「私なら...。持久戦に持ち込みますね...。時間をかけて敵の操れる電気を減らしていくのが勝利につながると...。ですがそのためには私自身で大量の炎を魔術によって作り出す必要があるのでかなりギリギリの戦いになると...。」
「シュミレーションはできているようね...。ロジェスタンスからいくつか客家能力を使える者を集めておくわ。」
マリアーノの中での戦い方にブレはない。
最初に決めたように最後に決めるのはその敵同等以上の能力者をぶつけ合うこと。
今回は召喚者には召喚者をということから春香未来が選ばれたのであった。
ただ目先の問題は召喚者よりもその前にいる敵の数をとにかく減らすことである。
ロジェスタンス側の消耗もあり、敵の遠距離攻撃を防ぎ切れずに帰らぬ人となる者も少なからずいる。
亡くなった者の遺志を継いで両者一進一退の攻防戦を繰り広げていたのだ。
地の有利であるエクスパンドライズに対して数の有利を生かしてきたアンドロメダ皇国のぶつかり合いとなったこの第二陣が恐らくエクスパンドライズ防衛戦線での一番の山場になることが予想された。
ー マリアーノよ。こっちで召喚者の姿が確認されたわ。けどもう一人いる可能性が高いわ。こちらは私たちが何とかするから気にせず戦いなさい。 ー
葉山の元へ届いたメッセージに一同驚きを隠せなかった。
一人召喚するだけでもかなりの負担が召喚主にかかるというのにそれがもう一人いるとなるとアンドロメダ皇国にいる召喚者の魔力量は侮れないものである。
それにマリアーノがもう一人いると予想することが何よりも信じる要因で、それは彼女の能力を考えれば当たり前のことである。
エクスパンドライズほどの国家じゃないと言われていたアンドロメダ皇国とのパワーバランスが逆転しかねない事実に武者震いしていた。
”必ずここで勝って笑顔で帰って平和で幸せな日々を掴み取る”ために陽介は立ち上がった。
春香がいない限り自分がやるしかないというプレッシャーもあったがそれよりも自分が異世界に来た意味を思い出しての武者震いであった。
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