第24話~緊急事態~
「昨日言った通り対アンドロメダ皇国の作戦を発表する。偵察部隊によるとどうやら領土を守る防衛戦争から始まるそうだ。だけどそれだけではいけない。アルザードとステピックムーブにはアンドロメダ皇国上陸作戦を敢行してもらう。アンドロメダ皇国へは航路を使っていく。必ず首をとってこい。そしてもう一つ。ロジェスタンスを中心に前回同様の場所を戦場として戦ってもらう。恐らくあっちの召喚者はこっちに来るだろうから総動員で止めに入る。私も最前線で戦うつもりよ。万が一のことがあったら即座に連絡しなさい。では出陣!」
一斉に講義室を飛び出して陽介たちは船の出る港へと向かい、船に乗りアンドロメダ皇国への上陸作戦のために駒を進めた。
ステピックムーブという比較的機動力が売りの部隊との共闘となるため、メインの戦闘はアルザードが、離れた小隊との戦いはステピックムーブが受け持つこととなった。
葉山恭介は上陸部隊のリーダーに任命されて緊張からか、体が芯から固まっていた。
常にぶつぶつ何かを唱えているようであり、誰もその内容には気を留めなかった。
そこまで緊張する意味がアルザードのメンバーには伝わっておらず、みんなはいつも通りのハイテンションで船旅を楽しんでいるようでもあった。
頑張って春香を和ませて少しでも馴染んでもらおうということなのかは分からないが、陽介を中心にインテグラリッシュ王国の中の話やエクスパンドライズの話などで盛り上がっていた。
エクスパンドライズからアンドロメダ皇国まではかなり距離があり、航路での移動となると丸二日は掛かる道のりである。
道具があるものは道具を手入れし、しっかり休息をとりながらの船旅が続いていた時にまさかの事態が起きてしまった。
ー 恭介...。こちらはアスケル=マリアーノ。たった今エクスパンドライズ西地区が業火に包まれたわ。まさかの奇襲よ。しかも数が多くてロジェスタンスでは足止めが精一杯の状況だわ...。
まさか開戦予定時間より前にアンドロメダ皇国がエクスパンドライズ本土への奇襲を仕掛けてきたのである。
これは重大な国際法違反であり、宣戦布告して開戦時間より前に攻撃を仕掛けるのは御法度である。
葉山にはそんなこと言われてもどうしたら最善かなんてわからなかった。
自分の頭の中は既に上陸作戦のことで頭はいっぱいであり、他のことに頭が回るわけがない。
領土は守らなければいけないけれど、自分たちの作戦も遂行しなければならないという状況で頭を抱えている葉山をみて、春香が口を開いた。
「恭介。私が行こう。エクスパンドライズへ。」
「でも春香...。お前が行くとこっちの任務が...。」
「そんなこと心配いらない。陽介とともに戦いたかった気持ちはあるがそれ以上に私に求められていることはこの国を守ること。アルザードのみんなであっちに乗り込んでくれ。陽介だっている。必ず何とかなる。何とかしてみせる。」
「分かった。じゃあエクスパンドライズを頼んだ...。」
「あぁ。行って参る。転移術式展開。我が身を最前線まで飛ばしたまえ。」
春香が向かったエクスパンドライズでは激しい攻防戦が繰り広げられていた。
エクスパンドライズの西地区は山とその麓の平野で形成されている地域である。
山の麓の木々は燃えていて一種のフィールドのようなものがそこにはできていた。
民間人の犠牲も出てきているようで、マリアーノの想定していた東側からの攻撃ではなく、その正反対であったため、避難も済んでいなかったのだという。
ー こちら葉山恭介。只今春香未来をそちらに送り込んだ。戦況も打破できるはずだ。魔法の神官。後は頼みます...。
葉山からマリアーノに対しての連絡がいった後すぐに術式によって転移してきた春香が到着した。
「マリアーノ様。私が参りました。」
「助かるわ。でもあっちは大丈夫なのかしら...。」
「今はあちらのことを気にしている場合ではございません。この状況を打破するのに最善を尽くしましょう。」
そう言い残すと春香は火に包まれた戦場のど真ん中に飛び込んでいった。
春香が一人で飛び込んでいったのには絶対的な自信があり、それは自身の能力を十分に理解しているからという要因が一番である。
春香は火炎系統の魔術師であるとともに、火炎操作系の能力者である。
周り炎を全て自らでコントロールできてしまうという状況である以上、春香にとってこの場所に立つだけでバフがかかっているようなものである。
真ん中に立つだけであらゆる攻撃が飛んでくるが周りの炎を利用して作ったシールドを全身に纏い、自分に向かってくる全ての攻撃を無効化してみせたのである。
接近戦に持ち込もうと飛び込んでくる敵もその炎で全く寄せ付けずに格の違いを見せつけた。
そして両手に宿した炎を天に向かって撃ち放つと、空から炎の塊が降ってきたのである。
まるで大量の焼夷弾が降ってくるような感じで圧倒的な攻撃力で前線にいた敵戦力を殲滅させてみせた。
そして本当の戦争行為開始時間までの一時的な休戦状態に入ったが、マリアーノも春香もどこか違和感を覚えた。
それは召喚者と思われるような強力な能力者の不在である。
今回エクスパンドライズ側が被害を受けた大きな理由は予想外の奇襲によるもので、力で押されたわけではない。
そして春香はマリアーノの頼みでアルザードと行動を共にするのを止め、本土での戦いに備えることとなった。
一方その頃アルザードは...。
恭介を中心に春香がいないパターンの作戦を考えていた。
陽介とイザベラを中心とした遠距離攻撃で足元を崩し、その後近距離での戦いへと切り替えるという作戦で一致した。
おそらく召喚者はこちらではなく、エクスパンドライズに行っているだろうという予想しての戦いである。
ただわかっていないのが、敵の召喚者がどんな能力を使う者でどんな強さの敵であるかだ。
徐々にアンドロメダ皇国に向かっていく船に揺られながら戦いをシュミレーションしていた。
しかし今回の戦場は全く知り得ない場所で、地理的な不利を強いられる。
個に力ではなくチームとしての力が求められる戦況であるだけにあらゆることを想定して戦に挑む必要があるのだ。
ー 恭介、聞こえるかしら...。こちらアスケル=マリアーノ。こちらの脅威はいったん退けたわ。けど少し違和感があって...。召喚者とみられるような強力な能力者の姿は見られなかったわ。万が一のことがあるわ。気をつけなさい。
マリアーノからの報告と忠告であった。
葉山はまさかという思いもありながら、マリアーノが言う万が一のことについて必死に考えた。
ー もし仮にこっちに召喚者がいたとしたら...。
この答えが葉山の頭をまた一つ混乱させた。
これまでの予定ならば春香をその召喚者にぶつければいいと思ってはいたものの、春香がこちらにいないということで誰でどうやったら抗えるかということに一人悩まされていた。
「恭介...。何やってるんですか...?」
「あ、あぁ...。柊か...。少し考え事しててな...。」
「考え事って戦いのことですか?」
「あぁ...。もしかしたら例の召喚者がこっちにいるかもしれないって話を魔法の神官から聞いてな...。それでどうすればって...。」
「そういうことですか...。確かに難しいですよね...。でも何でもかんでも一人で抱えすぎですよ...。そこが恭介の悪いところです。もっと私たちを頼ってくれてもいいんですよ...。」
「だよな...。そうだよな...。柊。みんなを集めてくれ。」
葉山は自分がリーダーであるということに多大な責任を感じて独りで抱え込んでしまっていたが、周りの見える柊の一言で目が覚めたようだ。
ー こちら葉山恭介...。召喚者の件はこちらでなんとかする。健闘を祈る。
そうマリアーノに対して言い残すと顔を上げて前を見据えるように頬を叩いて気合を入れた。
ご覧いただきありがとうございます。
こちらの作品は不定期更新となっております。
また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。
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