第20話~一点集中~
ー第十五階層ー
ここの中ボスは闇の上級精霊である。
上級精霊は中級精霊に比べて、使える魔術が増えたり、単純な火力が上昇したりとかなり強力な存在である。
中級精霊との違いはやはりその火力と存在感であろう。
だが陽介は第十二階層での戦いで精霊の倒し方はマスターしている。
光属性の魔術を使う陽介にとって闇属性の相手というのもプラス要素の一つである。
けれど陽介は精霊が中ボスということもあってプレッシャーからか、かなり体が固まっていた。
ただ春香には、陽介がビビっている意味が分からなかった。
「陽介...。まさかビビってんの?戦いにおいて相手にビビるのは一番いけないことよ。逃げたらいけない。向かっていきなさい。」
「ビビってたわけじゃねぇ...。でも何だこの圧力...。凄い威圧感だぞ...。」
「でもどんな相手でも向かっていかなきゃいけないんだよな...。俺は俺の手で幸せを掴む...。そのためにこの世界に来たんだ。」
陽介はまるで別人のように立ち上がり、右手に光電の剣を持った。
そして何度も精霊を斬りにかかるが全く反応がない。
ダメージを受けているような感じがしない。
そしてもろにカウンターを喰らった陽介は登ってきた階段まで弾き飛ばされてしまった。
精霊の体が大きくて動きが遅いため隙は多いが、隙に付け込んでも光電の剣では全くダメージが入らなかった。
「この体どうなってんだ?攻撃が一切入んない...。さっきの精霊は光電の剣で殺れたのに今回は全く...。何かが違う...。でもそれは何だ...?」
まるで金属装甲のように固い精霊の体の対処法が陽介は分からずにいた。
考えれば考えるほど精霊の存在が分からなくなっていき、徐々に混乱し始めた。
でも考えた。
ひたすら考えた。
相手の攻撃を受けながらでもとにかく考えた。
最終的には核撃魔法を使えばいいと陽介は思ってはいたが、核撃魔法には回数制限があり、こんなところで使うにはもったいないことである。
それにこの階層には壁になるようなものは一切なく、己の身を隠す場所すらないのである。
瞬間移動で敵の背後に回り続けるがこれもやはり効果がない。
するとある一つのアイデアを陽介は思いついた。
それは確実にコアを破壊するという作戦である。
コアを破壊すれば精霊は消し去ることができるという特性から、火力で全体に攻撃するのではなく、一点集中で攻撃を仕掛ければより強い攻撃力で戦えるのではないかという考えである。
物体に力を加える際に面で押すと力が分散して一点にかかる圧力は弱くなるが、点で力を加えることで同じ力でも一点にかかる圧力は強くなるという物理法則に則った作戦である。
陽介は光撃砲撃を今まで以上に細くまとめ、同じ火力で撃ちだすことで部分的な破壊はしやすくなるのではないかと考えた。
「コアがどこにあるかは分かんねぇけどよ...。こういうのは数撃ちゃ当たるってこと...。試す価値はある...。細く、より細く...。喰らえ光撃砲撃!!」
光撃砲撃は精霊の腹部に命中した。
精霊自体に変化はないが、少し装甲が崩れているのが確認できる。
ただその先にコアを見つけることはできなかった。
「コアは...。ここじゃねえみたいだな...。じゃあもっと撃つしかねぇな...。」
そして陽介はとにかく光撃砲撃を撃ち込みまくった。
腕に背中に脚にと精霊の動きが遅いのを利用して後ろから、横からととにかく撃った。
全身の装甲が剝がれかけていた精霊であったがコアが一向に見つからない。
「コアはどこだ...。まさか体の中とかじゃねぇよな!!」
陽介はコアの位置を確認するために精霊の首に斬りかかった。
すると首の中心に何か光る弾のようなものを見つけた。
「これがコアなのか...?中級精霊の時とは全く違う...。めっちゃ綺麗...。」
上級精霊のコアは洗礼された精霊であるためまるで宝石のような美しさを持つ。
そんなコアに見とれていたら陽介は精霊に掴まれて、放り投げられた。
「しまった...。斬っただけで油断してた...。切り口が戻らないうちに...斬る!!」
陽介は精霊の崩れかけている手を光電の剣で斬り落とすとそのままコアに光電の剣を突き刺した。
ひび割れるコアを見つめながら陽介は上級精霊に憧れを持った。
この精霊の居所はどこなのか。
自分でもこのような精霊を召喚してみたいとも思った。
「よく倒したわね...。かなり手数が多かったけど...。まあそれは仕方ないわ。」
「考えても考えても頭パンクしそうで...。最適の方法を探した結果が手当たり次第攻撃してって感じに...。」
「でも収穫もあったんじゃない?特に光撃砲撃。元の火力自体は変わってないようだけど火力が上がったように見えたわ。」
「あれは今まで全体に攻撃してたのを点での攻撃に切り替えただけで...。特には何も...。それよりなんか一気に疲労がきました...。」
「そうね...。ちょうどキリもいいし一旦休憩しようか!五日で登る予定の秘密迷宮を半分まで来てまだ一日しか経ってないから少しゆっくりしようか。」
そう言い残すと春香に案内されて秘密迷宮内の休憩室の様なところに連れてこられた。
「今日はここで仮眠をとるわ。4時間後には動き出す。補給はそこにあるもので済ませておきなさい。」
春香はそう言い残すと外へ出ていき何やら喋っているようだ。
「ハピダル様。こちらは陽介と共に秘密迷宮の方へ特訓に出かけております。」
「そうかい。それで、あの小僧の成長はどうかね?」
「かなり順調に来ているとは思います。ただこのまま育っていくとかなり恐怖の存在になりかねないのでなるべくエクスパンドライズとは同盟状態を維持した方がいいのかと...。」
「お主もマリアーノから聞いておるか...。しばらくの間、我々は共同戦線を張るようにしたがいつかの戦いに備えるとあの小僧の成長ってのはかえって我々を不利にさせかねない。なるべく口出しはなしで頼むよ。」
「承知いたしました。その様なことでしたらこちらも引き上げたほうがよろしいかと...。」
「いや、そっちはそのまま進めててくれればいい。あんまり変な動きをすると怪しまれるかもしれないからねぇ。まああの小僧が死なないようにだけ見守っててくれればそれでいいさ。」
「承知いたしました。ではこれで失礼します。」
陽介にはあまりはっきりと聞こえなかったが何か変な会話をしているような雰囲気があった。
そして陽介の基に帰ってきた春香はどこか浮かない顔をしていてた。
さらに陽介に対して今までのような親心というようなものからただの能力の分析をして丸裸にさせやろうというようという思いが強くなった。
それもそのはず、召喚者というものは召喚主の存在に依存するものである。
そのため春香にとって召喚主であるアブドゥル=ハピダルのいうことは絶対である。
その後陽介は難なくとは言い難いがそれなりに速いペースで敵を蹴散らして、秘密迷宮も残すはあと三階層となっていた。
戦うにつれてどんどん成長していく陽介に対して春香は嬉しい気持ちもあったが、どこかこれ以上の成長は避けたいという思いもあった。
これ以上成長すると春香自身を超えてきそうな能力者にまで陽介が成長しているからである。
春香は応用、組み合わせのレパートリーが豊富な陽介と戦うとなるとかなり苦戦するような予感がしてならないのである。
陽介がインテグラリッシュ王国に来て約二カ月。
すさまじい勢いで成長していく彼との間に溝が生まれるかもしれない。
そうなると今は共同戦線を張っている両国間の関係も崩れかねない。
またもや陽介が国家間の命運を握るカギとなっていたのだ。
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こちらの作品は不定期更新となっております。
また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。
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