第1話~始まりの日~
詠唱が終わると、体が謎の冷気に包まれてだんだんと上昇していくのがわかる。
そして視界がボヤ付き始めた。まるでテレビの砂嵐を見ているような感覚だ。
すると、周りがモヤモヤしてきた。
何か家のようなものや、石畳の道のようなものがかすかながら見えてきた。
ー ザワザワザワザワ
人の声や足音などたくさんの音が聞こえてきた。
俺は何か新しい地に着いたことを察した。
道行く人は何か変わった格好をしている。
派手ではないものの死ぬ前の世界とは全く違う格好というのはわかる。
行きかう人の大半が黒のローブを羽織っている。
犬や猫っぽいけど背中に羽の生えてる生き物がいる。
俺はすごい違和感を覚えたと同時にこの世界がどこの世界であり、どのような世界であるかを考え始めた。
ー 黒いローブを羽織ってる…
ー 羽の生えた生き物…
ー あの声の主は術式だとか魔法陣だとか…
そして俺は一つの結論にたどりついた。
この世界は元の世界とは全くの別物である魔術の世界に転生してしまったということだ。
全く知らない地に来たという不安とは裏腹に、ラノベの世界に飛び込んだようなワクワク感と心の奥底にある厨二心が芽生え始めた。
そして周りをよく見ると人間以外の種族だってかなりの数いる。
エルフにドワーフ、獣人など様々だ。
ー もしかしたらエルフの美女とあんなことやこんなことしちゃたりして…
別の種族を見て変な妄想をしてみた
とはいっても異世界に来たらまず何をしたらいいか。ここがどこかもしっかり把握したわけじゃあるまいし、そんなことわかるわけない。
とりあえず周りに話しかけて情報収集から始めてみようと思った。
俺が読んできたラノベの主人公とは違うのは、俺は引きこもりやニート、コミュ障ではないというところだ。
友達と笑って過ごす日々が幸せで大好きだったというのもあり、友達も結構いたし、初対面の人に話しかけるのも得意な方ではある。
ー こんな俺にかかれば友達の一人や二人容易につくってやる。余裕だろ。と思っていた。
とりあえずエルフの友達が欲しかったのでとにかく話しかけにいった。
ー あわよくばハーレムなんて形成しちゃったりして…
なんて妄想をしながら下心丸出しで情報収集をしにいった。
「すいませーん。ちょっといいですか~。」
話しかけてもしかめっ面をされる。
「すいませーん...」
「すいませーーーん…」
何度話しかけたって何人に話しかけたって見向きもされない。
「Lómelindi, melmeleth aelin siluva lyenna?」(ねえ、今の人なんか変じゃない?)
「Naamë, sí siluva lyenna. Tula i eleni hantale.」(だよね。わけわからない言葉だったし…)
「Meldo naa naa sí, melmeleth.」(私普通にガン無視しちゃったよww)
「Amin mela lle, meldo. Lóte súre.」(それなww意味わかんないしww)
話しかけたエルフ同士の会話を聞こえてきたが何をしゃべっているのか全く分からない。
それもそのはずここは日本ではない。ましてや地球でもないのに日本語が通じるわけがないのだ。
しかしそれにはまだ気づくことなく懲りずにエルフに話しかけていた。
日が暮れて、街から人が消えるまでずっと話しかけ続けた。
転生してからとにかくエルフに話しかけまくったが、収穫はゼロであった。
しかも一度も話を聞いてくれたエルフはいない。とにかく無視され続けたのであった。
ご覧いただきありがとうございます。こちらの作品は不定期更新となっております。
また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。