第0話~日常~
俺はごく普通の高校2年生。
部活はやっていないが、そこそこ友達も多く楽しく平凡な毎日を送っているごくごく普通の高校生である。
そんな俺の名は佐藤陽介だ。名前もごく普通である。
「ヘイ!パス!」
「走れー!」
「陽介いけーーー!!!」
周りから楽しそうな声がたくさん聞こえてくる。
俺は今、授業でサッカーをやっているのだ。
中学まで部活でサッカーをやっていたのでそれなりに自信はある。
ー ピピーッ。
「ゴーーーール!!」
「よっしゃぁぁぁぁ!!」
「ナイスシュート!!」
友達と楽しく笑いあって過ごす。こんな幸せな日常が俺は大好きだ。
「陽介!ヘディングだー!」
「決めろーーー!!」
俺の前に綺麗なクロスボールが上がった。
「ナイスパス!絶好球だぁぁぁぁ!」
俺は勢いよく飛んだ。飛びすぎた。
ー ゴォォォォォォン
サッカーボールを叩いたとは到底思えない音がしたと同時に俺は地面に倒れた。
飛びすぎて、勢い余りクロスバーに頭を直撃してしまったのである。
みんながこちらに寄ってくるのが足音で分かった。
「大丈夫か?」
「何やってんだよ~ww」
「いつまで寝転んでるんだ~」
など聞こえてくる声は様々だった。
ただ、だんだんみんなの声が遠くなっていくのを感じた。
目を覚ますと真っ暗な世界が広がっていたが、扉の隙間からナース服のお姉さんたちが会話をしている姿が見えたことで俺は病院にいることが分かった。
その話を聞く限り、どうやら頭を直撃した衝撃で一時的な記憶喪失を起こし、入院していたらしい。
「0時35分か...」
俺はそうつぶやくと同時に病院から抜け出していつも通りの日常をいち早く取り戻したいと思った。
俺はトイレに行くふりをして廊下の監視体制を確認しに出た。
廊下には眠そうな看護師さん数名、診察室には仮眠をとりながら深夜の救急搬送に備える医師が1名という体制だった。
俺は決意した。大好きな日常を今すぐに取り返すために、この病院を抜け出して家まで急いで帰ることを。
「すぐ取り戻してやるからな。待ってろみんな!!」
ー ガラガラガラガラ
そーっと扉を開けて全力疾走。
「ちょっと!何走ってんの~!止まって!」
看護師に見つかってもお構いなし。
とにかく出入口を目指して走った。
深夜の救急受付をしている病院であったため正面出入口が開いていた。
病院を出てもまだ追ってくるだろうと思い、とにかく走った。
すると1キロ程度離れたところに来ただろうか。
ーピーポーピーポー
救急車のサイレンが鳴っているのに気づいた。
まさか救急車で探しに来たわけではないだろうと思ってはいたがとにかく逃げようとした。
ー ドォォォォン
何かの衝突音がしたと同時に、体の背後からすごい衝撃を受けた。
ー あれ。俺が見える?
自分の体を触ろうとしても触れない。
だんだん体が遠くなっていく。
そして少しずつ意識が遠のいていくのがわかった。
ー あぁ。俺は車にひかれて死ぬ短い人生だったんだ...
ー 16歳で死ぬなんて...俺まだ童貞だったし、彼女だっていたこともないのに...
ー せめて童貞くらい捨ててあの世に行きたかったなぁ...
「……@:ls@jov^;:.s042/.:……」
「……もう一度@3^3;vvivejoes……」
何か遠くの方から聞こえる。
「もう一度この人生を始めませんか?」
俺は頭に電気が通ったかのように魂だけが目覚めた。
「もう一度…?」
俺はその声に尋ねた。
「はい。もう一度この人生を新たな場所で始めさせてあげましょう。さあいかがなさいますか?」
「もちろん。お願いします!」
俺はこの年で死んだことに未練があった。そりゃ童貞を捨てるどころか彼女の一人もできたことがないからだ。
たとえ次元の違う世界であっても生き返って必ず幸せな日常を取り返してやると決心した。
「それでは行ってらっしゃいませ。」
そういうと何か詠唱らしきものを唱え始めた。
「蘇生術式展開。闇より生まれし光、星の輝きを我に与えよ。永遠の力、冷たき静寂から目覚めし者に贈りし儀式。運命の糸を手にし、生命を蘇らせん!」
するとこの魂に元の体が吸われるように元通りになり、体が自由に動かせるようになったのと同時に体に合った傷がひとつ残らず消え去っていたのである。
「さあ。新たな人生の始まりです!」
そういうとまた詠唱を始めた。
「転生術式展開。輪廻の門を叩き、運命に抗い、新たな命へと舞い転べ!」
すると俺の周りに魔法陣のようなものが出てきた。
そしてカウントダウンと同時に俺は別世界に足を踏み入れるのであった。
ご覧いただきありがとうございます。こちらの作品は不定期更新となっております。
また作者の語彙力のなさなど思うところはたくさんあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると幸いです。