なぁ? これ、どこに売ってるんだ?
気がつけば9話、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
説明不足を感じたので極少しだけに加筆しました。
「はい、加賀、いつもの」
「おう……って、そろそろ払わせろ」
「お礼だもん、受け取ってよ、加賀もそれ気に入ってるんでしょ?」
「まぁな、どうも他で買ったやつ物足りないんだよな」
「豆からして違うからね~」
あの時受け取った甘納豆、なんでコレよ? と思ったが、試しに食べてみて確かに悪くない、どころかかなり旨くて驚いた、だから素直にその感想を述べたところ、こうしてこいつは時々俺にそれを渡してくる。
礼だとか言うけれど、塾の合間にちょっとした勉強の手助けをしているくらいの事にこいつも気にしすぎだと思うんだが……。
「なぁ? これ、どこに売ってるんだ?」
「ん? だから加賀の食べる分位はお礼に渡すよ」
「あ、いや、この前課題の後食ってたら親につままれてな……すげー食われた」
「あー、これお酒にも合うみたいなんだよね、お爺ちゃんがつまみにしてたな」
「そうそう、すげー勢いで無くなったから、自力でも確保しときたい、勉強の後とか妙に欲しくなるんだよな」
「あぁ、脳みその栄養は糖分だけって言うしね、……じゃ、塾の帰りだと閉まっちゃうし、学校帰りに行く?」
「近いのか?」
「自転車で20分位、どう?」
「楽勝、悪いな、明日で平気か?」
「気に入ってくれて嬉しいよ、じゃ、明日ね」
……なんて、約束はしたものの、待ち合わせのことを考えて無かった。
ま、教室行けば良いかと向かったもののあいつは居なくて、ただ、教室の片隅で女子が揉めてるのがちらりと見えた
「ゆきちゃん、優穂ちゃんにさっき何話してたの?」
「大したことないから、渚は気にしないで」
「ちょっとだけ聞こえたの、優穂ちゃんへの言葉、もしかしていつもあんな風に優穂ちゃんにやな事言ってたの?」
耳に入った名前に立ち去り難くなる、が、立ち聞きも良くねぇし、あいつもこっちに向かう可能性もある今、立ち去るのが無難だろう。
ただ、さっきの会話でふと思った。
瀬文は身の回りで起こってることを、この期に及んでよく判ってねぇ可能性がある?
「あ、加賀、やっぱり行き違ったんだね」
「みてーだな、動かないでくれて良かったぜ」
「あはは、まぁね、ちょっと教室でからまれかけたから戻りたくなかったりして」
からりと笑ってそんなことを言ってくるのに、さもありなんって思う、ついさっきの瀬文の対応を教えてやりたいとも思ったが……
「相変わらずか?」
「ん……でも、教室では珍しいけどね、渚の友達が直接来るのは」
何か色々成る程な、と思う、案外瀬文のこいつへの気持ちも変らないままなのかもしれない
「ま、取りあえず行こうぜ?」
「うん、時間有るならお汁粉も食べよう!」
「本気か? 重くねぇ?」
生まれて初めて連れてかれた甘味処、けど、それは俺の中での小豆の概念を覆すものだった。
「やばい……」
「でしょ? あんこマニアのお婆ちゃんが大好きだったお店」
「良く来るのか?」
「ん、ちょいちょいね、学校帰りに来たりするよ」
「……行く時は誘ってくれ」
「ん?」
「流石にひとりでは来にくい」
そう、誘われるままに食った汁粉は又食いたいと思わせるには十分で、だけどこんな店ひとりで来るのは流石にって正直思う、すると
「了解! 美味しかった?」
すげー嬉しそうに笑うから驚く、こんな風に笑える奴だったなんて。
そりゃ、楓と居る時も、まー嬉しそーにと思いはするが、その後ふっと寂しげな影を落とすのも確かで……だから、初めて見る気もする曇りの無い笑顔に、今日の瀬文達のやり取りを思い出した。
もしかしたらあの問題を何とか出来れば、こいつはいつもこんな風に笑ってられるのかもしれねぇ?
そんな風に思ったら、ガラでもなくお節介な虫がもぞりと動くのを感じた……。
この続きの10話を土曜日に投稿して日曜日はお休みとなります。
推敲が間に合えば11話は月曜日にup出来るかなと思います。