お前あいつに甘すぎねぇ?
「え? そのキャラ本当にそんな使えるんですか?」
「後列でサポート枠に入れて見て、びっくりするから」
「へー、あ、じゃぁ、あの洞窟2回目入ったことあります?」
「え? なんかあるの?」
「……楠? お前隣にいるの受験生って認識あんのか?」
ついついロビーのソファーで盛り上がってたけど、呆れたような加賀の言葉にドキッとした
「大丈夫です、先輩、これ! 先日の模試の結果です」
「……っ!? 成績ってこんなにすぐに上がるの?」
「楓、今まで手ぇめっちゃ抜いてたんだろ?」
「加賀!」
ドヤって見せてくれたその結果は見事なA判定で、加賀の言葉は失礼だと思うけどホッとしたのも事実だった。
実際塾に楓君が来る様になって、浮かれてたかもって思ったから。
その位に彼と会えたのは嬉しかったけど……寂しくもあった。
ニコニコと話しかけてくる彼はあの頃の渚そのもの、でもあったから……、夏休みを挟んでもクラスでの私へのあたりの厳しさはあんまり変わってなくて、噂も沈静化はされたたけど、無くなっても居ないから私の評判も変わらずってとこで。
加奈子も加賀も渚とだけでも1度話し合えば? って言ってくれるけど、私は『――』って、渚に言われるのだけは怖くて、どうしてもそれは出来ずにいる。
「ごめんね、そうは言っても楓君は受験だもんね」
「大丈夫です! ちゃんとコントロールはしてます」
「そう? 確かにこの成績は凄いけど……」
「はい! 僕頑張りますから、ゲームのこととかも一杯教えて下さいね?」
私が渚の家に行かなくなって、名前も出さなくなって、彼なりに悟るところはあると思う。
だけどそれを言葉には出さず、こんなところで会えた今、てらい無く話しかけてきてくれて、本当に良い子だと思う。
私はもう渚のそばに居ることは許されなくなってしまったけれど、この子との縁がまた繋がった事は凄く嬉しくて。
「お前あいつに甘すぎねぇ?」
塾の終わりの駐輪場でふと加賀がそんなことを言ってくる
「甘い?」
「勉強教えてくれとか言われて来るの、すげぇ嬉しそうじゃねぇ?」
「あー」
加賀に言われて、心当たりはあったからちょっと恥ずかしくなる
「あーゆーのがタイプ?」
「はっ!?」
「って、流石にそーゆー構い方じゃねーとは思うけどよ? 楓って似てんじゃん? 瀬文、あ、女の方な? と……結局、嫌いじゃねーんだろ? まだ」
だから、甘くなる。
じっと、その鋭い瞳で心を見透かされるように言われて、思わず目をそらしたくなるけど
「楓君を代わりになんて見ては居ないよ? そんなのは彼に失礼だ、あの子はそう言うの関係なしに私に付き合ってくれてるから、私もそれを返したいだけ……だけど、渚に関しては、うん、何でかな? 嫌いになれない、今も好き、だよ」
この答えは、その瞳を受けても答えられる
「じゃぁ、なんで直接ぶつからねぇ? 十分誤解を解く余地はあると思うぜ?」
だけど、この質問に関しては……私はどこまでも臆病で傷つきたくないんだと思う。
瞳をそらせた私に加賀は深くため息をつき
「まぁ、良いけどよ? ほら、帰るぞ?」
結局彼は優しいんだと思う、黙る私を追い詰めたりはしないから
「ありがとう加賀、心配してくれたんだよね」
「100点」
「は?」
「お前さ、なんであんなに現国でかっ飛ばすのに、こーゆー時間違えねーんだろーな?」
いや、ありがたいと思うよ? 褒めてもくれたんだと思う。
だけど、許されるなら、この偉そうにふふんなんて笑ってる加賀の頭をどつきたいって、そう思った。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
もう少し平日だけでもこのペースで行けたらなとは思っています。