溢れる4
加奈子と話をしていた丁度その時、玄関の方から誰かが話しているような声が聞こえた
「おお! 父さん早い、その手があったか!」
すると加奈子は何故か目を輝かせ部屋を飛び出して、私も挨拶をしなければと玄関に向かう頃には何故か、玄関脇の応接室にお父さんを押し込んでいる彼女がいた。
その姿に驚いていると、落ち着きなさいと宥めるカナパパをよそに、私を部屋に引き入れ、其の侭パタンとドアを閉めてしまった。
「か、加奈子? ちょっと待ってよカナパパ帰ったばっかりだし、一息ついてからでも……っていうかいきなりこんな」
其の侭部屋の外で何だかドアを塞いでいる気配のある加奈子に声を掛けていると
「ま、良いよ優穂ちゃん、そこ座って、ああなった加奈子はどうせ言うことをきかないからサクッと話を聞いてしまおう」
クスクスと笑ったカナパパはネクタイを解きながらソファに座ると
「ご要望には応えるからお茶を持ってきてくれないか」
ドアに向かって声を掛けると
「はぁい!」
ものすごく良い返事が返ってきた。
「皇樹がどうとか言ってたが……優穂ちゃんが目指すのかな? 中々大変だぞ? あそこは家同士の繋がりを重んじる人も多い、良い経験も沢山出来るとは思うが……」
加奈子から皇樹の話をと言われていたらしいカナパパは少し考えるようにお茶に口を付けて……ゆっくりそれを飲み込むと少し迷ったように言葉を続けた。
「ご両親はなんて?」
「見学に行った話をすると流石に少し驚いたようですが、学費なら問題無いと、素晴らしいことだから応援をするし、家庭教師でもなんでもつけてくれる……って」
そう、もう慣れてはいたと思っていたけれど、カナパパの答えを聞いて今まで余り考えないようにしていたことをしっかり感じてしまった。
あの人達はお金は惜しみなく私に注いでくれている、私が望めば家事の援助もきっと叶えて、勉強だけに専念できる環境もくれる……けれど、皇樹に行くかもしれない私への心配は……。
私が思わず俯いたのを見て、察してくれたのだろう、そこはあえてそれ以上触れず
「一流の学校だし、あそこを卒業できれば、ほぼどんな企業でもチャレンジは出来ると思う、でもね、その分のんびりと学生生活を楽しめるというのは期待しない方が良い、極論を言えば、それを楽しむか、飲み込み我慢しても得たい何かがある位で無いと……」
私があの学校で感じた印象を明確に言語化してくれるカナパパは本当に凄いと思う。
「確かに、オーバースペック感はあるんです、そぐうか? みたいな話ならもう一校見学した藤杜学園の方がなじめる感じはして」
「ほう、中々渋いところを行ったね、でも、悪くはないと思う、知名度も偏差値も皇樹とは違うが、それを「劣る」という気は僕は無いかな、女性なら特に卒業すれば就職もお見合いして結婚するにしても、不足のない学校だよ」
確かに、見学で訪れた印象だけしかわからないけど、おっとりとした空気は有りつつも、同時に地に足のついた校風を感じた。
「優穂ちゃんは、なんで行きたいって思ったの?」
「加賀君が……あの、この前お正月に一緒だった彼が、志望してて、一緒にどうか? って見学に連れて行ってくれたんですけれど。」
穏やかに私の話を聞いてくれるカナパパ
「正直圧倒されました、分不相応かな、とも、でも、一緒に挑戦しないかって? 言ってくれた、私がそこにそぐうと思ってくれたのは……嬉しくて」
優しい瞳に促されるように言葉を続けながら、同時に凄く寂しくなる。
……私は、話したかったのかもしれない、心の奥の不安や気負い、みたいなこういう気持ちを本当は――に、聞いて欲しかった。
自覚した途端、すっとひとすじの涙が、私の頬を滑り落ちた。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
……なのですが、ごめんなさい。
暑さと忙しさに勝てず、ここで一休みさせて下さい。
可能であれば9月中に復帰したいのですが、大きなイベントが10月にあり……。
もし復帰が難しくても9月2日月曜日には先の予定を活動報告に上げます。
申し訳ないのですが、よろしくお願い致します。




