溢れる1
色々迷いましたが、先に行こうと思います。
「楠先輩、瀬文君に頼まれたのですけれど……一緒に来て貰えますか?」
教室の掃除が終わりゴミ捨てに行っている加奈子を待っていると、1年生から声を掛けられた
「楓君が珍しいね、どこ?」
「体育館なんですけれど」
正直不思議でしか無かったけれど、行けば判るかと、その場に居たクラスメイトに加奈子への伝言を頼み教室を出た。
けれど廊下を歩きながら、呼びに来た子だけで無く、数人が私の周りを囲み出すのに流石にアレ? と思う。
これって、漫画とかで見るシチュエーション? 俗に言う吊るし上げ、とか?
「おお、ここは本当なのか」
でも、連れてこられた場所は体育館で思わず感心すると、彼女たちはいぶかしげな顔をした。
とはいうものの目的地はそのちょっと横の方だったらしく、ちょっと圧を感じつつ移動する
「で、楓君は?」
「まだ、そう思っているんですか? おめでたいですね」
えーと、結果なんか薄暗い場所に到着し想像は付いたよ? でももうちょっと取り繕わない? って呆れてしまうと
「瀬文君に近づくのやめでもらえますか?」
案の定の言葉に、心底うんざりする
「瀬文君の優しさを勘違いしないで」
「わきまえて身を引くべき」
あー、直聞きは初かもしれないけどちょこちょこ耳に入ってた台詞に、さてなんて返そうかと思ったところで
「僕の一番大切な人をそれ以上侮辱するなら、殴り飛ばしますよ?」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
加奈子からでも聞いて来てくれたのだろう、体育館の隣にある少し薄暗いスペース、そこに囲われるように誘導されるなり始まった糾弾は本人の登場であっという間に終わった……けど。
「違う! これは瀬文くんのためなんだよ」
「目を覚まして? どこが良いのこんな」
口々に好きな事を言ってくれるとは思うけど
「先輩、怪我は?」
楓くんは彼女たちに背中を向けて私の心配をしてくれていて
「こんな人に騙されないで! だってこの人は加賀先輩の……」
けれど、この言葉に彼の体の動きが止まるのが分かった。
「関係、無いです」
彼が反応したのが彼女たちにも分かったんだろう
「関係なくないよ! このままじゃ、楓くんが可哀想!」
「そうだよ、振り回されてるの見てられない」
「黙って……貰えませんか?」
「だって! この人は加賀先輩の彼女でしょ」
叫ぶようなどこか悲痛な声に流石に反論をしようかと思ったとたん
「関係、ありません、僕が先輩を好きな気持ちをあなた方にどうこう言われたくない!」
瞬間その場に響き渡った声に、その場にいた彼女たちは息を呑んで
「消えて……下さい、これ以上何か言うと言うなら……もう一生あなた方とは口を聞きません」
「楓……くん」
皆がいなくなって、がらんとしたその場所で崩れるようにしゃがみ込んだ彼は顔を覆って動かなくなってしまった
「ごめん、なさい……こんな形でこんな時期に、伝えるつもりなんて、なかったのに」
さっきの言葉はやはり聞き違い何かではなかったんだろう……自分にそんな想いを寄せてくれるなんて考えても見なかったから、私も驚いてしまって、でも
「なんで謝るの? 私こそごめんだよ……そんな風に想ってくれるの全然気がつかなくて」
「僕も仲の良い後輩のままで居ようと思っていました、少なくとも先輩の受験が終わるまでは……なのに」
疲れたようにくったりとしゃがみ込んで、切なげなため息をつくのに胸が痛くなる
「そんな風に気遣ってくれてたんだね、でも、大丈夫だよ、びっくりしたけど、気持ちは嬉しいって、思う、ただ私、好きとか、よく、分からなくて……」
「先輩にそんなつもりがないって事はずっと分かっていました、だから、大丈夫」
微笑んでくれるその顔はいつも通り優しくて、けれど私を見つめる瞳は僅かに潤んで、切なげに見えた。
「でも、もう、受験が終わっても一緒にゲームをしたり、とか……難しいですよね」
「え? 何で?」
「何で……って、先輩、困るでしょ? この気持ちは先輩には重くて……」
こういう時ポンコツ気味の自分の感受性が悔しくなる。
楓君が私を気遣ってくれているのは判るのに……。
「ごめん……こんなことを言って良いのか、判らないんだけど」
「……先輩?」
「重いって、よく判らなくて……、楓君ともう一緒の時間なくなっちゃうって凄く、寂しくて、でも、これって、私が寂しいってだけだし、それにちゃんと受け取れてるなら重いって、私思わなきゃな、筈で……」
「……っ」
切りどころが中々あくどくごめんなさい。
次週月曜日にupいけるよう頑張ります。




