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柊高校物語  作者: 萌葱
57/61

棘3

前作香川さんの名前をちょっと変えました。

直前で調整したら漢字が重なっており、ぎゃーとなりました。


 ようやく我が儘娘のおもりが終わり、埋め合わせにどっか行かないかと誘った楠は甘味処の提案をしてきた。

 それは望む所くらいの事だったが、その道中とある名門女子校の制服をみかけるなりひとり増やして良いかなぞ言いだした……藤堂にデートなんて言う思惑は無いのは知っている、けれど久しぶりのふたりきり、そんな時によく知りもしない人間をゲストに呼びたいと言い出すことと、そのひとめ見て判るやっかいそうな制服に内心頭を抱たものの、それを素直に出すのも躊躇われた結果。

 何故か3人揃って甘味処のテーブルに座っていた訳で。


 確か香川の家の娘だったか、カリナが来日する直前に塾で顔を見たときに微かにした、嫌な予感……スルーすべきでは無かったんだろう、多分こいつが楠に何かやらかして、これはその意趣返し。

 俺にとっては久しぶりのふたりきりの時間でも、楠にとってはただの甘味処通い。

 そんな見たくも無い真実を目の当たりにしつつ、……本当に厄介な女を好きになったとため息をひとつついて、敢えて俺は席を立つことにした。


 その間に話はすんだんだろう、香川は丁寧に俺たちにごちそうさまでしたと手を合わせると、そのまま甘味処を出て行った。

 その手にはオマケと言って楠が渡した甘納豆をしっかり持って。

 では、俺らも帰るかと自転車に手を掛けたところで

「説明、くらいは求めていいか?」

 漸くさっきから言いたかった言葉を言えた訳なんだが

「悪かったな。俺関係でなんか有ったんだろ? 嫌な思いをさせた」

「や……ん~、ある意味彼女には感謝してるかもしれない」

「感謝?」

「身の程をね、教えてくれた」

「……何をした? あいつ」

 戻る言葉に、体が熱くなるのが判る、目の前にこいつがいなければ、あの背中を追いかけて怒鳴りつけたかもしれない。

 それを堪えるように強く拳を握りしめたが

「そういう意味じゃ無い、大丈夫だよ、怒らないで」

 そう言ってふわりと笑ってみせる

「今回の加賀の不在は色々なことを私に教えてくれた、周りはどんな風に私達を見ているのか……そして、殆どの人が直接それを本人には言わない、聞いてくれれば友達だよって言えるのにね?」

 その陰のなさを切ないと思いはするが、今は想いを告げることなんてとても出来ないことは自覚している。

 これから1年、もし、楠に皇樹を目指す気持ちが少しでもあるならば、この想いをぶつけて心を揺らすのは余りに自分勝手が過ぎる行為だ。

 何よりちらりともその気配の無い奴に玉砕覚悟で告る位なら、皇樹に行ってから本気で口説く方がまだ勝率が高い……。

「あの子は私に覚悟をくれた、加賀とこの先も肩を並べたければ、私はまだまだ色々足りない、それを埋めようと思うなら皇樹に通うってのが一番かも? って」

「楠……」

「正直迷ってる、将来起業する気も無いし、社交界で名を売る気も無い私にはオーバースペックだと思う、でも、うちの親は、私が頑張ればあそこを狙えるかもってことに目を輝かせ……あの馬鹿高い学費に簡単に頷いたんだ、少しほっとしているようにも見えた」

 口調は平坦なのに、声音は少し寂しげで、大学進学なんて事でも楠の両親は相変わらずか、と、胸が痛む。

 けれど、同時に俺の提案を本気で考えてくれてる事は感じた。

 楠の俺に対する執着、それが友情なのは痛いほど判ってはいる。

 それでもこの先も肩を並べて隣に居たいと思ってくれるのならば、俺はどうしたってこの立ち位置を動かせない……それを再確認、した。


次作来週月曜日にup予定ですが、ちと転換値の部分なので若しかしたら練り直しの一回休みを頂くかもしれません。

その時は活動報告にてご連絡致します。

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