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柊高校物語  作者: 萌葱
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棘1

ひと月、お時間ありがとうございました。


「ありがとう、楠さん、また、お願いしても良いかしら?」

「う……うん、助けになったなら良かった」

 頭ひとつ低い小柄な背中が嬉しげに去って行くのにこっそりため息をつく

「香川さん、だっけ? あのレベルの単語の確認て、いつもいつも確認だとかってくっついてくるけど……塾来る意味ある?」

 隣でぼそりと呟く詩織の言葉に思わずうっとなるけど

「や……まぁ、私もここで先生と併せて加賀のお世話になったりしたから」

「全然状況が違うとは思うけど? ……その彼は今日もお休み?」

「何だか、忙しいらしいよ暫く休むって」


 前と同じ、家庭の事情とか言うのが始まったらしいのだけど、今回はちゃんと私にそう言ってくれて、相変わらず塾には来ないし、学校も休みだったり終わるなり居なくなってしまうけれど、話しかければ答えてくれる。

 距離取らなくて良いの? って聞いたら状況が変わったから問題ない、とか、ただ今回は前回よりかなり長くなるからって話も聞いていた。


「これ、いつものお礼、リップクリームだよ、凄く使いやすいの」

 塾が終わり、さて帰るかと立ち上がった私に寄ってきて、香川さんが差し出してきたのは、何だか凄く見覚えのあるようなブランドのロゴの付いたそれ

「なんだかものすごい高価(たか)そうじゃ無い? 気を遣わないで良いよ、大したことしてないし」

「そんな事言わないで、私とても助かっているの、ここお友達も居ないし、相手してくれるだけでも凄く嬉しくて……」

「香川さんが私で良いって言うなら、塾でのお友達になろう? ただ、そのリップは受け取れないよ、ごめん」

 プレゼントの受け取りは固持して、代わりにそんな提案をすれば、嬉しい、と、私の腕に両手を絡めた。


 それからはそれなりに勉強を教えたり、おしゃべりに付き合ったり、そんな日々の先、塾の定期テストの日の後にお茶でもしましょうと連れてこられた先は……

「うわぁ」

 一流ホテルのラウンジだった。

 塾まで車で送迎されているらしい彼女は、迷い無い足取りでふかふかの絨毯を踏みしめているから仕方なく、私も後に続く事にするけれど落ち着かない。

 こういう場所に来た事が無い訳では無いけれど、流石に塾に行き来する自転車で動くのに特化したジーンズと風から身を守る為のダウンジャケット……いかにも場違いな私をジロジロ見るような無作法な人は居ないけれど、落ち着かない。

 学校以外は車移動らしい前をゆく香川さんは、お嬢様然としたワンピース姿だし。


 お勧めがあると言う彼女にセレクトを任せれば、目の前に並べられたのは、3段重ねのスコーンやケーキが並ぶスタンド、その隣には特徴的なブルーの模様が散らされたティーカップとポット、つまりアフタヌーンティーのフルセット。

 あの場で断って帰るのもどうかと勧められるままに受けてしまったけれど、これあのリップより高価なのでは? とこっそりため息をつく、そして何より、席に着いた時から微妙に雰囲気を変えた彼女の言葉は

「ごめんなさいね? 慣れていない方には居心地良くないかしら?」

「お洋服の事なんて気になさらないで、……あらかじめそぐう物をなんて言っても困らせてしまうと思ったの」

 ちくちくと痛がゆいような言葉の棘に、この子も加賀関係だったかと漸く気がついた。

 今回の加賀の不在で感じたことは、周りの女子の様子が変だと言うこと

 寂しくない? みたいな探ってくるのは兎も角、仲違いとか別れたらしいとか、本人が聞こえるような距離でのうわさ話は自重してほしいものだと思うのだけど。


「身の程をね、知った方が良いのかなぁ? って」

 例の高級リップの賜だろうか? つやつやふっくらした唇は毒味のある笑みの形に緩み

「ここ暫くお世話になって私も確信できたの、世界が違うのでは無いかしら? って、だから貴方ももう、しつこく付きまとうようなことは止めて差し上げてね?」

 これを私に言う為に、わざわざ塾に通い、私に纏わり付き、2人きりになれるお茶に誘ったと言うことか。

 この回りくどさと刺そうとする棘の深さ。

 成る程、加賀も中々大変な世界に住んでいる……そんな事を思った。


おそらくひと月ほどはいつものペースでいけるかなぁ? と

只ちょっと練り切れてないので不安はありますが。

今後は若しかしたらちょっと書いて休み……のペースになるかもしれませんが、なんとか区切りまで、頑張りたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ~、また厄介そうなのが湧いてきましたね。 ここで加賀くんの大変さを感じられるという事は、優穂ちゃんにはまだ余裕があるんでしょうか。 新章も楽しみに読ませて頂きます。
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