おでかけ2
「おー、よく化けた」
「あのね? 第一声がそれ?」
「めっちゃ褒めてるけど?」
「そうは聞こえないけれどねぇ……」
丁度1時間後に迎えに来た加賀は隣を歩く私に嬉しげにそんなことを言って来る。
「んで? 次はどこ? って言うか、いい加減教えてくれても良いと思うんだけど」
「あとちょいでどうせ判るから、それまで待っててくれ」
アトリエを出て電車に乗って30分ほど、駅前は華やかな繁華街だったけれど、そこから続く街路樹が並ぶ道は静かで……
「うわぁ!」
その先に見えてきたのは大きな門とその奥にあるどーんと大きな建物……ここって
「大学?」
「あたり、聞いたことくらいはあるだろ? 皇樹大学」
「そりゃ……でも、柊からもそんなに行く人多くないよね?」
「まぁ、それなりに難関だからな」
「それなり……って」
そのまま加賀はずんずん歩いて行って、門の前の守衛さんに何やら書類のような物を見せると
「さて、何から見たい?」
って、それは事前に心の準備があって答えられる質問じゃ無いのかな?
「慣れてるね……」
「ん? 貴文が通ってて、何度かな」
「凄いね、加賀の親戚の人だったよね? 頭良いんだね」
「まぁな、っと、こっちが文学部の教室になる、授業中だから静かにな」
何が見たいも何も、何があるかも判らないよって言ったら、それもそうかって笑って、なら講堂からとかいって連れてきて貰ったけれど、加賀の馴染んだ振る舞いに感心する、時々すれ違うここの学生らしき人たちも私達を完全スルーしてくれているし、まるで在校生のようだ。
新しくは無いけれど、清掃の行き届いた建物は、空調がしっかり効いていて、何よりこの年月を経ているのが判る柱や壁はどっしりとしていて、何だが懐かしささえ感じてしまう。
大きな窓から見える授業風景も皆熱心で、質疑応答も活発。
この空気は授業の質が良いからだって事は分かる、現に私の受けている授業だって講師の評判は高いと言われている。
けれどここはそのさらに上を行き、覗く教室のどこにもダレた空気は無く、見学しているだけの私さえこの授業を受けてみたいと思わせる物だった。
「ちょっと早いけど、混む前に昼行っとかねぇか? 朝からだったし、その後も見て貰いたいとこいくつかあるんだ」
……って、学食と言って連れて行かれたところは、店内の雰囲気も料理も果たしてその呼び名で呼ばれるもの? って感じだったし、図書室って普通はもっと慎ましい物を言うと思う……もう独立した図書館だよね? って建物な訳で。
他にもミュージアムやら体育館やら……どれもこれも、名門と言われる柊に通う私が目をむくレベル、だった。
「大学って……凄いんだね?」
「まぁ、何所もって訳じゃ無い……ここは偏差値もそうだが、施設のレベルと学費の高さは最高峰だろうな」
「だろうねぇ……で? 加賀はここ目指すってこと?」
「あぁ……でよ、お前もどーかなって?」
「え……?」
はい? 何だか、とんでもない言葉を聞いたような。
この、偏差値も学費もバカ高い大学に?
「……あえて言うまでも無いと思うけど、私、加賀よりかなり成績落ちるよ?」
「仮にも受験の話してるのにその表現使うか? まぁ、知ってる、多分3年なったら人増えるし、塾も違うクラスになる可能性が高い、だろうな」
「自分が目指す大学の下見に付き合わせたんじゃ無いの?」
「言ったろ、俺にとってここは目新しい場所じゃねーし、お前だよ」
最初は不思議だった、何も情報が無かった事が、だけど、途中からは、加賀が見学に付き合って欲しかったのかなって思ってたから……
「何も考えずにただ校内を見てしまったんだけど……」
「それで良いんだ、意気込んだり、意識とかすると見えるものも見えなくなる、服も、まぁ、カモフラージュ……みたいな?」
そう言えば、そんな用事なら制服とかでもよかったのでは?
「あえて、在校生にでも見えるようにしたんだ、見慣れない奴が居たってそんなジロジロ見るような事はねーだろーけど、やっぱ落ち着かないだろ?」
……なんと言うか、最近加賀とは世界が違うなぁって、思う事がある。
あの日カナパパとの帰り道の会話で改めて認識した。
ダンスが日常的に必須で飛び抜けて上手な事、子供の頃からお世話になってるとは言え、高級ホテルに1人滞在とか出来ちゃう事……言ってしまえばただの学校見学なのに、行き先はこんな場所で、ここまで気配りをしてくれちゃう事。
「で? どうだった?」
少し前の私なら、全力でザリガニの様に後退りしたんじゃ無いかな? と思う皇樹、だけど……。
ごめんなさい、ストックが尽きました。
幾つか書きかけがあるのですが、まだしっかり繋がっておらず、でして。
少し時間を下さい。
ひと月ほど……4月15日までには戻れるよう頑張ります。




