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柊高校物語  作者: 萌葱
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正月2

今更ながら、タイトルは初詣だよなぁと……そのうちこっそり直すかもしれません

 すらりとした長い手足に、一度も染めたことも無いだろう真っ黒の髪をショートカットにしていて、同じく真っ黒の瞳を囲む切れ長の目元、髪と同色のまつげは割と長くて目を伏せている時は、ちょっとドキリとしてしまう、すっと通った鼻筋に薄めの唇はいつもキリリと結ばれているけれど、笑顔になるととても優しくほころぶ。

 世間で言う美人とは少し違うのかもしれないけれど、僕にとっては特別で気がつけばいつも目で追ってしまう先輩。

 そんな彼女が祖母と渚に着せられた振り袖を纏って、少し照れたように僕を見るのに、ちょっと時が止まってしまった。

「凄いお似合いですよ、綺麗です先輩」

 僕の掛け値なしの本音には、ちょっと困ったようにありがとうなんて言ってくれたけれど、心からそう思ってるのがうまく伝わらなくてもどかしい。


「じゃぁ、本殿向かおうか!」

 渚ちゃんが元気よくレッツゴー! なんて言っている横で

「ごめん、私……ちょっとまずいかも」

 神社までは本家の運転手に送って貰って、鳥居をくぐったあたりから始まる玉砂利の参道、1、2歩歩いた先輩は足を止めて、本当に困ったように眉を下げて僕らに言ってきた。

「大丈夫です、ゆっくり一歩づつ行けば……手、貸しますよ?」

 差し伸べた手の指先を戸惑うようにきゅっと掴んでゆっくり一歩歩く先輩

「もっとちゃんと握った方が安定します」

 さりげなく僕の手のひらで先輩の手全体を包み気持ち支えるように力を込め

「少し体重預けて下さい、大丈夫、転びませんから」

 杖代わりになればと差し伸べた僕の手をきゅっと握って、素直に少し体重を預けてくれる、緊張したように足下ばかり見ているから僕がどんな顔で先輩を見つめているかは本人には判らない……。

「ゆっくりで良いよ、私、お祖母さまのお使い済ませてきてしまうわね」

 てててっ……って、渚ちゃんはちょっと得意げに早足で社務所へ向かってしまい

「渚凄いね、着物をものともしてない」

「慣れてますからね」

 渚を驚いたように見つめている先輩

「ああ、あのダンスの練習を思い出す」

 呟く悩ましげな声を可愛いと言ったら、怒られるかな?

「ふふ、確かにそうですね、でも、それならヒールがないこっちの方がきっと楽ですよ」

「あ! 確かに、楓君良いこと言う、確かにこっちの方がマシかも」

 そんな事を言いつつ恐る恐る一歩一歩進むうちに、だけどやっぱり流石先輩、境内に着く頃には僕の手に掛かる重さは段々軽くなり、握りしめていた力も抜けていった。 

「ありがとう、どうやらもう大丈夫そうだよ」

 するりと解ける手のひらを捕まえてしまいたくなる、だけどそれはただの後輩には許されていないから……

「はい、でも、良かったら帰りも手を貸しますよ? 転んでしまったら心配ですし」

「ん……大丈夫そうだけど、このお着物汚してしまったらと思うとやっぱ怖いかな? お参り終わったらまた鳥居までお願いしても良い?」

 祖母はたとえ先輩が転んで着物を破ってしまっても、先輩を心配しこそすれ着物を惜しむ人では無いのは百も承知だけれど

「はい、任せて下さい、守りますよ着物も……先輩も」

 渡りに船とその心配に乗ってしまえば、ありがとうって優しく笑ってくれるのがホッとするけど、少し寂しい。



「ん~、お祖母様からの頼まれ物、少しかかるみたい、優穂ちゃん歩くのまだ心配だし、先歩いてて? きっとすぐ追いつけるし」

 うふふ、なんて、相変わらずちょっと得意げな渚ちゃん

「本当に渚は動き慣れてて凄いね、じゃ、ゆっくり先行ってる、気を付けてね」

 優穂先輩はそんな彼女の言葉にすんなりと褒めてくれるから、益々渚ちゃんは嬉しそうで……僕もこんな風なのかな? 

 帰り道でもごめんね、なんて言葉とともに差し出された手のひら、僕はちょっと触れるときに緊張してしまうけれど、先輩にはためらいは無い、耳を澄ませば先輩の吐息まで聞こえそうな近さで、でも聞こえてくるのは、常に無い近さにドクドクと響く僕の心音。

 ……お芝居の練習の時もこれくらい近くて、あの時もちょっと僕はおかしくなってしまったけど、正月でも来る人の限られている静かな境内で二人きりって意識してしまうと……

「ん? 楓君ちょっと顔赤い?」

 行きと違って余裕のある先輩は僕の顔を見てちょっと眉をひそめるとするりと手を外して、僕の頬を両手で挟んでのぞき込んで来たりするから…… 

「だ! 大丈夫です、多分風が冷たくて」

「じゃ、これ、巻いとこう」

 先輩は肩からショールを外して僕を囲むように巻いてしまい

「それじゃ先輩が」

 ショールを解こうとした僕の手を先輩はぎゅっと握って

「行こ?」

 にっこり笑って……思わず息をのんだら纏ったショールからふわりと香る……これって

「……っ! コンッ……ケホッ!」

「え? そんな? やだ、益々顔赤いよ? ちょっと車まで急ごう!」

 いや、これは違くて、えと、先輩の香りがっ……それに気がついてもう片方の手でショールを少し解こうとしても

「駄目だよ! 風邪の引きかけかも、ちゃんと巻いといて!」



 ……違うんです、先輩、この距離に居る限り僕の熱はひかない、だから、そんなに無防備に僕に触れないで下さい、募る思いに高まる熱と、意識さえしてもらえてないという一個下という壁に胸は苦しくて。

次週来週月曜日頑張ります



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