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柊高校物語  作者: 萌葱
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お正月

今更ながらの正月話、時期ずれまくりでごめんなさい。

久しぶりの従姉弟コンビ楽しんで頂けたら嬉しいです。

「お~似合うね! 和服」

「ありがとうございます、ただ、ごめんなさい渚ちゃんの準備がまだで、近くの祖母の家で着付けているのですが一緒に来て頂いて良いですか?」

 お正月明けに渚と楓君に誘われて初詣の約束をしていた、でも待ち合わせの場所には和服の楓君だけが居て、どうも渚は和服選びに嵌まってしまったらしい。

「良いよ、なんかアレって組み合わせ無限らしいね」

「それもあって前もってある程度決めてたんですけど……ごめんなさい先輩」

「予定があるわけでは無いし、気にしなくて良いよ、ゆっくり行こう」


 そんな話をしながら着いたのは、お屋敷と呼んで差し支えないような洋風の邸宅だった。

「渚のうちも中々だけど、これは又別格だね……」

 なんとお手伝いさんまで居て、勧められるままに通された部屋の広さと豪華さは規格外……ふかふかのソファの座り心地は最高だけど、なんだか落ち着かない。

「ここは僕らの祖父母の暮らす家なんです、所謂(いわゆる)本家という物ですね、昨日は親戚縁者集まって凄いことになってました」

「え? 昨日の今日じゃない! 疲れてない?」

「大丈夫ですよ、僕、先輩との約束より楽しみなことなんてありませんし」

 にっこり笑ってとんでもないことを言ってくるから呆れてしまう

「ほう……じゃぁ、このソフトは?」

「……っ! もうクリアしたんですか? じゃぁ」

「貸してあげる、いや、堪能した、面白かったよ」

 だけど、私がバッグから出したゲームソフトに瞳を輝かせるのはやっぱり楓君で、なんだかホッとしてしまう、この前の劇の時も思ったけど、時々とても大人びて感じる楓君の成長速度に置いて行かれちゃうような気もしてたから。


「お待たせ~」

 紅茶も飲み終わった頃、部屋に入ってきたのは振り袖姿の渚。

 緋色の生地に大輪の花が描かれた着物は華やかかつ美しく、けれどそれにちっとも負けてない渚はキラキラしていて

「すっごい! 綺麗!」

 語彙力が届かなくて陳腐な私の褒め言葉に、渚はそれでもとても嬉しげに笑って

「ありがとう、紹介するわね、私のお祖母様、それでね、彼女が優穂ちゃん」

「いつも渚と仲良くしてくれてありがとう、渚の祖母です」

 優しげに私に挨拶してくれた人は渚のお祖母様らしいけれど、とても若く見えて驚いてしまう。

 カジュアルな、けれどとても柔らかそうな藤色のカットソーとスカートを纏い、髪をシニヨンに後ろにまとめているその姿はお母さんと言っても通じてしまいそうだ。

「渚さんに仲良くして貰ってます、楠 優穂です」

 ちょっと緊張しつつ挨拶した私に彼女はふわりと笑って

「よろしくね、優穂さん……ところで出発をもう30分ほど遅らせて、私とも遊んで下さらない?」

 上品な奥様はいたずらっぽく耳を疑う提案をしてきた。


「え~、僕も選びたい! 着替えるまでなら良いじゃ無いですか」

「だーめ! 楓は出来上がってからのお楽しみ!」

 よく判らないままに渚に手を引かれて行った先は桐箪笥がどーんと置かれた和室、何と呼ぶかは知らないけれど、見たことも無い長いハンガーに数点着物が掛けており

「渚と一緒に初詣に行くのよね、どんな方かお話を聞いてたらとても似合いそうな着物があるのを思いだして……折角だから着替えて一緒にどうかしらと思って」

「……お申し出はありがたいのですけれど、お恥ずかしながら余り着る機会が無くて、汚してしまうかもしれません」

 渚が難なく動いているのを見てこんなことを言うのは恥ずかしいけれど、洋服と違いその高価さは桁違い、しかもこんなお家のお着物だ……腰が引ける私に。

「そんな事は気にしなくて大丈夫、それよりもね、そういうお嬢さんにこそ着てみて貰いたいの、袖を通さないとこの子達も可哀想なのよ? どのみち定期的にメンテナンスには出さないといけないものだから」

 にこにこにこと笑顔で押しが強いのはこの一族の特徴なのだろうか、渚と楓君によく似た彼女の説得に負け、私はほぼ七五三以来の着物に袖を通すことになった。


 水色とも言えるような薄い蒼い生地に梅の小花が散る爽やかな図柄の着物に金糸で刺繍された白い帯、着物の時は化粧が必要と殆ど生まれて初めてのようなファンデーションをはたかれて……言われるままに右向き左向きってした後に渚に手をひかれ、慣れない小股歩きでたどり着いた応接室。

「ただいま……楓君?」

 随分待たせちゃったなとソファに座る彼を見ると、彼はさっき貸したゲームの説明書を手にして軽くかたまってしまった。

「楓君?」

「かーえーで! 凄いでしょ? 先輩!」

 とととっと器用に小走りで楓君に近寄った渚が肩を叩くと、漸く我に返った楓君は

「凄いお似合いですよ、綺麗です先輩」

 真っ直ぐ私を見てどっちが綺麗なんだと言いたくなるような笑顔を見せてくれた楓君。

 その表情からも本心からの褒め言葉だとは思うし、私も姿見で見たときは結構化けれるものだなと思ったのだけど、これだけ華やかな渚の隣でそれを受けるのは少し恥ずかしかった。


 

次作は次週月曜日です、よろしくです。

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