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柊高校物語  作者: 萌葱
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アルバム

活動報告にも載せましたが、自分のカツ入れのため、大会エントリーを考慮しており、アルファポリス様からもリンクを繋げました。

ただ、実際のエントリーは、まだ迷い中です(優柔不断…)。

エントリー決定致しましたら、お知らせさせていただきますので、生暖かめな感じで見守って頂けましたら嬉しいです。



「ねね! やばいよね?」

「まぁ、確かに、この儚さはどこいった? って、風情ではあるな」

 栗田家の別荘のリビング、厚みのある大きなテーブルに広げられているのは何冊かのアルバム。

 部屋のテレビは大晦日定番の歌番組をつけてはいるけど、そんなに真剣に見る気にもならず、ながら見をしながらのUNOやトランプ、人生ゲームまで一通り遊んだその後で、加奈子が部屋から持ち出してきたのはそれだったんだ。

 今、2人が話題にしているのは、多分5歳くらい? 動物園のライオンの檻の前、柵のそばギリギリで身を乗り出して目を輝かせる加奈子と、カナママの手を握りしめ固まる私を写した1枚だった。

 あの頃は可愛かったと口癖のように呟く加奈子には慣れているけれど、写真と私を見比べて、しみじみ別人みたいに言われるのはなんだか面白くない

「加賀?」

 じとっとその目を見つめるも

「え? 俺? 怒るのおかしくね? そもそも栗田が振ったんだし」

 俺、悪くねーよな? なんていかにも不本意みたいにブツブツ言ってくる。

 

「お茶運ぶの手伝って~」

「はぁい!」

 台所からのカナママの言葉に席を立つ加奈子

「いや、俺が行く」

「え、いいの?」

 でもそれを制して、勝手知ったる風情で台所に向かう加賀。

 先日の夕飯ご招待でしっかりと栗田家に馴染んだ彼は、その時ふと漏らした、ひとりの年越しと言う言葉を切っ掛けにカナママのみならずカナパパからも招待を受け、今日もこの別荘に来ていた。

「逃げた」

 加奈子を留め置いて部屋を出る加賀に思わず呟くと

「健気という気もするけどね?」

 戻る言葉の意味が分からずその顔を見つめるけれど、加奈子は答えてくれる気はなさげに首を振り、なにやら満足げに深く息を吐くと

「いや~嬉しいね……」

 なんて、言い出した。

「ん?」

「この後は皆で初詣! やっと長年の夢が叶う」

 加奈子の瞳は余りにキラキラしていて、罪悪感に思わず目を背けてしまう

「どした?」

 でも、彼女はそんな私へ容赦無く手を伸ばし、ぐりっと首を回してくるから、ぶつかる、真っ直ぐにこちらを見つめる瞳。

「いや、何か、本当に喜んでくれてるのが、申し訳、無い……かな、って」

 ずっと断り続けていた、別荘への誘い。

 栗田家にこれ以上の依存は迷惑と思っていたし、家族で過ごすのに私の存在は邪魔になる、なんて思い込んでいたけれど。

 ここに来てからのこの幼馴染みは、いつもより明らかに上機嫌で、くたりと気が抜けていて、こうして多少乱暴なくらいに嬉しげにじゃれついてくるから

「本当に迷惑じゃ無かったんだね、意地張って悪かった」

「~~っ! 本当だよ、この意地っ張り! 今後こんな遠慮したら許さないからね」

 私のほっぺたをむにゅっと強く引っ張ると

「加賀君遅い! さてはママに捕まってる?」

 照れ隠しっぽく早口でそんな事を言いながら、部屋を出てってしまった。


 手持ち無沙汰になった私は、もう一度そのアルバムを引き寄せ、適当にめくると出てきたのはさらに小さな私。

 栗田家のアルバムではあるけれど、生まれたときからの幼馴染みは伊達では無く、おくるみにくるまれている私の写真も、当たり前のようにそこにあって。

 その中で私を抱き、柔らかく微笑んでいるのは、久々にその顔を見た気がするお母さん。

 そのままめくった、次のページにはもう少し成長した私を抱くお父さんの写真まであって。


 そこからページをめくれば、また、写真の中の私は徐々に大きくなり小学生位にまで成長していた。

 ふたりの言っていた儚いというのは良く分からないけれど、確かに遊園地や水族館と言った楽しげなスポットの前の私は明らかに不安げで、そこに居るのは間違いなく自分なのに、その時何を思っていたのか思い出す事も出来ない。

 さっきはちょっとムッとしたけれど、見比べてあんな事を言っていた加賀の気持ちも分からないでも無くて……。

「私、こんな顔ばっかりしてたんだ……」

 ひとりきりのリビングで思わず呟いた言葉は、もちろんどこからも反応が戻ってくる事は無く、外で降る雪と同じようにすっと溶けて、消えた。 


次作も来週月曜日でいける予定です。

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