気軽に?
今後について
筋道が見えた気がしますので、そこまでじりじりと頑張ろうかと思っています。
少し不定期になったりするかもですが、その時はお知らせしますのでお付き合いいただけたら嬉しいです。
「気軽に、ねぇ……」
惚れた女の世話になってる幼馴染の家に?
お嬢さんを下さいとか言い出す栗田は、明らかに面白そうにこっちの行動を見てるのだが、断っても良いよってのも助け舟ではあるんだろう。
ただ、まぁ、ここで下がるにはもう深みにハマりすぎてる訳で……したらもう、進むしかないよなって思う。
何より、こと楠に関してなら何で有ろうと『逃げる』って選択肢は、選べる訳も無いわけで。
「はじめまして、加奈子の母です、急なお誘いだったのに受けてくれて嬉しいわ」
「いえ、こちらこそ、一人滞在は気楽ですが寂しいときもあるので甘えてしまいました……これ、つまらない物ですが」
「まぁ! そんな……ごめんなさい、本当に良かったのに、加奈子から2時間前にお誘いしたばかりって聞いてたのよ? 急なことだし娘のお友達呼ぶのに手土産なんて」
「まぁまぁ、有り難く受け取ったら? お母さん、大好きじゃないそれ、加賀くんもわざわざ準備してくれたわけだし」
初めての家にまさか手ぶらじゃいけねぇし? 2時間て無茶振りで、服と手土産とシャワーを済ませなきゃいけなかった俺は、手土産に関してはホテルの名物コンシェルジュに相談したが、お眼鏡にかなったらしい事に内心胸をなで下ろすと同時に、このギリギリさは2隻目の助け舟でもあったんだろうと今更ながらに気が付いた訳で。
「本当に加賀……くん?」
だけど、隣に座った楠は、そんなこっちのギリギリさも知らずにいぶかしげに俺を見てくる
「僕ですが? 何か、楠さん?」
流石に親たちの前で、いつも通り呼び捨てはまずいと思ってくれたのは良かったけど、とってつけたような敬称をついからかいたくなる。
「僕、とか言ってる?」
「ふふ、色々お話聞きたいけれどお夕飯に招待したんですものね、その時にゆっくり聞かせて、私はちょっと準備してくるわね」
「あ、手伝います」
栗田の母親が席を立つと、楠もそれを追うように台所に入っていった。
「ごめんね、料理は優穂の方が上手だから仕上げの手伝いはあの子の方が良いの、セッティングになったら変わるから」
「いや別に、全然良いけど……なんか変だろ? ごめんとか」
「あは、それもそう? しかし凄いね2時間でこんなちゃんと準備してくるなんて、なんなのあのカシミヤのコート、そのジャケットも、どの口で服がないって?」
「あ、それは従兄弟のだ、忘れてった、つーか……」
「あんな高級品を!? いくら何でもブルジョアが過ぎない?」
「あ、いや、正確にはわざとっぽいんだが……まぁ、良いだろ、別に、お前こそどうなんだ? 念願の幼馴染みとの冬休みなのに、俺なんて呼んでて良いのかよ?」
実際あの修学旅行、楠を呼んでくるまでの栗田はマジでうるさかった。
あげくに初心者コースのメンバーをあげてはきっとろくな事になってない、なんて、そんな心配なら自分で行きゃよくね? とは思ったが断られ続けた意趣返しの気持ちもあるようで……まぁ、聞いてるうちに、まんまと栗田の思惑に乗せられて搔っ攫ってきた俺も俺だが。
「やだ、何それ、別に囲い込む気なんてないよ? ただ、2週間近くほぼひとりの家でゲーム三昧って……それにね、いくら夜には帰って来るって言ったって、いつも必ずあの子が家に居るわけじゃないって事、あの人たちも知るべきだと思うの」
楠の家の事情、そう詳しく聞いてる訳でもねーが、かなり放任気味っぽく、幼馴染みのこいつの母親にかなり助けられたってのは聞いてはいる……そして、そんな楠の両親に栗田は当人よりずっと、苛立ちを持っていることくらいは……だが
「でもね、私があんまり怒ると優穂が悲しがるから……」
そう、楠は寂しい時間も多かったんだろうに、健気にもそんな両親を大事に思ってるってのは端で見てても分かるから、栗田にももどかしい所なんだろう
「ま、良かったんじゃね? せめてお前がいてさ」
「ありがとう……私ね、あの子の感受性がズレて来ちゃったのは、その寂しさと親を否定したくないって気持ちのギャップもあるんじゃないかって思ってるんだ、実際、あの人たちがあそこまで忙しくなる前は優穂はもっと違ったんだよ」
「へぇ……どんな?」
「小さい頃は結構臆病でね、初めてのところなんかはよく私の後ろに隠れてた……ホント、可愛かったんだから」
それは……確かに今よりはずいぶんキャラが違う、が、正直ちょっと見てみたいって思う。
「今のあの子だって大好きだし、それだって優穂だけど……私はずっとあの頃の臆病な部分はまだあって、無理して押し込めてるんじゃないかなって……だから、加賀くんには感謝してる」
「俺?」
「うん、無条件で大事にしてくれてるでしょ? 多分、きつい思いも、させてるとは思うけど……」
「ストップ」
「ん?」
「俺も色々栗田とはもっと話してみたいこともあるし、聞きてーこともある、けど、今度にさせてくれ」
「んん?」
「あのなぁ? そっちにとってはここは気楽なテリトリー内かもしれねーけど、つまり、あいつの親代わりの家なんだろ?」
はっきり言ってキャパオーバー、今日は猫かぶりに専念してーとこだ、って、コソッと漏らした本音に
「ぶはっ! お嬢さんを僕にください本当にするの?」
栗田は派手に吹き出すから
「……面白がってるだろ?」
そのまま腹立つほどケラケラ笑ってる後頭部をドツきたいって思うけど、ココがどこかをわきまえている俺は、机の下でむずつく手のひらをギュッと握りしめた。
次作は来週月曜日を予定しています。




