修学旅行②
年内最後の更新となります。
本年は物凄いお久しぶりの新連載にも関わらず、お付き合いいただきましてありがとうございます。
新しい年も皆様にとって良い年でありますよう、お祈りいたします。
「そーそー、そんな感じ……しかしまぁ、あいつらの初心者っぷりも凄いが、お前の方も逆に凄いな」
「ん?」
「本来なら滑りながらよそ見るなと言うべきかもだが、全くぶれねーし」
呆れつつも一応褒めてくれる様子にちょっと照れくさくなる……それに
「ん~さっきまではあんまり速度出せなかったけど、ちゃんと滑ると気持ちいいねぇ」
「だろ? だからあそこに居るのは勿体ねぇって……栗田も心配してるなら来りゃ良いのにな?」
「加奈子?」
「もー、ずっとブツブツ言ってたぜ? 引きこもり、とか、強情! とか、なんとか?」
「あ~……」
実は私には家族旅行……いや、家族でお出かけという記憶があんまり無い、だから動物園とか水族館とか公園でピクニック……というのは殆ど加奈子と加奈子のお母さんと行った所だったりする。
私の両親は経営していた会社が一度乗っ取られかけたことがあった。
怒濤のような最中はふたりとも寝食忘れて方々に駆けずり回り、その最中は当然小学校低学年の私の面倒など見れる訳もなく、ふた月ほど加奈子の家に預けられていた。
あの時までは共働きではあったけれど、時々の休みは両親で出かけることもあったし、加奈子たちと遊びに行くときは私の母も一緒の時もあった……でも、あの一件以降、会社の件が落ち着いても、両親は益々仕事にのめり込んでしまい……帰りは遅く、週末なども家に居てくれることは殆ど無くなってしまった。
元々ひとりで遊ぶのも好きではあったから、そんなに寂しいとかは無かったと思うけれど、加奈子と加奈子のお母さんはそんな私を凄く心配してくれて良くお家に誘ってくれては家族の食卓に混ぜてもらい、遊びや旅行にもよく連れて行って貰った。
春にはお花見、夏には動物園に遊園地、秋には美術館や水族館……だけど、あの時から冬に誘ってくれる別荘だけはずっと断り続けていた。
栗田家がお父さんまで一緒になって、本当に好意で誘ってくれてたのは判ってたけれど、ある日加奈子の家で一緒になった彼女の従姉妹に、私のせいで加奈子達が可愛そうだって言われた時があって……凄く、そうだよなぁ、って思ってしまった、から。
加奈子とは母親同士が幼馴染みで、その子供はどちらも一人っ子だったから、本当に姉妹のようにいつも一緒に居た、そのせいで加奈子は殆どお母さんを独り占めした事は無く、それどころかコミュ力の高かった加奈子と違い、人見知り気味で引っ込み思案だった私にお母さんの庇護を譲るような所まであって……それを言われた時は凄くショックだったけど、だからこそ、このままじゃダメだって、思ったんだ。
それを期に距離を置いた結果、加奈子にはすぐバレて、めちゃめちゃ怒られた。
でも理由を聞かれても流石にあの言葉を其の儘伝えたり出来るはずも無く、誘ってくれる加奈子達が納得する上手な理由を作りきれなかった私は、全ての誘いを断るなんて極端なことはやめたけれど、私なりの一線を引くことにした。
それが、身の回りの事は自分で出来るようになることと、加奈子が家族で過ごす冬の別荘だけは遠慮する事。
だから、そこでスキーの経験を積んでいた加奈子と違い、私は未経験のままで。
だけど、ダンスレッスンの時にふたりが言ってくれた言葉を思い出す
『それって、却って傷つくぜ?』
『ほら、そういうところです』
感受性がどっかおかしいらしい私は、自分なりにちゃんと考えて出したはずの答えでも、間違ってしまうみたいだ。
自分の自由時間を削ってまで私の練習に付き合わせるのは悪いって思うのに、それが嫌なら呼びに来ねーよって、言ってくれる加賀、流石にそれが本当の言葉なんだろう、ってそれは私にも分かって……。
「楠? お前、ぼーっとしてるだろ?」
「え?」
「ふつーそーゆーコトするとすっ転ぶんだがな? 器用なもんだ、とは思うけど、マジで怪我することもあるから、ちょっと集中しろ」
「ああ、そうだよね? 折角付き合ってくれてるのに、ごめん!」
「だから、そーゆー意味じゃねぇし、そもそも考えさせるよーなこと言ったの俺だし、ま、いい、試験前ににおさらいしとくぞ」
教えてくれてるにもかかわらず上の空だった私を、からかいもしないで心配をしてくれる、謝っても自分のせいだなんて言ってくれて……加賀の気持ちも、私はもっとちゃんと受け取るべきだよね
「うん、ありがとう……私、ちゃんと合格してくる! だから、一緒に遊んでね? 加賀」
「……っ! ゴホッ」
……素直に心からお礼を言ったって言うのに、当人は急に咽せたようで、よそ見をして咳き込んでしまう。
「!? ちょ、どうしたの? 大丈夫?」
慌ててストックを外してその背を撫ぜようとしたのだけど
「いい、大丈夫……だ、ちょっと練習しといてくれ、すぐ戻る」
何故かよそ見をしたまま片手で私を止めると、そのまま歩き出してしまい……ただ、横を向いたから帽子から少しはみ出た耳がチラリと見え、なんだちょっと赤いような気が。
……大丈夫かな? そっと離れていく背中を伺うと
「スナオに……ら、それはそれ……やべー……」
なんだか、ぼそぼそ呟く声が聞こえた。
意味は分からないけど、ま、元気そうだから、大丈夫、かな?。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
新年の更新は少し時間を頂き1月8日を予定しています。
何とかある程度の区切りまでは、このお話を綴っていきたいと思いますので、お付き合いいただけましたら嬉しいです。




