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柊高校物語  作者: 萌葱
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突破口

案の定体調は崩しましたが、なんとかupは出来ました(笑)

「栗田、噂の方どうだ?」

「加賀先輩むかつく! 置いてってくれればみんな幸せなのに! てのは聞くけどあんま手の込んだものは無いね」

「それ? 昨日の事じゃねぇ? 耳はえーな」

 今日は文化祭を目前にしての最後のミーティングって事らしく、ボディガードは楓に任せて楠の幼なじみのとこに顔を出した。

 自分が声を掛けた幼なじみが実は結構あぶない目に会うかもしれないって判って、でも、側に居られないってのを気にしてたのは知ってたし、俺もちょっと現状確認しとこうって思ってたから。


 「holly」校名を英語にしただけで、それが呼び名になっている組織に栗田は所属している。

 活動内容は校内校外問わずの情報収集と生徒同士の交流活動の企画調整、生徒会が生徒の自治の為の表向きの看板だとすれば、「holly」は裏看板とも言えるだろう。

 良家の子女が多いここならではの機関だが、それだけに執行部に食い込むのは選ばれた少数、そこに入学早々から名を連ねた栗田の人脈と人なつこさ(……に見せかけた人心掌握術、と俺は思ってる)は一部では有名で、だからこそ楠が1年の時にあの状況になっても静観した胆力は感心に値したのだが、今回は見逃す気は無いようで、マメに情報収集をしているのがよく判る


「あの時と違って随分力入ってるな?」

「当たり前でしょ? 流石に岬先輩の事故が人為的な可能性があるって最初から判ってたら、そもそも優穂を紹介したりしなかった! なのにあの子、引き受ける前に部長はちゃんと言ってくれたとか言っちゃうし……引き受けたら楽しそうだし、止められないじゃない?」

 こんなとこ、妙に似てると思う、アイツは楓に甘くこいつは楠に甘い……だけどまぁ、確かに楠が嬉々として練習に通ってる姿を見てる俺だって止められてねぇから、人のことは言えない。  

 だから、それは良い、とは嘘でも言いたくねぇが、突破口ではあった。


「ん、良しっと! じゃ、行くね」

純白の衣装に身を包み、同色の編み上げのブーツをしっかり履いた楠が勢いよく立ち上がり舞台に向かおうとするのを、思わず手で止める

「加賀?」

「悪ぃ、過保護かも知れねーけど、その靴俺も確認して良いか?」

「ん? うん、でもさっと見た時は何もなかったけど……あれ?」

「お前、この靴底のこれ、蝋じゃねーの?」

「!」

「楓! ちょっと来てくれ」

 声を上げれば、楓は丁度衣装を着終わった所らしく、さっとこっちに来て俺を見る

「どうかしましたか?」

「悪い、ちょっと今楠動かせねえから、部長をこっちによこして、そのまま栗田呼んできてくれねぇ?」

 何があったかは言わずに指示だけの頼み、けれど楓は文句も言わず部長に声を掛けると其の儘部室を出て行った。


 脱ぎ終わったブーツの底を擦るとそこそこ厚みがある蝋が指に着くのにぞっとした、ったく危ねぇとこだった、体育祭の時にもう怪我なんざさせねぇって思ってたはずが、これを履いて飛び回れば捻挫で済んだかすら怪しい。

「どうかした? 加賀君」

「桜井、ちょっとトラブルだ休憩にでもして準備室あけてくれ」

 だから、これで終わらせよう、動機はさっぱり判らねーけど、犯人は多分、ひとりしか居ない。


「来ちゃったかー」

「うん」

「で? サボらず毎日持って帰った?」

「うん」

「よっしゃ! じゃ、いつ置いた?」

「履く20分前」

「「!!!」」

 スタントを引き受けるに当たり、栗田が楠にこれだけはしろと言ってきたのはひとつ。

 『衣装一式は毎日練習後は、個人ロッカーに保管する事』

 演技をする岬先輩は制服に部屋着にと複数の衣装があったが、剣劇担当の楠の衣装は制服と揃いのブーツのみだったし、栗田の『衣装にカミソリでも仕込まれたら冗談じゃ無い』なんて物騒な台詞を聞いてしまえば、妥当な提案に思えた。


「履く前一応サッとは見たんだけどな……」

「蝋も靴も白いしそこは仕方ない、それより怪我しなくて良かったよ」

 栗田の言うことは尤もで

「3人、だな」

「ん?」

「今日その靴に近づいた奴」

「!」

 ……俺はその衣装をあいつが身につけない間は、それとなく目を離さないようにしていた。

 それなのに仕掛けられた靴を履かせてしまった。

 怪我が無かったからまだ俺は冷静を装ってられたが、一筋でも怪我をしてたら俺はきっと、問答無用であの小さな体を殴り飛ばしちまったかもしれない。


続きは次週月曜日です。

もしかしたら、それまでの間に1本紗綾の方の番外編をあげるかもしれません。

紗綾の方にも目を通して下さっている方は目を通して頂けますと嬉しいです。

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