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柊高校物語  作者: 萌葱
21/61

待って、違うって

どうしても切りどころが見つからず、めちゃめちゃ長いです。

……通常投稿の2倍以上、3倍以下と言ったところです。

お時間のある時にお楽しみください。


ちょいちょい視線変更混ざります。

極力判りにくくならないよう、留意したつもりですが、判りにくい等ありましたらお知らせ下さい。

「……楓と一緒じゃねーのかよ?」

「っ? 加賀? やだな吃驚させないでよ、先帰ったんじゃなかったの?」

 塾が終わって、駐輪場で自分の自転車に向かって歩いていると、急に声をかけられて驚く。

 振り向けば、私の後ろの金網のところに腕を組んでもたれ掛かっているのは見慣れたシルエット

 先日同様、加賀には先に行って貰って、楓君を待ってから来たから、てっきりもう帰ったものだと思っていた。


「あぁ」

 元々声は低いほうだけれど、いつもより低く感じる声音に表情を伺おうとするも、薄暗い駐輪場のこと俯いてしまうと表情はよく見えなくて

「楓君は今日は本家の方に泊まるとかで電車で帰ったよ」

「へぇ……残念だったな?」

「何が?」

「さみしーんじゃねぇ? このところよく一緒に居るし、仲良いだろ?」

「そりゃ話したりすることは多いけど、どーゆー意味?」

「……き……のか?」

 ふり絞るようなかすれ声で何かを言うのは聞こえたけれど、声が小さすぎて

「ごめん、聞こえない、なに?」

 聞き返すと、細くため息を付き、うつむいていた視線を私に向け睨みつけるように私を見た

「……ファンクラブ対策の仮の相手でも頼まれたのか?」

「なにそれ? この前の案山子(かかし)の話? そんなの私がする訳無いじゃない」

「へ……ぇ? じゃぁ、付き合ってるのか?」

「さっきから何なの? 変なことばかり」

「答えろよ」

 低い声と怒りを無理に抑えるような口調、加えて私を睨む視線の強さに驚く、……私何かした?

「答えろ? そんな言い方される筋合い無い、ましてや私が誰と何してても、加賀に関係ないよね?」

 どう考えても思いつかなくて、理不尽さに沸いてきたムカつきをぶつければ

「……っ」

 瞬間、加賀の自分を守るように組んでいた腕を自身の手のひらでぎゅって強く握るのが判り、その顔を見つめれば、睨むようにキツかった瞳が揺らぐのが分かった。

 傷つけた? でも、何で? 答えが知りたくて表情を伺いたくも、加賀はそれを隠すようにまた視線を伏せると

「先週、お前らが一緒にらしくもない店に入るのを見た」

 そう言われて、もしかして、と思う

「お前の趣味とも思えねぇし、デートでもなきゃいかねぇだろ?」

「待って、違うって、私じゃないそれ」

「どう見ても、お前と楓だった」

「あ、うん、居たのは間違ってない、ええっと、私の用事じゃぁ、ない!」



「楓君、ごめん、相談乗って貰って良い?」

 塾の終わり、教室を出ると先輩が居た。

 ゲームの攻略や貸し借りでこんな風に声を掛け合うことは良くあるけど、相談って言われると頼られた気分になって、こっそり嬉しくなる。

「どうしました?」

 一緒に歩いてきた駐輪場で、据え置きのベンチに座って聞いてみると

「んとね? 渚ってどんなものが好き?」

 困ったように聞かれて僕もちょっと困る、ここ1年位彼女が1番好きなのは優穂先輩と思うけど、まさかそれを正直に言うわけにも行かない。

「えーと、よければ経緯を教えてもらえませんか?」


「ああ、なるほど、あのアクセサリーケース」

「知ってる? 高価なものでは無いって言ってくれるし、受けとっちゃったけど、流石に其の儘は……だから、今度の渚の誕生日にお返ししたいって思ったんだけど……」

 先日、旅行から帰ってきた祖母のお土産のアクセサリーケース、確か小ぶりのものが2個あったのは見ていた。

 旅行前渚ちゃんの新しい友達の話を、にこにこと聞いていた祖母がお揃いで買ってきたもの。

 海外で見つけた少しセンスの良いもの位だと思うし、渚ちゃんはいつもそんなお土産を仲の良い友達と分けていたっていうのは祖母も知っているから、気にするほどでは無いと思うけれど、ただ、まぁ先輩の性格的に貰いっぱなしも気持ち悪いのだろう事も判るから。

「ん~、好みを把握はしきれてませんが、大好きなお店があるんですよね、そこを案内しましょうか? ただ、学校帰りはちょっと難しいです、榊に有るんですよ」

「むむ、町に出るのか~……楓君、今度おすすめゲーム2本完全攻略付きレンタルするから、付き合って貰っても良い?」

「お安いご用です、土曜日に駅で待ち合わせで良いですか?」

「ありがとう、とても綺麗なケースで置くだけで机の上が華やかだし、凄く嬉しいんだけど……お返しが全然思いつかなくて、ここのところ、ずっと落ち着かなくてね~」

「その言葉だけで渚ちゃんも祖母も十分とは思いますけど、……そういえば、あれ、アクセサリーケースでしたけど、先輩普段してないですよね? 何を入れてるんですか?」

「……消しゴム、予備の」

「成る程」

「……入れるもの、特になくてね、でも、空っぽなの、寂しくて、だから」

 僕的には何入れてもいいと思うし、そういう使い方もあるかって感心したんだけど。 

 でも、先輩は普通はそういうものは入れない、なんて思ってるのかな? 恥ずかしげに俯いてしまう……。

 先輩と居ると、不思議な気持ちに襲われる事がある。

 渚ちゃんのよく言う、優しくて格好良いってのも頷けるし、僕にとってもいっぱい勉強やゲームを教えてくれて、普段は渚ちゃんより余程「お姉さん」、って感じなのに……時々、凄く、放って置けないって、こんなに無防備で大丈夫かなって、もういっそ、隠してしまいたいって、なんか、焦るっていうか、……落ち着かないって、いうか。

 こんなに風に色んな感情がぐるぐるして、どうしたら良いのか良く判らなくなる、みたいな。


「うわぁ」

 一見お城のように見える建物の前で軽く固まっていると

「入りますよ?」

 扉を開ける楓君、意を決して店内に入ったけど、ぐるりと店内を見回して、あまりの属していた世界との違いに目が回りそう、小さく深呼吸をしていたら、隣の楓君がくすりと笑う気配に隣に目をやる。

 出会った頃は同じくらいだった目線も、今では見下ろされている、本当ちょっとの間に大きくなったし大人びてきたなって思う。


 お城のような一軒家を丸ごと改築したかのような店内は、そこここに繊細で壊れ物のような食器や文具、生活用品とかが置かれているけど、贅沢に陳列のスペースがあるので安心して歩けそうな感じ、けれど、そこここで品物を見ているのは殆ど女性。


 男の人の姿もちょこちょこ見るけれど、相手に付き合わされているという風情で、どこか落ち着かなさげ、そこに戸惑う様子もなく店内にいる楓君が不思議で

「一緒に入ってもらっちゃったけど大丈夫? 居心地悪くない?」

 聞くと

「渚ちゃんに散々付き合わされてもう慣れたました、それにどっちかというと先輩のほうが居心地悪そうですけど?」

 くすりと、ちょっといたずらっぽい笑顔を返されて

「うっ」

 確かにこんな場所には縁が無く、図星を突かれ思わず黙った私に

「取り敢えず中を見てみますか?」

 今度はふわりと微笑むと、楓君は店内を歩き出した。


 一見してお城のようだと思った店はやっぱり中も妙にロココ調と言うか、置いてある品物もヨーロッパの貴族の娘の家に有りそうな手鏡だのヘアブラシだの。

 陶器のように滑らかなバラ模様の万年筆のようなものがシャープペンシルだったり、基本シンプルを好む私の趣味ではないけれど、渚にはよく似合いそうで見ているぶんには面白い。


 恐る恐る店内を見てまわる私に彼は黙って付き合ってくれて、たまによく判らない用途に首をかしげているとそれが何かを教えてくれていたりして……。

 そうやって広い店内をぐるりと見まわると、どれもこれも渚っぽくて、だからこそ

「どれも似合いそうだけれど、似合いすぎてどれも持ってそう」

「まぁ、流石に僕も彼女の持ち物全部知っているわけではないですが」

 苦笑してそういうのに頷く

「私もムリだなぁ……あれ?」

 その一角だけはヨーロッパ風の店内で妙に和風で、同じ貴族でも日本のお姫様をイメージしたような雰囲気。

 そこに置いてあるひとつのろうそくが目に留まる

 柔らかなベージュの生地に貝殻やヒトデ等の生物の模様、くり抜かれた蝋の中で、ひとまわり小さなろうそくが燃えて、外側の蝋越しの炎の光が少し行灯を思わせる。

 なんとも趣があって目が離せなくなる。

「お好きですか? それ」

 後ろから声をかけられて振り向くと、お店のお姉さんがにこりと笑いながら手にとって

「このお店のコンセプトにはすこし微妙なんです、でも私も一目惚れしてしまいまして……」

 セールス特有の押し付けがましさがなく、本当に嬉しそうにろうそくを見るのに良いなって思う

「外側は普通の蝋より溶けにくい蝋で出来ていて、模様を彫ってあるんです、くりぬいてある中に小さいろうそくをつけて使うんですが……」

「あぁ! だからこういう風合いになるんですね、行灯みたいだなって」

「あぁ、嬉しい! 私もそう思ったんです」

 楽しげな笑顔を向けてくれ、けれどそれをパッと消し

「いけない仕事忘れちゃってました! お邪魔してごめんなさい」

 慌てて、混みだしたレジに慌てて戻るお姉さん、その一連のやり取りにこの商品を本当に気に入ってるんだなって感じる

「気に入りました?」

 楓君にに言われて

「うん、好き! だけど、このお店のイメージとはとはちょっと違うんだよね」

 折角渚の好みそのもののお店に来たのにって、ちょっと迷ってしまうと

「良いと思いますよ? それにその柄……名前に(ちな)んでいるんですよね?」

 そう、ありがちかなって思ったけど、木の葉やモノグラムモチーフも有った中からこれを選んだのは楓くんの言うとおりでもあって……、私はそれを包んでもらうことにした。


「あの日は渚のプレゼント一緒に選んで貰ったの、渚すごく喜んでくれたから、さっき楓くんにも報告とお礼して来たんだけど……?」

 私の話を聞くにつれ、明らかに強ばっていた加賀の力が抜けていくのがわかり、ホッとはしたけど、其の儘そこにしゃがみ込んでしまうのは抜けすぎでは? なんて思ってしまう。

「……悪かった」

 言葉は少ないけど、やたら凹んでいるのは感じる。

 けれど、何でそもそもあんなだったのか判らなくて……もしかして?

「また巻き込まれるかも、とか、心配かけちゃった? 楓君あんな子たちに追いかけられるくらいだし」

 背の高い加賀のつむじなんて珍しいなと見つめていると、彼は少し困ったような顔をして私を見上げ、やるせなさげにため息をつくと

「悪い、ちょっと考えすぎて、分を越えたマネだった……嫌な思いさせよな、ごめん」

 しょっちゅう揶揄ってはくるけれど、面倒見良くて、結局優しい……

「ううん、ありがと、いい友達を持ったよ、私は」

 いつもなかなか素直には言葉に出来ないけど、心からそう思う

「……ち、じゃ……ねーよ」

「ん?」

 小さく呟く声はやっぱりよく聞こえなかったけど、加賀はなんでもないと言って、自分の自転車に向かって歩き出したから、私もポケットの中の鍵を確かめながら自分の自転車へと歩き出した



お疲れ様でした。

余裕綽々の保持が難しくなってきている感じが出せていれば、嬉しいです。


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